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遅れてやってきた人生の夏休み

ある初秋の朝、大学入試の試験会場に行く夢をみた。
最初に通った大学の、1年生のときのことだった。
あまりの焦燥感に飛び起きた。
「あぁ、やっぱり私行きたかった大学に未練があるんだな」と思った。
だから、仮面浪人することを決めた。

塾講師として働きはじめた今思えば、高3時の受験はあきらかに進路研究不足だった。
敵を知らなさすぎる。目標が定まらなくてもある程度の学校には行けるような学力をつけられるくらいの能力は自分にはなかったのだと思う。だからこそ、ちゃんと逆算して相当の勉強をする必要があった。

決めてすぐに親に報告し、休学をした。姉からは「親に負担をかけて」と叱られた。これもあって私は「これだから末っ子は」的な意見が大嫌い(笑)主語が大きいんだよ、それってその人がただそういう気質ってだけでしょ?と思う。まぁこれは置いておいて。

そこからの初めての予備校生活、首都圏ということもあって、地方から出てきた私にとっては情報が豊富で具体的で、ちゃんと頑張れる気がした。
受験することを決めて予備校に通い始めたときには、既に(当時の)センター試験の締切は終わっていたので、動き出しがどれだけ遅かったかがよく分かる。
当時の先生たちもよく私をあたたかく迎え入れてくれたなと思う。まぁ、お客様だから、ということが大きいんだろうけど。

結局、高校時代から憧れていたのとは違う大学への進学を決めたのだけど、今でもあのときの私にファインプレー!と言いたいくらい大正解の選択だった。
大学に入学してからの4年間は本当に楽しくて、充実していて、今でも「戻りたいな〜」と月に数回は思うぐらい。こう書くとすごく月並みになってしまうのだけど。ただ1番よかったな、と思えるのは、友人たちや恩師との出会いと、その人たちから社会を生き抜いていくために必要なことをちゃんと得られたこと。

学びをとめるな、死ぬな、もがけ。
不平等なことも理不尽なこともたくさんある。
上手くいかないことも、理想通りじゃないことも多い。
足もとを見たり、騙したりする人もいる。
情報であふれかえっている、常に新しいものが出てくる。
そんな中で、情報を取捨選択すること、ちゃんと自分の頭で考えること。
そのために知ろうとして学ぶこと、教養を身につけること。使いこなせる知識は武器になる。

いまでもよく、くじけそうになったとき、漠然とした不安で押しつぶされそうになったとき、思い出す。
もう先生が授業で話していたことも、ゼミで議論していた内容も、おぼろげなんだけど、
でも、あのとき、あの空間で【いまのこの瞬間一生覚えてるな】と思えるくらい熱量があったことはちゃんと記憶している。

就職活動中の「大学で学んだことは?」への問いにこんなことをこたえたらきっと落とされるんだろうけど。
仮面浪人してからの大学生活は、遠回りではあったけど、まっすぐ歩くよりたくさんの景色を見られた気がするから、大正解。

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