The Great Battle of students
私達はよく耐えている。
北門の守りは上々だ。
相対している堀北の軍は城壁にこそ上ってくるものの、制圧するまでには至っていない。むしろ、上ってきた敵をこちら側が散々に叩き、現状、私たちが優勢まである。
堀北自身は城壁に上って来ようとはせず、常に下から見上げる形を取っている。おそらく、城壁の一部を制圧し、安全を確保してから自身も上ってくるのだろう。
堀北のことは尾上は知っている。
先の大戦で彼の戦いを近くで見た。
勢いで押す。正面から叩き潰す。
まさに漢の戦い方ってやつ。
堀北はそれをする男だ。
ただ無謀とはまた違う。
しっかりと引き際が見えている。
自分の操れる領域の中で推進を行う。
行き過ぎる前に引く。
要は頭の良い一面もあるのだ。
そんな堀北だが、今はその自慢の勢いも見られない。
というより私達が見させていない。
あの軍の推進力の原動力は堀北自身。
アイツが軍の先頭に立たない限り、全く脅威ではない。
つまり、城壁に堀北が上ってこない限り、敵に勝機はない。私達で十分に抑えられる。むしろ勝てる。
籠城を決め込んだ甲斐があった。
問題は南門。鈴山君だ。
敵はあの冨樫。猛華の大将軍筆頭だ。
冨樫の緩急ある攻めで南門の被害は相当なものらしい。
鈴山君もかなり奮闘しているらしいが、その甲斐虚しくといったところ。
私兵がいないのがかなり痛い。
今、鈴山君は僅かな私兵と多くの尾上軍も率いて戦っている。多くの鈴山軍は別の城にいるためだ。
現状、南門の尾上軍はバタバタと死んでいる。
息が合わない。
上律として同じ大学に属しているとはいえ、私達と鈴山君の戦い方、訓練方法は全く違う。
鈴山君のやり方についていけないのは当然だ。
西門の御代川君はとりあえず現状維持。
敵も苛烈には攻めて来ず、お互い大きな損害もないまま終わっている。
一方、東門。
ここは我々の勝ちと言わざるを得ない。
きょーかと考えた、空城の計。
これが上手くいった。
四門の内、三門の守りを固くする一方で、うち1つの守りを薄く見せる。敵はその一門になんらかの計略を疑い、攻めあぐねる。
きょーかの読んだ通り、冨樫らは大軍を東門に差し向けた一方で、全く攻めてこなかった。攻める気がないのだ。こちらが動きを見せない限り。いや、攻められないの方が適切だ。
我々は今後、東門に何か動きを施す予定はない。
静かさを保つつもりだ。敵は余計に疑い、手が出せないだろう。
苛烈な1日が終わった。
だが安堵はできない。あと6日。最低でもあと3日は耐える。
城壁で空ではなく、敵軍を見つめていた尾上に鈴山君から伝言が届いた。
「すいません。」
私はバカヤロウ!って返してやった。
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