The Great Battle of students
もうすぐ夜。
寝る時間になる。
石松杏果は1人、城下を歩いていた。
夏の夜はなにかと歩きたくなる。
今日は雲ひとつない晴天だったから星もよく見える。
昨日は雅弓と鈴山君と御代川君と食事をした。
主に今回の猛華と動きについての話だった。
雅弓が上層部から聞いた話だと、今回の前線への配属は猛華の動きを観察&牽制するものであり、戦いを仕掛けるわけではないらしい。だから、私達と鈴山君達が選ばれた。今、上律の名を背負っている両軍を前線に張り出せば、不用意に攻めてはこない。良い牽制材料になり得るんだって。少し不本意ではあるけど、私達もそれだけ強くなったってことだ。
それともうひとつ。
今回の食事で気になったこと。
ズバリ、鈴山君の好きな人。
あれは明らかに雅弓の事が好きだ。
何か特別な事があったわけじゃないけれど、雰囲気や目の向き方でわかる。
ある意味、とてもわかりやすい。
いや、むしろ男の子ってあんなもんなのか。
不思議。
それにしても雅弓はモテるなぁー。
尾上軍の中で雅弓に気がある男を私は何人も知ってるぞー。
まぁでもわかる。
雅弓は確かに可愛い顔してるし、目が大きいし、二重だし、身長は小さいし、胸もあるし、あっけらかんな性格だし。
ほんと、男を無意識に振り回す漫画のヒロインみたいな奴だ。
モテないわけがない。
アイツ自身、男遊びに興味がないからあれだけど、
将来は男には困らないんだろうな。
……。
嫉妬がないわけじゃない。
実際、私は女にしては身長高いって言われるし、目は糸目で一重だし、胸もないし、性格も色々と考え込むめんどくさいタイプだ。
全くモテない。告白されたこともない。
最近気付いたけど、雅弓と一緒にいるせいか、余計に私の醜さが目立っている気がする。
別にそれで雅弓の事が嫌いになることはないけどね。
そんな私にも好きな人くらいはいる。
同じ大学に。
ただ、絶対に叶わないから誰にも言ってないし、私は鈴山君みたいにわかりやすい言動はしない。
向こうが私に興味ないことくらいわかってるから。
いかんいかん!
夏の静かな夜が相まって、私の考え込む癖がモロに出てしまった。
リラックスしよう。そうリラックス!
とりあえず歩くんだ。
それなりに歩いて、城壁の下あたりまで来た。
ベンチがあったので座る。
本当に過ごしやすい夜。
このままベンチで寝てもいいくらい。
ん?
あれは雅弓かな?まだ城壁にいるのかな?
もう夜の10時だぞ。
何か雅弓も考え事でもあったのかな。
もしかして、鈴山君の気持ちに気づいてるとか。
それだったらちょっと胸熱な展開だな。
にしても何してんだろ。
アイツ、星が綺麗だからって見入るタイプだったっけ。
まだ私の知らない雅弓があるのかしら。
なんか、こっち向いてる。
私と目があってる?
よく見つけたなー、城壁の上から。
さすがは上律が誇る女将軍だな。
めっちゃ口開けてんじゃん。
何か私に向けて言ってんのかな。
てか、すごい剣幕だな。
叫んでるみたいだ。
なんて言ってんだろ、雅弓。
私、アイツを怒らせること言ったかな。
「きょーか!!!急げ!!!敵襲だ!!!皆んなを集めて戦闘態勢を整えろ!!!急げっ!!!」
えっ。
嘘でしょ。だってこんな良い夜だよ?
ゆっくりさせてよ。
「きょーか!!!!!急げっ!!!!!」
返事もせず、私は走り出した。
どうやら1番聞きたくない言葉を私は聞き取っちゃったみたい。
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