【毎日短編台本-2月16日】 香の移り (2人劇)

基本情報

タイトル-香の移り
作者-臼井智希
ジャンル-恋愛、会話劇
目安時間-5分
登場人物
宮本紗香(みやもとさやか) 大学生　女性
髙橋馨(たかはしかおる) 大学生　男性

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本編

バス停のベンチ。馨が座っている。隣にカバンを置いている。
しばらくして紗香が入ってくる。

紗香　...馨？
馨　　...さや、久しぶり。
紗香　今帰り？
馨　　そう
紗香　ふうん
馨　　ここバス少ないよな。
紗香　そうだね。

しばらくの間。紗香、携帯を取り出す。

馨　　今期の単位、大丈夫そう？
紗香　うん。
馨　　...そっかぁ、いや俺やばくてさ。滝山の古典落ちてそうなんだよなぁ
紗香　そうなんだ。まあ滝山バカに厳しいもんね
馨　　だれが馬鹿だ

しばらくの間。

馨　　寒いな。
紗香　そうだね
馨　　あ、そういや新しい彼氏は出来た？
紗香　出来たけど
馨　　あ...そっか
紗香　なにその反応。もう別れて半年近いんだよ。そりゃ次の彼氏くらい出来るでしょ。
馨　　そうだね
紗香　...なんでか知らないけど
馨　　ん？
紗香　男の人って多いよね。一回自分を好きになった人は、ずっと自分のこと好きだって思ってる人。
馨　　いや、別にそういうわけじゃないけど
紗香　そう？

紗香、携帯を弄る。しばらくの間。

馨　　なんか、気まずいな
紗香　和やかに談笑したい？
馨　　うーん...うん
紗香　マジか。まあいいけど。で？
馨　　でと言われるとまたなんとも...
紗香　そりゃそっか。あーそういや私最近バイト始めたんだけど
馨　　あれ、本屋は？
紗香　辞めたよ随分前に。今は雑貨屋？みたいな
馨　　へー
紗香　アロマグッズとか、そういうのも使ってるわけ。もう最近、匂いがすごくて鼻馬鹿になりそう。
馨　　大変だね。
紗香　薫はバイトは？
馨　　まだ続いてる、吉田屋
紗香　よく続くね〜
馨　　新しいとこ応募したりする方が気が重くてね
紗香　ま、たしかにね。
馨　　アロマグッズとか、自分でも使うの？
紗香　あー、香水は今でもつけてるけど。アロマはあんまり。
馨　　そうなんだ。
紗香　彼氏があんまり強いのつけると嫌がるから、前よりは抑えてるけどね。馨はアロマとか
馨　　使わないなぁ
紗香　だよね。
馨　　てか、前と香水変えたんだ？
紗香　うん。ちょうど使い切ったタイミングでもっと、なんか、シトラス系って言ってわかる？
馨　　わかる
紗香　そう、そういうのに変えた。
馨　　前はフローラル系だったよね
紗香　よく覚えてんね。そ、花。今はオレンジとかグレープフルーツとかあっち系。
馨　　彼氏の好み？
紗香　うーん。いや、彼氏はなんか石鹸っぽいのが好きらしいんだけど、私あのタイプ好きじゃないから。
馨　　折衷案？
紗香　そ、妥協点。で、あたしこの後バイトなのよ。
馨　　そうなの？大変だね
紗香　一限から授業で疲れてるのよ。
馨　　そうなの..?あ、ごめん！

馨、隣に置いていた鞄をどかす。

馨　　座る？
紗香　座る。

紗香、薫の隣に座る。

紗香　相変わらず鈍いね
馨　　...ごめん。
紗香　別に良いけど。...ねえ
馨　　なに？
紗香　もしかして、香水つけてる？
馨　　あ、うん。
紗香　ちょっと嗅がせて
馨　　え、ちょ

紗香、強引に馨の手を引っ掴み手首を引き寄せる。

紗香　やっぱり...これ私が馨と付き合ってたころに付けてた香水だよね。
馨　　...はい
紗香　いや、いや別に良いんだけど。買ったの？
馨　　うん。紗香がつけてるとこ見てたから瓶のデザイン覚えてた。
紗香　マジか。...そんな好きだったの、この匂い。
馨　　、まあ。
紗香　ふぅん...女性ものだけど意外とあってんね。
馨　　そう？
紗香　うん、悪くもない。

バスが来た音がする。

紗香　あ、来た。

馨、動かない

紗香　乗らないの？
馨　　うん。
紗香　そ、じゃあ。

紗香、去る。
終幕。

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