KILTは、なんのためにあるのでしょうか?(和訳)
これは、KILT Protocolの創業者兼CEOのインゴさんとの対談です。
KILT Protocol(以下、キルト)は、自己主権型であり、匿名型、検証可能型なクレデンシャルと分散型の識別子を持ったブロックチェーンです。
けれど、しっくりとくる意味についてわかりますか?それはキルトの生みの親であるインゴさん彼自身に聞くのが一番でしょう!インゴさんは彼の言葉でキルトについて解説してくれました。
まずは、キルトに最も関連性のあるものからお話してもらいました。分散型の識別子やクレデンシャルとはなんでしょうか?
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インゴ:キルトはアイデンティティを保管するためのシステムです。ただ、ここが面白いところなのですが、アイデンティティとは識別子とは異なるものなんです。
もし識別子があったとしても、それは単なる名前や数字であり、アイデンティティについては何も語っていません。例えば、私の名前はインゴです。もし私の識別子が「インゴ」であれば、それはなんの情報もありません。私がベルリン出身であることや、キルトについて研究していること、運転免許所を持っているかどうかも、なにもわかりません。つまり、識別子には、なにも情報は含まれていないんです。
もし、ここにたった1人しかインゴという人がいないのであれば、あなたはインゴに直接質問をしてくれれば、私は、あなたと話している私であることがわかります。
でも、もしここに2人”インゴ”がいれば、私たちは決してわかりません。なので、識別子が少しでも特異なものであればいいなと思います。
今回は、それの第一弾です:アイデンティティは、識別子があって初めて存在するもので、それは他の全てのものとリンクしているものなのです。そして、私たちの世界では、クレデンシャルと識別子がリンクしています。
そこで、実際の生活で考えてみましょう。
私はヨーロッパのパスポートを持っています、そして通常それには”インゴ”と名前が書かれています。それに証明写真や他の情報も載っています。
しかし、私は”インゴ”であるし、パスポートにも”インゴ”と書かれているので、パスポートは私であるとリンクさせることができます。それにもかかわらず、パスポートには、私に関する情報多大に記載されています。例えば、私がヨーロッパ人であることを。そしてこのパスポートこそが私たちがクレデンシャルと呼んでいるものです。
つまり、アイデンティティというのは、識別子にどんどん多くのクレデンシャルを追加していくことで作られるんです。
もし、デジタルアイデンティティを必要とするのであれば、人と物にリンクする識別子が必要です。識別子にリンクされたさまざまなタイプのクレデンシャルが必要です。そうして段階的にデジタルアイデンティティを作っていくんです。
もしSNSなどのプラットフォームに登録するときに、例えばユーザー名やパスワードなど。それから、ユーザー名がすでに使われていないか、パスワードに十分な数字や文字が含まれているかなどをチェックします。問題がなければ、登録したユーザー名とパスワードはあなたの識別子になります。
プラットフォームにアクセスして、特定のものに「いいね!」を押したり、コメントを書いたりしますね、プラットフォームによっては、写真や大学のステータス、パスポートなどを追加することができ、アイデンティティとして積み重なっていくんです。 また、他のものをリンクさせることもできます。これらはあなたのクレデンシャルです。これはあなたの行動であり、あなた自身の集合体なのですが、最終的にはプラットフォームに集約されてしまいます。
けれど、これって機械に対しても応用出来ることなんです。例えば、機械の識別子が非常に長い番号だとします。これは固有のものなので、この機械は番号によって識別されますね。
そして段階的に、この番号にクレデンシャルを追加していくんです。 例えば、ある規格に対応したIOT機器のように、ですね。そうすることでこの機械はアイデンティティを取得することができます。識別子がブロックチェーンに登録されると 非中央集権的になります 。ブロックチェーンは情報を特定の場所に保存するのではなく コンピュータのネットワークに分散して保存するからです。
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検証可能なクレデンシャルとはどういうことか、またなぜ検証可能であることが重要なのですか?
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インゴ:それにはいくつかの回答があります。
まずは、クレデンシャルとは信頼の上に成り立っています。信頼はブロックチェーンが創り出せるものではなく、リアルワールドで起きるものです。何千年もの間、私たちの社会では、そうやって信頼を作りあげてきました。
キルトは、リアルワールドでのトップダウンの信頼という古いプロセスを、デジタルワールドに持ち込みました。
誰でもクレデンシャルを作ることができます。それに、”自分で”作ることができるんです。紙に自分の名前を印刷して写真を貼り付け、そこに運転できると書いておけばいいだけです。でも、ただ書いただけのクレデンシャルでは人は信じてくれないかもしれません。
その点では、既存のものを利用した方が良いと思っています。要するに、既に信頼のあるものという意味です。運転免許所のように政府が取り扱っているものみたいにですね。おそらく、あなたの写真や名前、車のクラスなども含まれているでしょうしね。これであれば、おそらくどこの国へ行ってもその写真を見ることで、誰もが「よし、信じよう」と言ってくれるでしょう。それは、運転免許所に張り付けられている写真とあなた自身の顔を見比べることで判断できるからです。
しかしデジタルではそうはいきません。あなたがクレデンシャルを誰かに見せるときには、写真がありません。形のあるクレデンシャルであれば、それを見せることができますが、デジタルではそれができず、ただの数字しかありません。
そこで、その数字が本当に意味があるものなのかを確かめることができる、信頼を担保された存在が必要です。それをキルトでは、アッテスター(attester*)と呼んでいます。アッテスターの仕組みについてはまたの機会で詳しく説明しますが、基本的には、情報が信頼に値するのかを確認することや、それを証明するものです。
勝手に私が補足しています。
*The Attester is the trusted entity that has the ability to check whether the claim is legitimate and to issue the corresponding credential in return for a fee paid by the Claimer.
>>KILT Protocol info sheet
これは、デジタル・クレデンシャルにデジタル署名し、それを要求者に送信することで行われます。それに加えて、クレデンシャルのハッシュ(情報を表す数値)を作成し、ブロックチェーンで保存します。これは、個人情報や書類そのものではなく、ただのハッシュです。
重要な事実は、クレデンシャルは、信頼されたエンティティからユーザーに発行されることと、ユーザーは自身でクレデンシャルを所有することができることです。いつ、誰に、どのような目的で見せるかを決めることができます。
つまり、あなたが私から車を借りたいとき、あなたはクレデンシャルを私に渡すとしますね、そのときにあなたはデジタルの運転免許証を見せるだけでいいんです。
そこで私は、クレデンシャルから出力されたハッシュが、実際にブロックチェーン上に存在するかどうかを確認します。そこで、存在していたら、あなたは問題なく、車を借りて走り出せばいいのです。運転免許学科では、あなたが車を借りたことは絶対にばれません。
これが、検証可能なクレデンシャルと呼ばれる理由です。簡単ですね!
けれど、もしあなたがクレイジーな運転をして、運転免許学科が「免許証を返せ、今後10年間は二度と運転してほしくない」と言ったらどうなるでしょうか?現実の世界では、免許証を送り返すように言われて、免許書をはく奪されてしまいます。っでもデジタルワールドでは、それはたんなる数字でしかありません。仮に「免許証をお返しします」と言って送ったとしても、デジタルコピーのままです。そのため、アッテスターがすべてが問題なく行われていることを確認し、問題があればクレデンシャルを失効させることができる方法が必要です。
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だからこそ、デジタル・クレデンシャルは
取り消し可能である必要があるんですね?
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インゴ:そうです!そのためにブロックチェーンを使うんです。キルトブロックチェーンでは、クレデンシャルを無効にできるようになっています。つまり、アッテスターが、あなたのデジタル免許証を無効にさせたい場合、運転免許証を表すクレデンシャルの別のハッシュをブロックチェーン上に置いて、無効化したことを示すことができるのです。
ということは、車を借りに行って、クレデンシャル(デジタル免許証)を提示すると、最初は問題ないように見えます。しかし、ハッシュをチェックすると、「確かにかつてクレデンシャルはあったが、このクレデンシャルは失効している」とわかってしまいます。そうすると、車を借りることはできません。
だからこそ、クレデンシャルの有効性を保管するエンティティが重要なのです。でも、クレデンシャルっていうのは大企業が持っていては困るんです。 「大金を払うまで全員のクレデンシャルをはく奪すればいい」などと考えることもあるかもしれないし、そうなったら世界で最も危険な会社になるかもしれない。だからこそ、クレデンシャルの有効性は企業の手に委ねられるものではなはないんです。アッテスターにとって、クレデンシャルを取り消すことはできますが、中立の立場にいなければならないんです。それを記録するためにパーミッションレスのブロックチェーンを使う理由です。
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おもしろい!!先ほどのKILTの説明に戻りますが、「自己主権」とはどういう意味でしょうか?
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インゴ:自己主権とは、とっても便利なものという意味です。要するに、クレデンシャルを自分で保管しているということです。リアルワールドでは、クレデンシャルを家やお財布にしまっていますよね。基本的には、主権があるんです。でも、デジタルワールドではそれがありません。ユーザー名とパスワードを使ってソーシャルメディアのプラットフォームにサインアップする例では、あなたはクレデンシャルを持っていません。プラットフォームが持っています。
しかし、KILTでは自分のデジタルクレデンシャルを所有しています。それをお財布に入れておけば、誰かに運転免許証などのクレデンシャルを求められたときに、それを送ることができるのです。 それに、匿名性という観点にも影響します。というのもクレデンシャルがあれば、何を人に見せるか、どれだけ公開するかを選択できるからです。そしてブロックチェーンでは、それを可能にするんです。
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データは匿名なんですか?
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インゴ:私たちがしていることは、自分のデータをコントロールできるようにすることです。私たちはブロックチェーンに保管するのではなく、あなたのウォレットに保管します。 クレデンシャルが有効であるか否かを示すハッシュのみがブロックチェーン上に存在するんです。
しかし、匿名性はそれだけではなく、さまざまな方法で提供されなければならないものです。
さて、運転免許証の話に戻りましょう。もしあなたがバーに入りたいなら、18歳以上であることを証明しなければなりません。リアルワールドであれば、運転免許証や身分証明書、学生証など、財布に入っているクレデンシャルの中から好きなものを選んで証明することができますよね。これをドアの前の人に見せればいいんです。18歳以上であることを証明するために、写真と生年月日を見るだけでいいのです。でも、あなたの名前やその他の情報を知る必要はないですよね。(指をかぶせて隠すこともできますが、、、)それから、バーの中に入ることはできます。これが選択的開示と呼ばれるもので、これは匿名性の一部でもあります。
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それは、デジタル・アイデンティティの素晴らしい発展につながりそうですね!では、今日は最後の質問です。ブロックチェーンとは一体何なのでしょうか?
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インゴ: 簡単に言えば、ブロックチェーンとは、デジタルで分散化されたデータベース、つまり取引の帳簿台帳です。つまり、基本的にはブロックチェーンについて考えるときは、データベースである。という点から考えるんです。これはクレデンシャルよりも古いものです。
データベースは、約4000年の歴史があります。始まりは、古代の祖先からなんですよ。彼らは、誰がどれだけ税金を払っているかなどの情報を、粘土板に記号として掘って残していたんです。これが最初のセントラルなデータベースだったんです。
この粘土板の破片を持っていて、そこにはすべての情報が書かれていて、その粘土板はある意味で真実を語っていたんです。そうして、自分がどれだけの税金を払っているかを知りたければ、この粘土板を見ればよかったんですね。このセントラルデータベースの原理は、私たちのすべてのものの基礎となっています。これがなければ政府は機能しませんし、社会も機能しません。銀行も機能しません。これらのデータベースは歴史的に見ても大きな成功を収めています。
でも、これにはデメリットもあります。一つ目は、粘土板を床に落としてしまうと壊れてしまうことです。近代的なデータベースは粘土板で作られているわけではないですが、それでも簡単に壊れてしまいます。 複製品を作ればいいのですが、そうするとエラーが出ることがあります。それに、2種類データを持っていても、どっちが本物なのかわかりませんよね。データベースの恐ろしい点の2つめは、通常はたった一人の人が管理していることです。そしてその人は賄賂を渡されているのかもしれない。だから、彼らは不正を行うかもしれないんです。つまり、多くのデメリットがあるわけです。
一方でメリットだってありますよ。あなたはセントラルにある情報の一部を持っているので、簡単にそれを使うことも管理することもできますよね。それに対しては、ガバナンスも全く問題ありません。その人が不正を行わない限り、そのデータベースは死ぬことがありません。なのでセントラルデータベースは基本的にそういう仕組みになっています。
最近のセントラルデータベースは、非常に速いし安いし、簡単に管理できるため、ある程度の成功を収めています。しかし、古代のものと同様に、壊れやすい/不正しやすいという、この2つの問題を抱えています。
これらの問題を解決したうえで、システムを作りたいのであればブロックチェーンは最も魅力的で簡単な解決策ですよ。複製ができないシステムであって、みんなが同じ帳簿を持っていて、誰でも経理担当者になれるんです。帳簿に何かを追加する場合、全員が追加しなければなりませんが、これは管理が非常に難しく、時間もコストもかかります。でもこれは本当に安全ですよね。帳簿の1つがなくなっても、999枚のコピーがあるので問題ありません。もし、経理担当のうち1人か2人が不正したとしても、不正していない他の998人がいるので、問題はありません。そして、新しいデータを書き加える都度、全員が持っている帳簿が同じバージョンのものなのか確認しなければなりません。これがブロックチェーンの基本的な考え方です。
では、このようなものを使ってなにができるでしょう? これは、たった一つのエンティティや人を信頼したくない場合に使うことができます。データベースでは、常にそれを実行している人を信頼しなければならないですよね。確かに、私はその情報を読むことは、できますが、彼らが実際にそこに書き込んだものであるかを信じる必要もあるし、仲介者がいるかもしれませんが、そこに書かれていることも信用しなければなりません
そのようなケースにおいて、まず仲介者を取り除きたい場合はブロックチェーンを使って、数学的なアルゴリズムと、民主的な多数決で決められる経理担当者たちによって定義されるシステムを構築することができます。そして、誰でもシステムの一部になることができ、経理担当者にもなることができるんです。そうすれば、あなたは群衆の知恵を持ちながら、数学的真実を持っていると言えるんじゃないでしょうか。
つまり、人や組織への信頼を、数学的な真実へと変化させていくんです。そしてほとんどの人が数学的な真実を信じてるんですね。
もし、何千台ものコンピュータが私の口座の残高が正しいと認めているのであれば、一人の人や機関を信じるよりもずっと簡単に信じることができます。人や機関であれば、間違いがあるかもしれないし、不正を起こしているかもしれないからです。
いま説明したのは、ブロックチェーンはなんのために使えるのか、ということです。すべての物事に使えるわけじゃないんです。過去には、人々はブロックチェーンを使って、さまざまなクレイジーなものを作ろうとしました。例えば、閉鎖的な物流を作ろうとしたんです。でもそれって何の意味もないですよね。
もし3人のパートナーだけでブロックチェーンを運用するとしたら、一緒にシステムを運用しているのでお互いを信頼しなければならず、オープンではありませんが、データベースを運用して全員がデータベースの鍵を持つ方がはるかに簡単で安価です。ブロックチェーンが意味を持つのは、信頼できるエンティティを常に利用することなく共同作業を行う必要がある場合のみです。ブロックチェーンは、エンティティへの信頼を、数学的な真実に置き換えます。
ブロックチェーンには非常に多くの用途があり、今後10年間でインターネットを完全に変えてしまうと思います。
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インゴさんありがとうございました!
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