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【毎日短編台本-4月10日】 夢で逢いましょう (2人劇)


基本情報

タイトル-夢で逢いましょう
作-臼井智希
ジャンル-会話劇、現代劇
目安時間-5〜7分
登場人物
折宮華(おりみや-はな)
井瀬みちる(いせ-みちる)


本編

高校の美術室の中。
眠っているみちる。華は絵を描いている。

華「はっ!これ夢か...うん。私もう高校生じゃないし。...みちる。おーい。
なんで人の夢の中でまで寝てるのこの子?おーい」

みちる、起きる。

みちる「華の記憶の中の私がよく寝てたんじゃない?」
華「...おはよう、みちる」
みちる「うんおはよう、華」
華「変わんないね。まだモネが好き?」
みちる「うん。私はもう変わらないから。だってほら、華の思い出だからね」
華「強いなぁ」
みちる「強くないよ。結局死んじゃってるんだし」
華「強いよ。私は、なんにもできなかった」
みちる「絵は任せて、なんて言ったのに?...ごめん、イジワルだったね」
華「ううん。絵は私たち三人の、三人の夢だった。」
みちる「もとはけいちゃんと華のだよ。でもけいちゃんは描けなくなって、だから私が描いた」
華「でもみちるは死んだ」
みちる「うん。」
華「私が弱かったから」
みちる「ちがうよ」
華「ちがくない!私が描ければ」
みちる「ううん、華がかけても、私は私が描けなくなった時点で死ぬよ。私が、けいちゃんの代わりができないなら、死んだよ」
華「私は、けいからも、みちるからも、絵を託された。私が、託させた、なのに。なのに、私は、まだ描けない!!!......私、絵描いてないの。ただ社会人になって下げたくない頭下げて、下げられても何も思わない頭下げられて、悪口言って言われて、なにもできない、なりたくない、なりたくなかった社会の一大人になって!したい事は、しなきゃいけないことは、絵は、何もできてない。...みっともない」
みちる「ごめんねぇ、死んじゃって」
華「全部夢ならって思う。起きたら、けいがいて、みちるがいて、おはようって、絵描いてる。」
みちる「だったら、いいねぇ。ね、私が死ぬときさ、私の代わりに絵描くって、言ったよね」
華「うん」
みちる「描かなくていいよ」
華「え?」
みちる「でも、描くことを絶対に諦めないで。実際描かなくても良いんだ。でも、ずっと、描こうとしてて。そうすればきっと、10年もすればなんとなく自分を許せて。さらに10年もすればきっと、楽しかったことも思い出せる。それまで、ずっと、描こうとして。苦しみ続けて。それがきっといつか、きっと、それが救いになるよ。それまで、みっともなく、生きろ」
華「............うん、わかった」
みちる「さ、目覚めの時間だ。」

転換。ワンルームマンションの一室。華の家。
華が目覚める。

華「んん、ん、ふぁ」

華、顔の涙の跡に気づく。

華「夢でも見たのかな」

壁にかかっているモネの絵。

華「今日は、見てもなんだか、くるしくないよ。おはよう、みちる」

終幕。


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