The Great Battle of students


「これで終わりだ」

男はそう言った。

偃月刀を持ち、黒い馬に乗る男。

なにより、後ろにきょーかを乗せている。

目は閉じているが。


「安心しろ。石松杏果は生きている。気を失っているだけだ。そんなことより、さっさと城に入れ。宏樹が戻り次第、城門を閉めるぞ」



男の名は松田瑞貴。

私が嫌というほど知っている男。

今回の戦いを裏で操っていた胸糞悪い奴だ。


「尾上。俺に言いたいことがあるのはわかる。だが、今はさっさと戻れ。この戦いを完結させることが優先だ」


私の目つきで私が怒っていると察したようだ。

さすがは松田だ。


「わかったよ。後で色々聞かせてもらうから。きょーかを助けてくれてありがとう。それと鈴山君は……。」


私が上律1年の若手の名を出した瞬間、彼は私の話を遮り、話し出した。


「あの馬鹿はさっき俺が城に入った時に投げてきた。あの馬鹿には俺が直接、後で話をつける」

「そう、わかった」

「何か言いたげじゃないか」


またも見抜かれた。

某、高校生探偵か。お前は。


「バレた?じゃあ遠慮なく聞かせてもらおうかな。どうして冨樫を追わないの?」


男は表情ひとつも動かさない。

どうせ予想してた質問なんだろう。


「後で詳しく話そう。追わない理由はある。いや、追わない理由ができた、のほうが正しいか」

「それって?」

「真奈と裕一。アイツらから連絡があった。それだけだ」

「ハァ?ちょっと意味わかんないだけど」

「うるせぇ。いいから戻るぞ。中でゆっくり話を聞いた方が頭に入るだろう」

「チッ、腹立つ奴だ、本当に」



尾上達は松田に先導され城に入った。

城にはすでに小田咲良がおり、療養室等の準備をしていた。

敵に攻め立てられた北門と南門は見るも無残な姿になっており、修復には時間がかかるように思われた。

尾上は自分の部隊にそれぞれ戦終了後の指示を出すと、すぐさま食堂へ向かった。
城に入った瞬間、安堵からか空腹に襲われたからだ。

言葉も発さず、ただ食べた。


程なくして、白石・御代川が帰還した。

白石はそこまでくたびれた様子はなかったが、御代川は城に入るや、すぐに鈴山の様子を聞いて回っていた。
生きている、と聞いて顔の緊張が解ける所までは見えた。

白石はすぐに武装を解かなかった。
自身の弓隊を四方の城壁に上らせ、敵の襲撃に備えさせた。
白石自身は松田・小田がいる広間に向かっていった。


日が暮れる頃、松田から指令が全軍に向けて出された。

武装解除は未だせず。
敵の再襲撃に備え、弓隊、騎馬隊、歩兵隊を常に臨戦体制に整えておくこと。
しかし、此度の戦いで損害の大きい尾上軍・鈴山軍は療養に専念せよ。


つまり、ここからは松田・小田・白石がやるから、それ以外はさっさと休め、ということだった。

どうにも上から言われているようで腹が立つが、尾上自身も自軍の損害については重々わかっていたため、素直に従った。

きょーかも今は療養室で寝ている。医務によると緊張の糸が切れて、気を失っているそうだ。
そもそも、きょーかがいないと私達の軍は機能しない。
だから、軍の展開は出来ない。
そんなことより、私はそれほど彼女に負担をかけてしまっていたみたいだ。
起きたら謝ろう。

鈴山君と御代川君も命令には素直に従うみたいだった。
しかし、さっき鈴山君に会った時は本当に心が取れたみたいな顔をしていた。
自分がやってしまったこと、これから起きることで心が押しつぶされているのだろう。
今の私にはかける言葉が見つからなかった。



それにしても長い三日間だった。

こんなに大変だったのは初めてだ。
それなりの犠牲を出しだけど、みんなまた揃えたことだけは本当に良かった。
それぞれ気に病む事を抱えたかもしれないけど、まずは一件落着って言っていいのかな。
まぁ、そういう私も松田と話をつけないといけないんだけど。


まぁでも今日だけは。

今日だけはもう何も考えなくていいよね

よし!みんな!

終わったよ!

戦いは終わったんだよ!!!

私達は勝ったんだ!!!!!




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