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AI従業員との共存


1. はじめに 

 先日、「生成AIと金融サービスへの影響」というテーマで勉強会を実施いたしました。今回は一部を抜粋し私の仮説を共有いたします。AI従業員って結構なパワーワードですが、今後は常に意識しなければならない存在となります。 

2. 生成AIによって生じる広範な影響 

 生成AIによって生じる影響は多岐に及びます。私が注目している点は「労働生産性へのレバレッジ効果」です。これまでもテクノロジーの進化で人々の生産性は大幅に向上しました。 

 過去の第一次・第二次産業革命では機械化による生産性の向上、第三次産業革命では情報化による生産性の向上が確認できます。

 今回のAI革命は第四次産業革命にも位置付けられ、第三次産業革命の情報化(データ)を基礎により高度化された情報・データ化の推進と位置付けることもできます。 

 第三次産業革命との違いは質・量ともに情報化が加速し、情報の高度利用(高度なAI)が実用ラインに到達しつつある点が特徴です。2022年末のChatGPTの登場を境にAIの世界は一変しました。 

 これまでのAIは一部技術者の研究テーマの域を超えず、一般利用に耐えうる実用性を有したサービスは殆ど存在しませんでした。しかしAGIの先駆けともいえるChatGPTの登場により「生成AI」というジャンルが一気に普及し、ビジネス・私生活の両面において認知を高めました。 

 この動きは不可逆であり、今後は「人とAIの共存」が大きな社会テーマとなり、最適解の模索が続きます。今回はAIの労働生産性に注目し、疑似的な従業員としての「AI従業員」について考察します。 

 これまで企業の管理職は部下をマネジメントする役割を担っていました。要するにヒューマンマネジメントです。今後は従業員のマネジメントと並行して、AI従業員のマネジメントも要求されることになります。

 新人にも平社員にも等しくn人のバーチャルなAI従業員をマネジメント出来る権限・責任が与えられるようなものです。この転換は非常に大きな意味を持ちます。

 AIは人間とは異なることからn倍のレバレッジが可能であり、アウトプットの質・量は投下された人間労働力に比例しません。生産性だけに着目すれば新人がベテランの部長を上回ることも十分にあり得ます。 

 大企業・大資本が力を発揮していた経済モデルも徐々に変化することが予測されます。資本効率性・労働生産性だけで評価する場合、高度なAIの活用が前提となりますが、今後は小規模~中規模事業者の方が圧倒的に有利となります。 

 個人レベルで見るとAI従業員との共存に伴う変化、企業という組織レベルで見るとAI活用による小規模事業者の活躍、社会レベルで見ると「労働」に対する価値観の変化が生じます。 

 どれも重大なテーマですが、ある日突然変化するわけではなく数年~10年程度のスパンで徐々に変化することになるので日々の生活の中で変化は感じにくいかもしれません。しかしながら不可逆的な力を持って確実に変化は進んできます。 

 私たちはやがて訪れる変化に向けて準備を進める必要があります。「ホモ・デウス」で示された「無用者階級」が実現する可能性に備える必要があります。ホモ・デウスは2018年に出版されておりChatGPTのような高度なAIは登場していない段階ですが、見事に将来のリスクを示しています。 

3. AI時代の道標 

 個人・企業・社会という異なるレイヤーに多大な影響を及ぼすであろうAIの発展に対してどのように向き合うべきかを検討します。 

 まず個人としては誰もがフリーランスとして働くことを選択肢として真剣に考える必要があります。AIは優れたツールでありレバレッジが容易な道具です。

 人間は「個」では限界のある活動を達成するための器として企業(株式会社)という仕組みを発明し、リスクを分散させることで資本を調達し、より大きな事業を展開してきました。 

 しかしながら今後はAIの活用次第である程度の規模の事業であれば一人で完結できる可能性が高くなります。AIのレバレッジを活用することで、疑似的なAI従業員をフル活用することで、組織規模を超えた成果を生み出すことが可能となります。 

 これと昨今の副業・フリーランス化が組み合わせることでより多様な働き方が実現します。

 これまでのように1つの組織に所属し、副業もせず週5フルタイムでオフィスで働くスタイルから、会社で従業員として雇用されつつ自身の会社を経営したり、フリーランスとして別の仕事を受注し生計を立てるスタイルが普及します。 

 インプットを怠らず自身の能力を積極的に高め、アクティブに行動する個人にとっては活躍の場が広がりやすくなる半面、組織依存型の従来型サラリーマンには厳しい展開になるかもしれません。今後は1つの組織への依存がよりリスクとして認識されることになります。 

 働き方も上記のようなフリーランス(マイクロ法人)がプロジェクト単位で集まっては解散するような働き方が増えることも予測されます。組織に人材をプールしておく形から目的別に最適な人材が集まっては解散することを繰り返すことが想像できます。

 結果として稼げる個人とそうでない人の差が拡大します。この変化が増幅すると前述の無用者階級という塊が生み出されることが懸念されます。AIを前提とした社会においてホワイトカラーの人間労働者が担うべき仕事はより高度化され限定されます。 

 AIによってホワイトカラーの要求スペックが切り上がってしまった結果、ほとんどのホワイトカラー労働者は要求スペックを満たすことが出来なくなり、解雇や新規採用の抑制が加速します。

 結果として大量の無用者階級が生み出されるリスクがありますが、これは社会不安や社会保障費の増加・経済成長率の低下などの問題を引き起こします。労働者=消費者としての中間層の国民が今以上に下層に転落するリスクが存在します。 

 これは構造的な問題であるため技術の進化に伴う社会構造の変化については国による政策的な対応が必要不可欠です。一旦、大量の無用者階級が生み出されてしまったら事後的に対処しようとすることは、ほぼ不可能です。

 この場合、出来ることは損切りだけです。有事の際は日本と言う国を損切りし、政策的に正しい判断で適切にAIとの共存を達成した国への移住を検討する必要があります。

 移住の際はAIとの共存以外にも税制・物価・治安・なども考慮する必要がありますが、どちらかと言うとこれまでの富裕層の海外移住の条件にAIの発展による社会不安が回避できること、という条件が追加される認識です。 

 この観点で評価すると日本は既に危険水域を超えています。今後、中程度のホワイトカラー業務や低賃金のブルーカラー業務が徐々にAI(ソフトウェアだけではなく物理的なハードを有するロボット含む)により置換される中で、増税・社会保険料の増加が予測されます。 

 これまで以上に少数の納税者が多数の非納税者を支える歪な仕組みとなります。このような過負荷を懸念し担税力と行動力を有する人からより良い環境を求め海外へと移住することになります。 

 これは倫理的に良い悪いは別として、合理的に考えるのであれば仕方のないことです。各人は現行ルールの下で逃げ切るのか、それとも新しいルールの下で模索するのかを選択しなければなりません。 

 現時点で50代以上の方はこれまでのルールの下でギリギリ逃げ切れるかもしれませんが、40代以下の方は逃げ切れる可能性が低いので様々な選択肢を考慮し、自身の拡張性を広げる努力が必要となります。 

 私は30代後半なので逃げ切れる見込みは殆どありませんので社会の変化を先読みしつつ適切に行動するしかありません。AI時代の不確性へのリスクヘッジは「資産運用」となります。 

 今後の変化の中で少なからず「挑戦」と呼ぶべき行動が必要になることは明白です。その際に資産運用で一定の経済的基盤を有している場合は積極的にリスクテイクを選択することが可能であり、何度か失敗しても再起不能になることはありません。 

 仮に資産運用の目的が老後資金の確保であっても、蓄えた資産は自身の選択肢の幅を広げてくれます。今後は成人したら資産運用は当然となり、運用期間も生涯投資が当たり前になるはずです。

 なぜならこのように変化しないと不確実な未来において個人が零れ落ちず、安定的な生活を維持することが困難になるからです。

 少し不穏な話ですが確度の高い近未来のシナリオではないかと考えています。備えあれば憂いなしであり、出来ることから着手することが肝要です。

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