The Great Battle of students
作戦が発表された。
城門をびっちりと閉め、城壁に上がって来た敵を倒す。
基本的な籠城戦法だ。
まぁ、この状況下だとこれが1番有効だし、むしろこれしかないのだろう。
目標は1週間。上律本部からの援軍到来を待つ形だ。
敵はあえてこの城だけを攻めてきた。
確かに上律前衛地域にある城だが、敵の第一将が大軍を率いて攻めてくるほどの価値がある城ではない。
本来は。
現在のこの板橋城はそれまでのものと違って格段に価値がある。大軍を率いて、城内を制圧するほどの。
なぜか。
無論、尾上と鈴山がいるからだ。
彼らの存在がこの城の価値を大きく上げた。
敵はこの城が欲しいんじゃない。仮に制圧しても、こんな前線の城はすぐに標的になる。
つまり、今回の猛華の標的は尾上と鈴山だ。城なんかじゃない。板橋城はたまたま舞台になっただけだ。
この板橋城は可哀想な城なんだ。
何はともあれ、私達は窮地に陥った。
1週間、城に閉じこもって耐え忍べばいい話なのだが、敵はそれを許さないだろう。
敵城を一斉に取り囲めば、その包囲を崩さんとする敵の軍が現れることくらい猛華はわかっている。そんなことを許してくれるほどの簡単な相手じゃない。
短期決戦。
敵はこの奇襲を最大限に活かすため、スピードで勝負を仕掛けてくる。
そして、こういう時は人が大勢死ぬ。
敵も死に物狂い、私達も死に物狂い。
後がない同士の戦いが1番苛烈で、1番醜い。
力の押し付け合い。戦術なんて小手先だけ。
今まで練習したなんとか戦術なんて全く活きやしない。
戦術とかは仕掛ける側が俯瞰した態度で挑まないと意味がない。余裕がないとダメなんだよ。全部私の持論だけど。
石松は戦いが嫌いだった。
だから前線には出ない。いつも後ろで指示を出す。
尾上が突っ込みすぎた時、熱くなりすぎた時、一回戦線を下げ、冷静に直すのが主な役目だった。
そんな石松も今回ばかりは前に立って指揮を振るわなければならない。城に前線も後衛もありゃしない。
尾上と横に立ち、城を守り抜かなければならない。
やられるかもしれない。
今回ばかりは。
私は強くない。戦う事が専門じゃない。
逃げたい。
打ちひしがれる石松の脳裏に浮かぶのは1人の男。
自分の目で確かに見た、唯一無二の戦の天才。
そして、石松が想いを寄せている人物。
身長はそこそこ高くて、頭が良くて、圧倒的に強い。
彼がいてくれたら。
日が上り始めた頃、
敵は声を上げながら城に梯子をかけ始めた。
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