The Great Battle of students

突っ込んでくるか。

なるほど。距離を詰めたら勝機があると。

中々に賢いな。



「白石、敵が突っ込んでくるぞ。まだ弓で足止めするか。」

白石隊副長、河野美和が話す。

「あの敵、様子がおかしい。弓に臆さず、猪みたいに向かってきやがるぞ…。」

どうやら焦っているようだ。

美和は一年生。だが、タメ口を許している。敬語では重要な報告も気遣って出来ないことがあるかもしれないから。

「美和、とりあえず落ち着け。何も予想してなかったことじゃない。いったん後退する。距離を保ちつつ弓を撃ち続けろ。」

軍は綺麗な弧を描き反転。城からどんどん離れていくように後退させる。

後退の訓練怠っていない。たとえ後ろ向きでも矢を力強く放てるよう訓練済みだ。



「ねぇ、こんなにも離れたら敵は私達を無視して小田さんのところに行っちゃうんじゃ…。」

美和は相変わらず焦っている。

この心配性な性格は物事を考える上で多くの可能性を考えられる上では便利だが、優柔不断となると一概には言えない。少しは決断力というものが必要だろう。

弓の実力は中々なものだが。

「バカならそうするだろう。もしそうするなら俺たちがその横っ腹を突くだけだ。ただ敵はそうしない。冨樫と肩を並べる大将だ。そうバカじゃないだろう。ちゃんと俺たちを狙いにくる。」

「じゃあまた下がらないと!」

「落ち着けと言ってるだろう。さっきも言ったが予想してなかったことじゃない。むしろ的中だ。咲良と俺の考えがな。」

「えっ、それってどういう……。」

「まぁ見てろ。」

「勝機があるってこと!?ねぇ!!」

「まぁ見てろ!」

いつもこんな感じだ。

最終的に美和は俺に従うため、俺も手を出したりはしないが、イラついてないなと言ったら嘘になる。

よく言えば可愛い後輩なのだが。



相当、後退した。

だが未だ敵はこちらに向かってきている。

これ以上退がってしまってはいざという時に松田や咲良がいる戦場へ戻れない。

ここが限界だ。

すぐさま横陣を敷く。

ここで迎撃する。

5段構えの弓隊。

どこまで敵の数を減らせるか。



敵が見えてきた。

矢を放つも止まらない。

相当訓練された兵だ。強い。

だからこそ甚だ疑問だ。

なぜ気付かない。

お前達のその精強な兵で城を攻め立てた時、尾上、鈴山以外の奴がたった1人で城壁を守り抜いていただろう。

将軍でもない男が。




城門が開く。

1人の男。多数の槍兵部隊。そして尾上軍の騎馬隊。

血だらけの鎧に鬼気迫る顔。

これにて敵を討ち滅ぼさん。

我が軍大将の名にかけて。

鈴山軍副長。

御代川壮。

いざ出陣。




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