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その容姿から全く推測できないしつこさをお持ちでいらっしゃる

この数年間、地域の係が回って来ることが度々ございまして、しかたなくイベントや話し合いの場に参加するのですが、まあ例のごとく、私は意見を言うこともなければ、どなたかと雑談程度のお話しなどをすることもございません。口を開くのは、座る席近くの方々にご挨拶をするときだけでございます。いかがお過ごしでしょうか。

ご挨拶以外何もしていないのかと言えば、そうでもなくて、資料をめくり、必要なところには線を引き、ときには問題点を考えたりとそれなりに把握はしているのです。自分の地域のことなので知らないより知っておいたほうがいいということでございます。

しかしながら、もともと集中力が長続きしない質でございますゆえ、長時間に及ぶ話し合いになりますと心がどこかへ飛んで行ってしまいますので、そんなときは手の甲などをつねるなどして自分を呼び戻し、皆さんの話に耳を傾けるのでございます。

でも最近はそのようなことをしなくても、新しい楽しみ方を見出して、長時間集中することができるようになりました。

先日こちらにツイートした方なのですが、半年ほど前から少し気になっておりまして、その想いが度々重なりましたことから、今では心の中で「論破王」と呼ばせていただいています。

月に一度、日曜日の午前中に40人程度の人が集会場に集まり、9割が男性、その中の4割くらいは定年退職をされている、もしくはまじかであろう方々で、他は働き盛りの30代~50代で構成されています。順番で回って来たから参加しているにもかかわらず、優秀な面々の方たちで、たまにとんちんかんなことをおっしゃる方もおられるのですが、とんちんかんにも丁寧で優しく、そんな温かい地域の方々に私は支えられ暮しているのかと思うと大変心強く、感謝の気持ちでいっぱいになるのでございます。

そんな錚々たるメンバーの中でも圧倒的な存在感を醸し出していらっしゃるのが、先にもご紹介いたしました方、論破王でございます。論破王は資料などを見ながら何かしらの質問をする方という印象だったのですが、気に留めて拝見していましたら、一定の条件が揃うとすっと手を挙げ言葉を発することがわかりました。

この方はきっと理数系の方なのだろうと推測するのですが、資料に表やグラフが出てくると水を得た魚のようにあれやこれやと相手を質問攻めにし、結果的に論破してしまう方なのです。「責めてるわけではないですよ」と心遣いの一言も忘れませんが、だからといって質問の手を緩めるわけではない容赦のなさがむしろ潔く、会場の方々はじっと聞き入ってしまうのです。

ここまででも大変興味深い方なのですが、論破王は見た目も話し方もとんでもなく穏やかな方で、その印象からは全く推測できないしつこさをお持ちでいらっしゃるのです。そんなギャップが私的にはもう最高にツボでございまして、心がどこかへ飛んでいくどころか、一瞬たりとも彼から目が離せなくなるのでございます。もちろん威圧感などあるわけないので安心して聞いていられるところもポイントなのですが、淡々とした言葉だけでまわりを黙らせてしまうその説得力に私は毎回しびれてしまうのです。

先日も集まりがありましたので、心躍らせながら会場へ向かいました。論破王がいらしていることを確認し、本日の資料に表やグラフがないかと目を通します。ああ、論破王が好きそうなものがない。。。案の定その日は一度も言葉を発することはありませんでした。あの言葉でじりじりと詰め寄る感じが見たかったのに…がっかりです。

会合が終わり、私は会場の片づけを手伝っていました。パイプ椅子をふたつ運んでいき収納用カートに乗せようとしたのですが、混んでいたので別のカートを倉庫から出して椅子を仕舞うことにしたのです。薄暗い倉庫室へ行き大きな収納用カートを引っ張り出していると、どなたかが一緒に引いてくださいました。明るいところでふと手伝って下さった方を見ると、なんとそこには論破王のご尊顔が!

この人に何か失礼なことをしたら論破されてしまうのではという恐怖心から少しどぎまぎしましたが、ここは大人の対応としてありがとうございます的なお礼を申し上げ、カートの上にパイプ椅子をふたつ乗せようとしました。すると論破王が「やりますよー」などと言って私からパイプ椅子をひょいと奪っていくではありませんか。

論破王は優しく気遣いのできる方でございました。そもそもこの方は論破しようとしてしているのではなく、何故そうであるのかを追求したくなっちゃうタイプの方なのでしょう。それが結果的に論破風になってしまうと…。

私の任期もあと1か月足らずですので、論破王の言葉攻めが見られなくなるのは誠に残念でなりません。楽しませていただきましたことは生涯忘れないことでしょう。最後までお読みいただきありがとうございました。

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