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私のロールモデル①〜野の花診療所 徳永進先生〜

今から5年以上前、2019年9月14日、鳥取市内にある野の花診療所を訪問しました。

野の花診療所の徳永進先生は、在宅ホスピスやホスピス診療所で広く知られる先生で、NHKの特集にも取り上げられたことがあります。

診療所は、軽自動車がやっと通れるほどの細い道を入った下町の住宅地にありました。指導医の立花先生の車は車幅が2メートルほどあるため、近くの緑地公園に駐車したところ、「ここは私有地ですので停めないでくださ〜い」とお寺の住職さんに注意されてしまいました。どうやら個人所有の公園だったようで、私たちは汗をかきながら細道を抜け、なんとか門前薬局の駐車場をお借りすることができました。

中に入ると診療所内は明るく、廊下はフローリングで階段には花が生けられており、個室の入り口には模様の違うのれんがかけられていて、ポータブルトイレは置かず全て水洗トイレという気配りで、我が家にいるかのような工夫がされていました。その他、瞑想室、談話室、図書室、壁絵など、院内全体から暖かい雰囲気づくりが感じられました。
徳永先生の本でみる写真姿やホスピスなどのイメージから、人格高潔で聖人のようなイメージを勝手にもって、2人でやや緊張しておりましたが図書室でお会いすると、満面の笑みでパワフルで冗談をたくさん言う、とっても人間味溢れる先生でした。

そんな中でも、一言一言には大変重みがあって、

患者さんの人生の中で病いは急性期、慢性期、終末期の3ステージがあって、終末期には 我々医師も患者さんと共に揺れ動いて、揺れ動いての日和見主義でなければならない。ネガティブケイパビリティの涵養が必要

終末期医療はサッカーのパスワークと一緒。医師1人で試合運びをするのではなく、看護師、リハビリ、薬剤師など多職種でパスを出し合うこと

臨床は野球と一緒。名監督や名コーチから習うより、実際にバッターボックスに立った打者やマウンドのピッチャーからの真剣勝負で成長する

普段、漠然と思っていても言語化できないような難しい概念を、先生は的確でわかりやすい言葉で伝えてくださり、私は何度もハッとさせられました。

この訪問を通じて、私は医師としてのあり方について深く考えさせられました。徳永先生のような卓越した専門性と温かい人間性を兼ね備えた医師に直接触れることで、自身の成長の方向性を明確にすることができました。

優れたロールモデルに出会うことは、臨床の現場での学びにとどまらず、医師としての価値観や姿勢を形成する上でも極めて重要です。プロフェッショナリズムを学びながら、実際に実践している方から直接指導を受けることの意義を改めて実感した1日でした。

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