至福の時
待ちに待った、秋がきた!
このまま、日本の気温は下がらないんじゃないかと心配するくらい、暑い毎日だったけれど、10月に入ったとたん、急に気温が下がり、涼しい風が吹き始めた。
高い空を見上げて、深呼吸。
ふぅーーー。
めいっぱい、体の中にも、秋を取り込む。
御所のベンチに座っていると、鳥の声や虫の音、人の話し声やさくさく砂利道を踏む足音などが、静かにそっと耳に届く。
なにより、みな、ゆっくりペースなのが心地よい。
京都盆地の中で、ここだけ時間がゆっくり流れている感じ。
いや、実はこの速さが、時間の本来の速さなのかもしれない。
私たちはいつも、やらなければならないという、脅迫じみた忙しさに追われて、時を見失ってしまっている気がする。
私はおもむろに、カバンからパンを取り出す。
お気に入りのパン屋で、値段やカロリーを一切気にせず、ほしいままに買い込んだパンたちだ。
「ごはんはいいけどパンは脂質高いから減らしてね」
という内科の先生の言葉はどこへやら、美味しそうな品々を目の前にしたら、ダイエットの意志なんて、一瞬で消え去ってしまうから、恐ろしい。
ちょうどお昼だ、お腹も空いた。
目の前に広がる自然の中で、大好きなパンをいただく。
あぁ、こんな瞬間こそ、至福の時。
生きててよかった!と心底思えるような、感動シーンなんて、そうそう毎日あるわけではない。
多くは、日々の面倒な家事や、やらなければならない仕事に追われ、あっという間に一日終わってしまう。
だからこそ、せっかく得た「至福の時」を楽しまなきゃ。
小さな至福の時の積み重ねが、積もり積もっていくうちに、知らないうちに、幸せな人生となっていくのだから。
主人公は、私。
プロデュースも、私。
それを評価するのも、私だけ。
大切なのは、楽しむこと。
主人公に徹すること、なりきること。
パンは少々?食べすぎてしまったけれど、至福の時でこころも満たされ、ほくほく気分。
明日を歩いていく元気になる。