このガラスバーナーワークについて
キ・ボニータのガラスは正式にはボロシリケイトガラス、日本語ではホウケイ酸ガラスと言います。
元々はビーカーなどに使われる耐熱ガラスで、パイレックスなどの耐熱ガラスも概ね同じものです。
普通のソーダガラスと比べて、硬く軽く熱に強いのが特徴です。
私の作品も、ちょっと落としたくらいでは割れないものがほとんどです。
透明度もとても高く、昔からあるクリスタルガラスと比べても引けをとりません。
このガラスは酸素を加えたバーナーで作業をします。
私の使っているバーナーは初心者用の小さいもので、これだと家庭の都市ガスと酸素発生器で使用できます。
酸素発生器は元々は酸素を必要とする人が家庭でも酸素を吸えるように、空気から酸素を取り出す医療装置を、ガラス工芸用に転用したものです。
空気から酸素を取り出している上にバーナーで火を燃やすので、放っておけば空気中の酸素が少なくなっていくので換気がとても重要です。
にもかかわらず、私は2度ほど換気が十分でない状態で使用して、高山病のような症状に陥ったことがありました。
頭痛がして気分が悪くなり、これはもしかして酸素が足りないのかも、と気がついたのです。
危ないですね。
それ以来、使用の仕方には十分注意をしており、その後は事故は起こっていません。
このガラスを始めたきっかけは、ガラスのバーナーワークをやってみたいと教室を探した所から始まりました。ネットで見つけた教室の先生の作品写真が私が作りたいと思っていた立体作品のイメージに近く、それでその教室を選んだのでした。
私の選択は大正解で、すぐにハマってしまいました。
そして半年ほどでまだろくなこともできないうちに家に器具を揃えたのでした。
吹きガラスの技法も教わり、自分なりにアート制作を始めたのです。
私は実はここ数年の間、ジャズを歌うことに一所懸命になっていてこのガラスも含めてアートから少し遠ざかっていたのでした。
(ジャズの話はまた別の機会に書けたらと思っています)
少しずつアートに復帰することになったのはこのガラスが絵よりも先で、画像に使っているキューブのガラスをいくつも連ねる、ということを思いついて始めたのがきっかけになりました。
作っては放置してまたジャズに戻り、ということを繰り返していた2年前にかなり深刻な狭心症が検査でわかり、そのまま入院してカテーテル術で狭くなっていた血管を通しました。
人はいつかは死ぬと頭でわかっていても、こういうシビアな現実を突きつけられないとなかなか実感が湧かないものです。
私もその時初めて、人生は永遠には続かない、と気づかされたわけです。
それで、もう一度アートに真剣に向き合うことを決めたのでした。
そしてその時決めた個展をこの2024年9月に開きました。
今回始めた「身につけるアート」というのもこの個展の作品で生まれた発想です。
個展を開いて、改めて自分の仕事を客観的にみた時、アーティストの原点に戻りたい、と思ったのでした。
つまり、いろんなことに手を出すのではなく、もう一度、昔やっていたように絵を描く、ということを純粋に追求してみたいと。
これまでやってきたこと、つまりガラスだったり、ジャズだったり、も決して無駄だったとは思いませんが、広げてしまった意識をもう一度一点に集中させたらどうなるのかな?と自分でも試したくなったわけです。
一度はガラスもジャズもやめて、絵一筋に戻ろう、と決心しかけたのでした。
でも、すぐに、気持ちが翻りました。
ガラスはやめてしまうには残念すぎると思ったからです。
私はこのガラスがすごく好きだし、私と同じようなことをやっている人をまだ知りません。
つまり工芸の方はたくさんいらっしゃっても、工芸的なきっちりした成形を無視して自由に形を作る、アート的アプローチにこだわってやっている人はとても少ないように思います。(知らないだけかもしれませんが)
何より、こんなに美しいガラスがあることをたくさんの人に知ってもらいたいし、楽しんで欲しい、という気持ちがどうしても消えないのです。
そこで、これまでは自分のアート制作、という枠組みの中で作品を作ろうと頑張ってきたのを、ガラスはガラスとして、販売を前提に作ってみようと考えを転換させたのです。
アートというと少しハードルが高くなりますが、アクセサリーとしてなら気楽に持つこともできるでしょう。
もっと広く多くの人にこのガラスの美しさを知って欲しい。
まだ始めたばかりで何から手をつけたらいいのか、右往左往しっぱなしです。
新しくも作りたいし、既に作ったものも結構あるし、写真はまだ少ししか撮れていないし、といった具合です。
ゆっくりやればいいという頭の声が聞こえる一方で、若者ではない私にはそんなにたくさんの時間があるわけでもない、という気持ちも湧きます。
心臓の問題もありますし、アートの方も再来年の個展に向けて制作を頑張りたい気持ちもあります。
毎日何から手をつけたらいいか、迷いながら迷路をグルグル回っているみたいなのが今の状態です。
そんなわけで、一つの冒険旅行として、このキ・ボニータはやっていきたいと思っているので、どうぞ時々覗きにきてください。
是非一度ガラスを手に取ってもらえたらもっと嬉しいです。