【毎日短編台本-3月13日】 小宇宙
基本情報
タイトル-小宇宙
作-臼井智希
目安時間-5分
本編
人がいる。複数人でも、ひとりでもよく、複数人の場合セリフは自由に割って読まれる。人のいるそこは舞台上であり、舞台の上、客席どちらも真っ暗である。
不意にその人を照らす明かりがつく。
人「舞台って、ブラックホール?みたいです。思います。劇場、舞台って、どんな場所にも見立てられるように真っ黒なことが多いんです。それに、近頃は上演中、客席も電気が消えることが多くなりました。だから照明がついてない舞台上からはほとんど何も見えません。どこを向いても真っ黒。そのうちに自分がどこを向いてるかもわからなくなります。それがブラックホールみたいって。行ったことないですけど。でも、ブラックホールってすごい重力なんですって。この真っ暗な箱も、私を吸い込みそうな引力があります。あ、ピンときません?試してみましょうか。照明さん、この明かり、落としてもらえますか?」
完全暗転。
人「どうですか?隣の人のお顔、見えますか?見える人も見えない人もいると思いますけど。でも、結構見えなくないですか?それで、この闇の中にいたら、吸い込まれそう、じゃないですか?私だけ、かな。あ、照明さん、ありがとうございます」
また人を照らす明かりがつく。
人「こうやって、照らされると星になった気持ちになれます。明るい存在なんだ、照らされるべき存在なんだって。思い上がれます。また変えてみましょうか。好きなやつ!ください!」
人を照らす明かりではなく、舞台上や客席のあちこちに小さなカラフルな明かりがつく。一つ一つの光量は弱く、なにかを照らすに値しないがたしかに光がそこにあることがわかる。
人「これ!どうですか?私はこれを見ると、宇宙になったなって思います。ブラックホールから、光がポツポツあって、全体としては黒いけど確かに人の顔が、輪郭がわかって、色とりどりの光が瞬いてる。黒く引き摺り込まれるブラックホールから、黒い中でカラフルがふわふわする、宇宙になりました。小さな小さな宇宙です。舞台作ってて、一番好きかもしれません。宇宙の中にいられる時。みなさん、宇宙の中にいますか?」
終幕
使用したい場合は
上演など、なにかにこの台本を使用したい場合は、TwitterのDMかリプライ、noteのコメントにご連絡ください。
Twitter→ https://twitter.com/usuitomoki0504?s=21&t=rTljRW8kxCXLFrKf_INQdA