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眉村ちあきNEWアルバム「うふふ」から、始まる。

2024年11月27日。
すっかり気温も下がり世の中がクリスマスムードに突入しようとしているその時に、ノースリーブ爆音楽天才アーティストのNEWアルバムが爆誕した。

その名も、「うふふ」。ラジオで"大きい意味のある言葉で受け取り手によって色んな解釈をして欲しい"と眉村ちあき氏本人が話していたそんなタイトルは、今回のアルバムに何故かしっくりくる。
その秀逸さは、本アルバムをセットリスト順に聴くことで感じられる。私は三章に分けて描かれる人物模様だと受け取った。
ここからは「うふふ」の曲順から感じた眉村さんの創る世界の空気感を話していきたい。


第一章「立ち上がれよ、自分。」

1曲目の「許されたことがある」はピアノの優しくも壮大な、合唱曲のようなイントロから始まり途中から眉村サウンドであるトラックが合流する。
そんな曲の冒頭の歌詞はこうだ。

十二分に準備して真面目に生きる
凛とした花は光へ
上下左右見渡して生まれたプライドが
地面を固める
それが咲き誇るたびに 足元に影ができて
気づいた時に驚く こんな私もいたんだって

アルバム付属歌詞カードより引用

アルバム1曲目の冒頭は自戒から始まる。
だがしかし、「私はこんなやつだ。だからダメ。」「こんなことをしてるから良くない。」で終わらないのが眉村ちあきの描く"人間らしさ"であり、泥臭さであると思う。この曲のサビは『それでも明日は来るから』というフレーズで広がる。自分を下げてばかりの雰囲気から打開した時の、喉のつかえが取れるような気持ちを眉村さんはこう歌詞にしている。

許されたことがあるなら それをどこに向けよう
この世の広さが見えた時  染み渡る呼吸がある

アルバム付属歌詞カードより引用

そして、2曲目が「幸福ミュージック」である。
この曲は先行配信されていたためすっかり耳に馴染んでいるが、この曲が前曲の「許されたことがある」の後に来ることで大いな意味を生むのである。
それはとても印象的な歌い出しの歌詞、

誰でも幸せになっていいよって憲法があるよね

アルバム付属歌詞カードより引用

「許されたことがある」で自戒の連続から救ってくれた眉村さんは、さらに喝を入れるように幸せでHappyな方へと手を引っ張っていってくれるのである。実に綺麗かつ明るい所へ音楽に乗せて連れて行ってくれる完成された流れであるように感じる。

3曲目「Hangover」。意味は二日酔い。
こりゃちと、はしゃぎすぎたな…?ほら、2曲目の「幸福ミュージック」の歌詞に『オールナイトで遊ぶ朝ちょっと来るの早すぎないか』とあるじゃないか。
二日酔いで起きた部屋にいる猫も解体されたマグロも親友with馬も、実在するのでしょうか…もしくはまだ夢…??
溜まってるメッセージは弟の結婚式への催促なのでは?と思いつつ、馬借りて走れ!今の道交法なら車道は行けるはず。


第二章「察してよ」

ここから先はこのアルバムにおける第二章。それも、少し時系列が進むのかなと思う。

4曲目「恋の駆け引きだるい」、5曲目「最後のお願い」はどちらも男への苛立ち。察しの悪い男と付き合っても自己中な男への怒りで出来ている。

察して欲しい歌い手側と、無意識にイラつかせている男の絶妙に噛み合わない「恋の駆け引きだるい」。
付き合ったら付き合ったで嫌なところが露呈してきて心の器の限界がきている「最後のお願い」。
どちらかといえば「最後のお願い」の方が気持ちの整理もついていて、タイトルのお願いもシンプルかつトドメの必殺技になっている。

私がいなくなって 浸ったりしないでよ
これが最後のお願い☆

あと家も失え☆

アルバム付属歌詞カードより引用

なおこの曲の2番のこの歌詞、

ねぇ、言ってる意味わかる?
もっと建設的に話してお互いに深めあおうよ!

アルバム付属歌詞カードより引用

は本アルバム最後の曲である「朗読」の中で回収されるのは言うまでもない。

次の曲「私は知りたい。」
この曲はまさに気になる相手、それも過去の察しの悪い男なんて忘れるくらい気になる相手がいる自分に気付いてソワソワしているような感じがする。
「恋だの愛だの知らん」と連発するのは過去へのトラウマからか、そう言いきってしまうには早いような気がして、、。ただ存在に興味があるだけだし!と強がっているように聞こえる。

知りたい私は知らないあなたを知っていくうえで
どうしてこんなにも、
近づいたら知らない私が出てくるの

アルバム付属歌詞カードより引用

あなたのそばにいると自分の知らない自分が出ていることに気付いている。でも恋だの愛だのそんなもんじゃなくて、その、、なんていうか、、、

はぁ〜〜可愛い。この曲はタイトルに句点(、)、上記のフレーズにだけ読点(。)が使われている。冷静を保っていますよアピールか??効かないぞ、次の曲でバレるんだから。

7曲目「Pitapat」。ほらー!!!!!!

weblio英和辞典より引用

ドキドキしてんじゃーーん!!!!
この曲のラスト「鐘が鳴ってしまったの」とある。
シンデレラ?iPhoneのアラームにある「ベル」のこと?「ちなみに来週末、空いてるよ」って自分から会える日を教えて早く次に会う時が待ちきれない。可愛い恋心に溢れてる曲。

8曲目の「季節風」も恋と愛に満ち溢れている。
よかった〜素敵な人に出会えたんだね〜^^
EP「ラブソング史のはじめに」からアルバム入りしたこの曲が、悩める恋模様が連続する第二章を締める曲だと考える。


第三章「時は経ち大人へ」

9曲目、「Homesick」。
季節風から数年経ち、生活環境も変わり家を離れることが増えた。心の拠り所はパートナーだけ。
慣れないホテルのベッドや知らない街、行ったことのない空港は不安でいっぱいだからこそお家に帰ったらまた遊びに来て、沢山相手してよね?というように受け取れる。

10曲目の「とっておき」
これは毎日の日々の中に感じるパートナーの存在が語られているように思う。相手のことを思い出して口角が上がっちゃう時も、気分が落ちている時もパートナーのことばかり考えちゃう。そんな気分のいい朝に聴くのがピッタリ来そうな1曲。
歩くことを「かかとから地面に挨拶します」と表現できるのが作詞眉村ちあきの魅力であると実感させられる。

11曲目「凸凹」。この曲はNEC『止まらないワタシ、ススメ!』CMソングとして書かれたものであるためMVも就活生をフューチャーしたものになっている。が、この曲は就活生だけでなく全ての頑張る人を応援する曲になっていると思う。

前曲「とっておき」で描かれた特別扱いとは正反対。ステレオタイプ化しつつある就活生という型にはめられ、いわゆる"スタイル"に合わせるのが正解とされるような世界で自分らしさを持つことの重要さや自分を認めてあげることそのものを教えてくれる。

人が頑張っている時は精神も不安的になりがち。そんな時に支えてくれる曲である。

11曲目、「バケモン」。
この曲は自分自身が人生の主役であり、他人と比べられたり周りが羨ましく見えがちだけど前だけ向いて突っ込んでやるんだ!!という勢いが感じられる。
前曲「凸凹」で会得した自分らしさを失くす必要は無いという考え方をさらにブーストさせるような曲になっている。「もう諦める私は 荒地に置いてきてやったわ」このフレーズで過去の自分からの変化をかみ締めているようにも取れる。

12曲目、「濾過」。
この曲は、これまでの自分から濾過された新しい自分の誕生のメタファー(暗喩)になっていると思う。でもそれは完全な過去からの解放ではなく、+も-も味わってきた自分とこれからの自分の両立、受け入れに近いそれが起きているのではないかと感じられるのである。

そして13曲目、「朗読」。
これまでからさらに時系列は進み、パートナーとの思い出を振り返りつつ自分より世代が下の誰か(娘や孫?)とこっそり女子会をしているように聴こえてくる。
12曲目の冒頭、「夏、見回りが来ないビルの屋上でくれた缶ビールは苦かった。」から始まるが次曲の「朗読」では

この正体、素の状態みられたら嫌われるか?なんて
苦いビールも最初我慢してた

アルバム付属歌詞カードより引用

とある。きっと語り手もビールをくれた相手も同一人物なのだろう。最後が頓首で終わるのも粋である。


まとめ  「うふふ」の味わい

ここまで繋がっているように感じた理由を書いてみたがいかがだろうか。もちろん、あくまで1人のマユムラーの感じ方であり聴き手によって十人十色だと思う。シャッフル再生で聴いても印象は変わると思う。ひとつの楽しみ方として受け取っていただけると嬉しい。

そして、眉村ちあきさん。
素敵で最高で可愛くてかっこいい音楽を沢山作ってくれてありがとうございます。もう、これからの眉村さんが楽しみで楽しみで仕方ありません。
ずーっとついて行きます。大好きです。

こっさー


おまけ

歌詞カードにおいて、1枚目からピンクの線がず〜っと伸びている。今回の読み取り方をした結果と照らし合わせると一人の人間の心情変化なのかなと思う。

最初は低空飛行からグッと上がり、幸福ミュージックまでは右肩上がり。Hangoverは二日酔い中なのでぐわんぐわんにブレており、Homesickではわりと底の方へ(不安だしね)。
とっておきで上がったと思えば凸凹でグチャグチャに!!バケモンで自分の在り方を取り戻して、濾過ではるんっと一回転まで決めている。
朗読は明るい未来への希望を感じるような右肩上がり…で1度ブランクを挟むため途切れる。

オー!サカナ!!で右肩下がりなのは何故…と思ったが!!!!
これ!!!!!!!

海に潜ってる!!!?!?!?🐟

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