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STAEDTLER MARS-MICROGRAPH HS

こんにちは。Y・Cappuccinoです。

今回は私の1軍ペンシルの一つである
「STAEDTLER MARS-MICROGRAPH HS」
について解説していきます。

このマイクログラフシリーズ、知名度と入手難易度の割には持ってる人が少ないように感じます。Twitterでほとんど見かけないからでしょうか。
いいペンシルなので、もっとたくさんの人に使ってほしいところです。

そういう私も「いいペンシルだな」と感じたのはつい最近のことです。このペンシルを購入したのは今から1年ほど前のことですね。久しぶりに使ったら結構書きやすかった、そんな感じです。

さて、今回もできるだけ詳しく、できるだけわかりやすく解説していきます。約5500文字の長文となってしまいましたが、画像はかなり多めに載せたので最後まで見ていただけると嬉しいです。

それでは下記より本編です。



♢MICROシリーズについて

STAEDTLERはかつてMARS-MICROGRAPHシリーズという"770"の数字を与えられた製図用シャープペンシルを発売していました。
·ハーフスライド式のMICROGRAPH HS 77115
·その廉価版であるMICROGRAPH HS 77105
·固定式ガイドパイプのMICROGRAP F 77015
などのモデルが存在しており、
·全身樹脂ボディのMICRO 77505
·パイプスライド式のMICROFIX S 773 05
·ヘアライン加工&パイプスライド式のMICROFIX SL
などのMICROシリーズも存在していました。

MARS-MICROGRAPHがステッドラーのカタログに載ったのは1974年のことです。そこから16年後の1990年に一度廃番となりましたが、2024年の9月頃にMICROGRAPH Fが「770 15N」としてアップデートされ、復刻されました。

◆参考文献
ステッドラー日本株式会社 公式HPよりhttps://www.staedtler.jp/ 


♢MARS-MICROGRAPH HSについて

MICROGRAPH HSは1974〜90年の16年間製造されており、その中で前·後期に分けることができます。
現在確認できているモデルは下記のとおりです。

○前期型 70's〜80'S
·硬い樹脂軸
·金属製の芯タンク
·ピンクの消しゴム

○後期型 80's〜90's
·マット調の柔らかい樹脂軸(0.5mm、0.7mmのみ)
·0.3mm···紺色 / 0.5mm···水色 / 0.7mm···青色
·樹脂製の芯タンク(0.5mm、0.7mmのみ)
·白い消しゴム
·パッケージのデザイン変更

私が所有している個体は前期型0.3mmです。
0.5mmと0.7mmは前期型と後期型の2種類が存在していますが、0.3mmは初期から後期までずっと同型だった可能性があります。


♢スペック

·メーカー:STAEDTLER
·製造国:ドイツ
·バージョン:前期型
·製造時期:1978〜90年
·種類:ハーフスライド式 製図用シャープペンシル
·定価:1800円
·全長:142mm
·最大軸径:約8.5mm
·重量:14g
·重心:先端から62mm(44%)

重心位置の比較

GRAPHLETの重心はペン先から74mm、ちょうど50%の位置にあります。HSはペン先から62mm44%の位置にあるので低重心です。


♢デザイン

•全体

昔の製図用シャープによく見られるデザインをしています。カラーリングもとてもシックで、いかにもヴィンテージペンシルらしい見た目です。この頃の製図用シャープは落ち着いた雰囲気でありながらも、どこがエレガントさを感じるようなデザインをしていて非常に魅力的です。本当に好き。


•ペン先

HSとFを象徴する格子状のローレットです。口金に向かって窄まる円錐状で、粒の縦列の並びが少し歪んでいます。個体差でしょうか。見た目は荒々しいですが、握ってみると意外とマイルドです。きちんとグリップもしてくれます。粒一つ一つがきめ細かく、非常に美しいローレットです。

この画像を見ると、縦列のローレットに歪みが出ていることがよくわかるかと思います。僅かな歪みなので特に気になることはありませんし、昔のペンシルなので仕方ない気もします。
HSの金属パーツは全体的に黄ばんでおり、使用感が出てくると黄土色がかなり強くなります。紺色の樹脂軸とマッチして非常にかっこいいです。


•ハーフスライド式

9705と共通の口金

このペンシルは「ハーフスライド」と呼ばれる機構を搭載しています。ハーフスライド式とはパイプスライド式の一種のことで、Pentel PG2FABER-CASTELL 9705などのペンシルに搭載されていました。商品名の「HS」は、このハーフスライドから来ています。
ハーフスライド式とは「可動域が制限されているパイプスライド式」のようなもので、ガイドパイプが完全に収納できないようになっています。HSの場合、ガイドパイプをしまった状態だと3mm、MAXまで伸ばした状態だと5mmの長さになります。


•軸

刻印:MICROGRAPH HS  ▶0.3◀  771 13

ヴィンテージ感のあるくすんだ紺色です。HS前期型とF前期型は硬く艶のある樹脂、HS後期型とF後期型は柔らかいマット調の樹脂を採用しています。
HS前期は紺色のみのラインナップですが、HS後期とFの全世代は芯径によって色分けされています。
ちなみに、前期型の樹脂軸はとある深刻な問題を抱えています。詳しくはまた後ほど…。


•後端

クリップは硬度表示窓としての役割も果たしており、無表示、3H〜Bの5つの硬度(Fなし)に対応しています。動きはスムーズですが硬度のプリントが少々剥げやすいため、むやみに回すのはやめたほうが良さそうです。

Made in Germany

クリップは固くもなく緩くもない実用的な固さとなっています。取り外すことはできません。
クリップには1世代前のマルスヘッドが刻印されています。1973〜2001年の間に使用されていたもので、歴代のマルスヘッドの中では一番シンプルなデザインです。


•ノック部

ノックキャップには「.3」の芯径の表記があります。消しゴムはオレンジ(ピンク?)で、製図用シャープらしくクリーナーピンが付いています。この消しゴムですが、お察しの通り消えません。この手の消しゴムは信用できませんね。


•内部機構

チャック周りは金属が多用されており、とても丈夫な作りとなっています。チャックが壊れる心配はあまりなさそうですね。ノック感はスチャッ、スチャッ、とクリック感があって気持ち良く、ノックの重さも程よいです。ストロークは少し長めで、動作もスムーズです。

軸割れを起こした時。樹脂軸とグリップは取り外せない

芯タンクまで金属で出来ています。ガチガチですね。この頃のMPは外身よりも内部機構のほうがしっかりしている印象です。


•パッケージ

表面
後ろ
裏面
劣化で黄ばんだスリーブ

時代の流れを感じさせてくれるレトロチックなデザインです。各メーカーのハイエンド製図用シャープによく採用されている形ですね。こういうパッケージは私の大好物です。
パッケージデザインは前期·後期で異なっています。画像は前期のパッケージですね。
細々と文字が書かれていますが、翻訳は面倒なのでここでは割愛させていただきます。「製図用」「ハーフスライド」的なことがいろいろな言語で書かれている感じです。
ちなみに、本体が0.3mmなのにパッケージが0.5mmなのは気にしないで下さい。某フリマサイトで2000円以下で購入したものなので…。


♢良い点

私がこのペンシルを購入してから約1年が経ちました。1年間使ってきての感想を使用感と交えてご紹介します。

✧無駄のないデザイン

マイクログラフシリーズ最大の魅力です。直線的でシンプルなデザインが製図用シャープらしい道具感を醸し出しています。所謂「機能美」ですね。華美な装飾が一切なく、製図や筆記の集中力を高めてくれます。
ローレットは荒々しくも繊細な加工が施されており、常に使い手の目を楽しませてくれます。
「ローレットの粒の中にさらにローレットがある」。そんな感じです。ここまで繊細なローレットを搭載しているのはマイクログラフシリーズのみだと思います。
カラーリングは黄土色×紺色というヴィンテージペンシルらしい組み合わせでまとまっています。温かみを感じる、シックで落ち着いた雰囲気です。
機能も見た目も美しい、本当に無駄のないデザインだと思います。

✧パイプスライドの精度がいい

内部機構も共通パーツ

このペンシルの一番すごいところです。他のパイプスライド式のMPに比べてガタつきが圧倒的に少ないです。
HSのガイドパイプは非常に細く、0.3mmMPの中でもかなり細い部類に入ります。細い芯径ほど安定して精度を出すのは難しいはずですが、それでもガタつきは最小限にとどめられています。
書き味はかなりしっかりとしています。内部機構がガチガチなのも相まって、筆記角度次第で固定式並みの剛性感を楽しむことができます。0.3mmなのに本当にすごいです。

✧クセはあるが、書きやすい

ステッドラーの製図用シャープというだけあって、筆記性能はかなり高いです。握りやすく痛くなりにくいローレット、適度な長さ·低重心、サリサリとした乾いた書き味など、書きやすい要素が一通り揃っています。持ちやすい上に重量も14gと適度に軽いため、長時間筆記にも適しています。
多少のクセはあるため万人受けするようなペンシルではありませんが、私のように好みに刺さる、という人は多そうです。


♢悪い点

❖ガイドパイプが頼りない

細い!折れそう!

先程の良い点2つ目と矛盾しているようですが、これにはちゃんと理由があります。
先述したとおりHSのガイドパイプは非常に細く、0.3mmMPの中でもかなり細い部類に入ります。そのため見た目が頼りなく、すぐ"ポキッ"と逝ってしまいそうな感じがします。ガイドパイプを最大値である5mmまで伸ばすとさらに頼りなくなります。ちょっとの力で曲がってしまいそうです。
書き味がしっかりとしているので、そことのギャップに違和感を覚えるかもしれません。

❖前期型は劣化しやすい

3度目の軸割れ

前期型マイクログラフの最大の欠点です。
HS前期型は刻印剥げと軸割れを、F前期型は刻印剥げと軸割れと色褪せを起こしやすくなっています。加えてFは初期から芯タンクが樹脂製であるため、HS前期型よりも信頼性は低いものと考えられます。
また、私の所有している個体は軸の歪みも出ています。歪みが出やすいのか、どの世代で歪みやすいのかは定かではありませんが、この点も注意しておいたほうがよさそうです。一応ドライヤーで応急処置はできますが…。
最も深刻なのは軸割れです。HS前期型とF前期型は経年劣化で脆くなりやすい硬い樹脂軸を採用しています。軸割れ•ひび割れなど様々で、私の個体は過去に3回軸割れを起こしています。SNSを見ても破損している個体が多く、扱いには十分注意が必要です。

ケースが黄ばんで脆くなることも…

♢使っている接着剤

軸割れした時に使った接着剤です。何を使えばいいのか迷っている方はご参考までにどうぞ。

•WAVE ×3G 高強度

ミニ四駆でお世話になった瞬間接着剤です。商品名に"高強度"とある通りガチガチに固定してくれます。というか、筆記具に使うにはこれぐらい強固に固定してくれないと使い物になりません。
この接着剤は白化現象を引き起こすタイプです。ひび割れなどの目に見える破損には使わないほうがいいでしょう。


♢まとめ

以上、MARS-MICROGRAPH HSについての解説でした。このペンシルを一言で表すとしたら、
「無駄のない機能美な製図用シャーペン」
ですね。デザイン性も筆記性能も高いハイスペック製図用シャープペンシルです。
一方で軸の耐久性に不安が残ります。これさえクリアできれば普通に神シャーペンだったのですが…。書きやすいが故に非常に惜しいです。
と言ってもオススメできるペンシルなことに変わりはないので、気になっている方が居ましたらこの機会にぜひ購入してみてはいかがでしょうか。


♢最後に(余談)

先日投稿した記事「買ってよかった筆記具 2024」が140いいねを突破しました。予想以上の反響をいただき嬉しい限りです。記事を見ていただいた皆様、本当にありがとうございました。

正直に言いますと、なぜあんな記事が140いいねを突破したのか理解し難いです。あの記事にそのような価値があるとは思えませんし、初の100いいねがただの振り返りの記事、というのもすごくモヤモヤしました。
なぜあの記事が伸びているのかというと、note公式マガジンにたまたま登録されたからです。note公式マガジンということで、文房具界隈以外の方にも見ていただけたからですね。おかげでビューが8000とバグったような数字をしています。
本当は筆箱紹介とか、紹介系の記事にしてほしかったのですが…。

色々思うことはありますが、私の記事をより多くの方に見ていただけたことは本当に嬉しかったです。これからも気ままに記事を書いていこうと思うので、今後ともよろしくお願いします。


いかがだったでしょうか。
画像多めだったとはいえ、調子に乗って事細かに書きすぎたような気がします。見にくかったら申し訳ございません。いつも通り訂正箇所や追加してほしい情報がありましたら、コメントにて教えていただけると嬉しいです。

長々とした記事になってしまいましたが、最後まで見ていただき本当にありがとうございました。
これにて以上です。

それでは。 

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