見出し画像

独占禁止法強化に感じる米国社会の変容

 本マガジンは時事ネタ(主に経済)をピックアップする短いシリーズです。考察も含まれますが感想メインです。 

1. 米国における独占禁止法強化の流れ

 昨日の日経で以下の記事が気になりました。

 バイデン政権は当初からビッグテック(ITプラットフォーマー)を敵視し規制強化を目指していました。”米国のことなのでご自由に”という感はありますが世界をリードする強力な企業の力を政府が主体となって弱めることは国力の維持という観点から政策的に正しいのか気になりました。 

 アップルやグーグルを規制することで本当に利便性は向上するのか疑問です。米国は建国以来、競争を是とする文化でしたが近年は少し変わったのかもしれません。本当にプラットフォーマーによる囲い込みが消費者の利便性を損ねているのであれば、たとえアップやグーグルが潰そうとしても次世代のサービス提供者が台頭するはずです。 

 現状グーグルの検索やアップルのアプリ市場は独占状態にありますが、これは競争の結果でありサービスの品質やビジネスモデルの優位性によるものです。ユーザーは嫌であればAndroidやiOSを利用しなければ良いだけです。選択権は消費者にあり、消費者は様々な要素を考慮の結果、現状選択しているに過ぎません。 

 競争を歪めている、という主張は一部では当てはまるかと思いますが、他方では他人の庭でビジネスをしている身分で図々しいと感じる面もあります。グーグルやアップルが膨大な研究やインフラ投資を経て築いた自社に有利なビジネスモデル(ルール)なのだから嫌なら使わなければいいだけであり、経済圏にフリーライドしている立場で文句を言うのは滑稽に感じます。 

 一昔前の米国であれば競争の結果の独占は成功の証であり社会的に許容されていましたが、近年は米国社会の変容を感じます。トランプ政権の台頭もその表れですが、ポピュリズムが加速した結果、段々と成功者が称えられない国になっているようにも見えます。 

 独占禁止法強化の動きはEUの動きに類似しており、国としての成長力に陰りが感じられます。米国の強さとは「突き抜ける力」ではないかと感じておりましたが、出る杭が打たれる社会への変容は競争力低下を招く結果に繋がると危惧します。 

 企業活動への政府の介入には慎重である必要があります。ビッグテックのビジネスモデルに介入することにより、経済自体がどの程度成長するのかが気になります。規制の結果、ビジネスが活性化され企業収益が拡大しGDP等の数値も高まるのであれば政策的には成功かもしれませんが、グーグルやアップルから中小事業者への単なる富の再分配に過ぎないのであれば愚策と言わざるを得ません。 

 競争力を有し世界規模でビジネスを牽引することができる企業を優遇した方が国力・効率性の観点から良さそうですが、そのような方向に進まないのは別の要因が働いており、それが資本主義のひずみだと感じます。これも分断がもたらす結果と認識しています。まず●●という主張があり、その後に理由はこじつけられるのだと感じます。 

 猛烈な勢いで技術が進み社会が変化するなかで価値観も過去のものから変化しつつります。その中で新しい価値観をすんなりと受け入れられる人とそうでない人の主張がぶつかり分断が発生します。日本でも確実に分断は存在しており、人は自分とあまりにかけ離れた層を理解することはできません。よって互いに相手を理解することは困難です。 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?