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ババア倉庫で迷子になる(外資系蟹工船)


生活のために久しぶりに倉庫バイトでもしようと、前回社会見学のような気持ちでオリエンテーションに参加した。

初出勤では指導者の方が迎えにきてくれタイムカードの打ち方などを教えてもらい、作業場まで連れて行ってくれた。

2回目出勤は少し間が空いてしまった。
緊張しながらも何も考えずに他の人について歩いて行くとどうも様子がおかしい。

見たことのない風景が広がっている。焦って歩いた。歩いて歩いて歩いた。
しかし無機質で巨大な建物であるがゆえに本当にどこにいるのか分からなくなった。
そして全然人間がいないため本当に泣きそうになった。

なんとか1人人間に出くわし「すみませんあのホワイトボード前へはどうやって行くのでしょうか?」

と尋ねるとぐるっと道なりに正反対だと教えてくれた。
そこに辿り着いてからも更に担当場所へは遠く、付き添われて何とか持ち場にたどり着いた。

ここですでに15分遅刻している。
何とか作業に入り、気持ちも落ち着いたところで別の若い指導係がやってきた。

「ミナヅキさん、迷子になったそうですがどこから入ったんですか?エレベーターはどこから乗りました?次回はちゃんと1人で来れますか?オリエンテーションの時に説明は聞いてました?」

と半ば取調べのように色々訊かれ、
仕事で注意されるよりもはるかに心をえぐられた。
もしも老後フラフラ徘徊して警察にお世話になった時ってこうなのかな…など思うと情けなくなってきて、ああバカな自分にもまだうっすらプライドというものがあったのだ、と思った。

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