見出し画像

頭脳派2人によるワードプレイと主張に満ちたスピットを堪能する。(和訳:Benny The Butcher & J. Cole - Johnny’s P’s Caddy)

written by @imamole_

私からマガジンに最後の寄稿とさせていただく記事で取り扱う楽曲は、J.コール客演、ベニー・ザ・ブッチャーによる「Johnny’s P’s Caddy」です!

2人の聡明なリリシストによるワードプレイに富んだ、読み応えのある1曲です。

では、さっそく読んでみましょう!

イントロ(Benny the Butcher)

Yeah, you know?
Tana Talk 4, this shit mean a lot to me, know what I mean?

和訳:
イェー、わかるだろ?
タナトーク4は俺にとって意味が大きいんだ、わかるだろ?

Benny The Butcher & J. Cole - Johnny’s P’s Caddy

【解読】

*『Tana Talk 4』ベニーによる3枚目のアルバムであり今曲収録アルバム。

You know this shit don't feel as good as it look (Big Griselda)
I'ma keep it real with you (Black Soprano Family)
I'm straight, though (I'm good)
This street shit made me what I am today

和訳:
これが見かけより良くないってわかるだろ(偉大なるグリゼルダ)
俺は忠実でいるさ(ブラックソプラノファミリー)
俺はストレートだけど(結構)
このストリートが今日の俺をつくったんだ

Benny The Butcher & J. Cole - Johnny’s P’s Caddy

【解読】

*“keep it real”は読者の皆様もラップ曲でよく耳にしたことのあるフレーズではないでしょうか。別れ際の挨拶としても使用されますが、「リアルでいる、偽らずに自分自身でいる」という意味です。

*Griseldaは、ベニーも一員であり、ベニーのお馴染みのコラボレーターであるウェスト・サイド・ガンコーンウェイ・ザ・マシーンもメンバーです。

N****s know I went so hard for this shit
I deserve this shit, n***a (Ah)
The Butcher comin', n***a

和訳:
仲間は俺がこれのために本気でやったって知ってる
俺はこれに値する価値がある(アー)
ブッチャーの到来だ

Benny The Butcher & J. Cole - Johnny’s P’s Caddy

【解読】

*グリゼルダのメンバーやブラックソプラノファミリーのメンバーは、ベニーの苦労と努力を知っていると言っています。

1バース目(Benny the Butcher)

This ain't my story 'bout rags to riches, more 'bout how I mastered physics (Uh-huh)
In the game, I used to train like Rocky, catchin' chickens (Yeah)
I was nice, but they was right when they told me that rap a business

和訳:
これは無一文から金持ちになる話じゃない、俺がどう物理学をマスターしたかについてだ(アーハ)
ゲームでは、ロッキーみたいに練習をしてた、鳥を捕る(イエー)
俺はいい奴だった、けどラップはビジネスだと俺に言った奴らは正しかった

Benny The Butcher & J. Cole - Johnny’s P’s Caddy

【解読】

*多くのラッパーが“Started from the bottom(どん底から成り上がる)”的なストーリーをラップする中、ベニーは金銭的な話ではなく、「どうやって物理学をマスターしたか」「どのような知恵やストリートレッスンを駆使して成功を手にしたか」という発想を伝えようとしています。

*ロッキーは伝説のボクサー=ロッキー・マルシアノをモデルにした有名映画『ロッキー』の主人公であり実在した人物です。作品の中で、ロッキーがチキンを追いかけて捕まえるというトレーニングをするシーンがあります。ベニーはロッキーのように努力してラップゲームで成り上がったという意味です。

*3行目は、ラップはクリエティブ活動という側面だけでなく、ビジネスとして成り立たすことも重要だとベニーは言われたのでしょう。

I had ten bands in my stash when I passed over half a million
Come easily? No good, don't be surprised I outlast these n****s
It's like they put out a smash thеn they gone in a flash, admit it
And then thеy make tracks and diss us like that's gon' add up the digits (Fuck you doin'?)

和訳:
50万を超えたときに俺は100万円の束をへそくりで持ってた
容易いこと?ゴメンだね、他の奴らより俺が長生きしても驚くことじゃないぜ
奴らは闘いにきても一瞬で消えるんだ、認めろよ
それで奴らは曲を作って俺たちをディスる、まるでそれで金が稼げるみたいに(何してんだよ?)

Benny The Butcher & J. Cole - Johnny’s P’s Caddy

【解読】

ここから先は

7,051字

¥ 300

「洋楽ラップを10倍楽しむマガジン」を読んでいただき、ありがとうございます! フォローやSNSでのシェアなどしていただけると、励みになります!