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【毎日短編台本-2月15日】 名前の欠けた星 (1人劇)


基本情報

タイトル-名前の欠けた星
作-臼井智希
ジャンル-モノローグ、1人劇、恋愛
目安時間-5分
登場人物
てれす 高校2年 美術部


本編

客席上空には星座を模した小さなライト照明が吊られている。舞台上の奥には、星空の絵がたくさん立てられている。てれすが舞台上に1人。

てれす「星空を見るのが好きなんです。綺麗だから。絵、描くんですけど。ずっと、星空ばかり描いてます。あ...すいません。ご挨拶が遅くなりました。えっと、てれすって言います。ちょっと変わった名前ですよね。高校2年生で、美術部に入っています。風景画が好きで、自分で描くのはほとんど、あ、見て貰えばわかると思うんですけど、星空の絵ばっかです。星って、地球からだとあんまり違い、わかんないじゃないですか。でも、全然違う景色が一箇所一箇所広がってて、想像すると楽しいです。有名な、アンタレスとか、デネブとかシリウスとか、ある程度知ってることの多い星もあるんですけど、でも、あんまり有名じゃない星は調べてもあんまりわかんないから。好きに想像してます。名前のある、有名な星も、全然知らないちっちゃな星も、みんなみんな地球から見る星空の中では大差なくて。なんか、いいなぁって思います。...あ、ちょっと待ってくださいね。」

てれす、本を持ってくる。

てれす「銀河鉄道の夜、です。好きです。なんか。星の絵を描くのは星空が好きだからだけど、星空が好きなのはこの本のおかげかもって思ってます。昔、ジョバンニにとってカムパネルラは星のようなものだと思っていました。自分を導く光を放つ、大きな一等星。でも、最近ジョバンニこそがカムパネルラの星なんじゃないかって想っています。ジョバンニがいたから、カムパネルラは進めたんじゃないかって。ジョバンニは弱々しく無垢に光る、道標なんじゃないかなって、最近は思っています。なんの話でしたっけ。あ、そう。星空の話。空には無数の星があって、きっとこうしている今でも新しい星が咲いて、一つの星が破れています。その中には見つかって名前がつけられる星もあれば、見つからずに咲いて散る星もあると思うんです。......私、好きな人がいました。恋と星って、似てるなって思ったんです。私が好きだった人には恋人がいて、その2人が付き合っていることはみんな知っていました。私があの人を好きだったことは誰も知りません。誰も知らないまま好きになって、誰にも知られないまま、無かったことにしました。生まれて見つからず、そのまま無くなる星みたいだなって、思うとちょっと、なんかそれもいいかもって思いました。私は、そういう星、好きだから。あの人と恋人さんとの星は、有名で、大きくて、星座になるような星。私の星は小さくて、誰も知らない、ひとりだけの星。名前もつかない、名前もつけない星。ね?そういうと、なんだか素敵な経験だったように思えるんです。.....勇気を出さなかった言い訳かなとも思ったんですけど、でも、そのおかげで好きな絵がもっとたくさん描けてるなって思ったら、良いと思いません?
......喋りすぎました。あの、ゆっくり見ていってください。描くことで私は救われてますけど、絵は見られてこそだとも思いますから。
ごゆっくり」

終幕


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