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税引後リターンを最大化:投資信託を駆使した損益通算の新戦略


1. はじめに 

 本稿では投資信託を活用した損益通算の戦略について詳細に検討いたします。これは過去に論じた外貨建MMFを活用した損益通算の手法を補完するものです。外貨建MMFの戦略が為替変動を前提としているのに対し、今回の投資信託を活用した戦略は、年に1〜2回程度発生する10%超の下落を活用します。 

過去の外貨建MMFに関する記事は以下を参照ください。

 これら二つの手法を組み合わせることで、為替変動と株価変動の両面から損益通算の機会を得ることが可能となります。ただし、両戦略ともマーケットのボラティリティ(価格変動)を活用するため、市場が安定している場合は取引機会が限られる点にご注意ください。 

2. マルチファンド戦略:同一インデックスの損益通算テクニック 

 近年、全世界株式ファンド(通称オルカン)が非常に人気を集めており、多くの資産運用会社がこの種のファンドを提供しています。現在、最も低い信託報酬水準にあるファンドは以下の3つです。 

1. 三菱UFJ-eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)

2. 野村-はじめてのNISA・全世界株式インデックス(オール・カントリー)

3. Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)

 これらのファンドの信託報酬は0.05775%で、実質コストも0.1%前後と非常に低水準です。本稿では、これら3ファンドのコストは実質的に同一であるという前提で議論を進めます。 

 一見するとこれらのオルカンをそれぞれ保有するメリットは少ないように思われます。むしろ一つのファンドに集約した方が管理が容易です。実際、NISA口座での運用ではその通りで、分散させる意味は薄いでしょう。

 しかし、特定口座で運用し損益通算を考慮すると状況が変わってきます。議論の前提として、これらのファンドの経費率は同一で、トラッキングエラー(指数との乖離)は発生せず、各ファンドとも指数を忠実にトレースするものとします。この場合、理論上はどのファンドを選択してもパフォーマンスに差は生じません。 

 ここでは多くの投資家が保有するeMAXIS Slim 全世界株式のみを保有するケースと3ファンドを保有するケースを比較検討します。 

単一ファンド保有の場合

 まずオルカン1本のみ保有し、毎月積立を行っているケースで、含み益が1000万円(50%の含み益)あると仮定します。このケースで、2024年7月・8月のような円高・株安のダブルパンチに見舞われると、一時的に評価額が20%下落する可能性があります。すると損益はプラス30%まで縮小し、含み益は600万円となります。

複数ファンド保有の場合

 一方、3ファンドを保有する場合も合算すると含み益が1000万円(50%の含み益)と仮定しますが、3ファンドはそれぞれ+100%、+50%、±0%とします。この場合、同様の下落局面では+80%、+30%、-20%まで損益は縮小します。計算を簡略化するため保有割合を均等とすると、含み益は同様に600万円となります。 

 オルカン1本保有の場合、年に1〜2度訪れる下落でも含み益を維持する形となるため、他の利益との通算が困難です。一方、同一の値動きをするファンドを3本保有している場合、取得タイミングの違いにより損益にばらつきが生じます。 

 この場合最も損益が悪いファンド(下落時にマイナスに転じたファンド)を活用します。具体的には-20%に損益がマイナス転換したオルカンを売却し、同日に同額の別のオルカンを購入します。 

損益通算の具体的な手順

1. 最もパフォーマンスの悪いオルカンを売却して損失を確定します。

2. 売却と同日に別のオルカンを同額購入します。(約定日を合わせることが重要です)

 この操作により3本保有していたオルカンは2本に集約されます。最もパフォーマンスの悪かったファンドを損切りし、例えば-200万円を計上したと仮定します。特定口座の損益上はマイナス200万円が計上されますが、同日に下落して安くなった基準価格で売却額と同額を買い付けているため、オルカンの保有額自体に変動はありません。この点が非常に重要です。 

 取引の前後でオルカンの保有額自体に差は生じませんが、含み損のファンドを損切りし同額を別ファンドで保有することで「損失」の計上に成功しました。仮にこの損失を200万円と仮定すると、200万円までの配当や売却益と損益通算が可能となります。 

 例えば投資信託は分配金が出ないインデックス投信を積み立てつつ、個別株やETFからは一定の配当金(分配金)を受け取っている投資家も多いと思われます。この場合、配当金はその全額が課税対象となります。 

 200万円の配当金であれば、40万円以上が税金として徴収されることになります。本戦略はこの配当収益や少額のキャピタルゲインへの課税を回避するための提案です。この配当金に先程の投信のマイナスをぶつけることで、特定口座内で損益通算され、プラスマイナスゼロになります。これによって40万円分の税金の支払いを回避できたことになります。

戦略の意義 

 ここで「損失が出ているのだから意味がないのでは?」という疑問が生じるかもしれません。 

 一見すると損失が出ているので意味がないように見えますが、ここでのポイントは売却同日に売却と同額の別ファンドの購入を行う点にあります。これによってオルカンのポジション(保有額)は維持されつつ取得単価が切り下がり、マイナスを確定できたことになります。 

 単に損切りしただけでは損を確定させ、将来の上昇の恩恵を手放すことになりますが、同日に同額を購入することでポジションを保持しており、将来の価格上昇の恩恵を享受できます。 

 株式の場合この手法には若干の問題が生じます。SBI証券のよくある質問にあるように、同日中の同一銘柄の売買は、特定口座の制度上、売りが先であっても買いが先にあったものとみなして取得単価が計算されます。そのため、株式を利用したタックスロスセリングの場合、売却・買付を1営業日ずらす必要があります。 

 しかし投資信託の場合、同一インデックスを対象とする複数のファンドを活用することで、この問題を回避できます。 

 これによって、一見すると無意味に思えるオルカン3本持ちが効果を発揮します。取得単価の違いによる含み益の違いを活用した戦略的なタックスロスセリングを、投資信託を活用して実現しているのです。 

 オルカンのようなインデックス投信は一般的に長期積立が基本とされています。その通りですが、プラスαを狙う場合は下落を活用した損益通算を狙うことで節税に寄与します。盲目的に「インデックス投信はガチホ!」と判断せず、臨機応変に対応することでプラスαを狙うことができます。 

 ただし、この戦略は価格の下落が前提となるため、年初から年末まで一本調子で株価が上昇し続けた場合などは含み益が存在しない可能性が高く、利用できない点に注意が必要です。オルカンの長期投資は維持しつつ、タイミングが合えば意図的に損失を確定させ損益通算で活用する、というのが本戦略の趣旨です。 

3. 市場の変動を味方に:ロング・ショート併用の損益通算法

 前章では同一インデックスを対象としたファンドを複数保有することで損益通算を図る方法を提案しました。本章では応用編として、ロングとショートの両建てを活用した損益通算について考察します。

戦略の概要

 基本戦略は投資信託でオルカンをロングし、ETFでオルカンをショート(空売り)するというものです。これは短期的な下落に備えたポジションとなります。この場合、一方が上昇すれば必ずもう一方は下落します。つまり、どちらかのポジションでは必ず損失が発生します。 

 予想通り株価が下落すると投資信託がマイナスとなり、ETFがプラスになります。前章の方法ではショートポジションは持っていなかったので、マイナス時には損切り+同日買付による損出しが限度でした。 

 しかし今回はショートポジションも活用します。株価下落でショートのETFの損益はプラスになるので、ある程度下落したタイミングで買い戻してポジションを解消します。同日に3つのオルカンの中で最も成績が悪く損益がマイナスのファンドを全額売却します。 

 これによってETFのプラスと投資信託のマイナスが相殺されます。さらに同日に別のオルカンをETF+投資信託の売却額と同額買い付けます。これによって前述の基本型に加え、ETFのショートポジションで利益確定した分もプラスαで下落時に追加購入できることになります。

注意点

  この手法では、ETFと投資信託の約定タイミングの差に注意が必要です。ETFは当日にマーケットで約定しますが、投資信託は注文発注から約定までにタイムラグが生じます。この1〜2営業日の間の為替と価格変動に注意が必要です。

戦略の利点

 ショートを活用した本戦略の場合、想定通りマーケットが下落した場合はETFのプラス分を投資信託のマイナスで損益通算し、逆にマーケットが上昇した場合はETFのマイナスを配当などと損益通算します。 

 予想通りマーケットが下落した場合は損益通算を駆使しつつ追加のリターンを得ます。一方で反対に動いた場合も配当などの含み益と相殺することができます。この場合は確かに損失を被っていますが、ヘッジコストを支払ったと解釈することもできます。前提として一定の含み益がある場合、仮に反対方向に動いてもショートのマイナスを相殺可能です。 

 この手法では、予想通り下落しその後に反発するのがベストシナリオですが、そのように動かなくても相場下落に対するヘッジ自体はできており、一定のコストを支払ってポジションの構築と解消をしたと考えれば問題ありません。何もしなければ課税対象となる利益を活用してヘッジポジションを構築しているので、リスク管理的にはプラスに作用します。 

 インデックスファンドは長期保有が基本ですが、このように譲渡益や配当益を活用することで損益通算やリスクヘッジが可能となります。譲渡益や配当益は黙って年末まで持ち越せば課税対象ですが、これらを活用することで効率的な損益通算やリスクヘッジが可能となります。 

 調査や工夫を厭わない投資家の方々には、ぜひこの戦略の検討をお勧めします。以前ご紹介した外貨建MMFを活用した損益通算と組み合わせることで、為替変動・株価変動のどちらの局面でも取引の機会を見出すことができます。 

4. 実践と展望:戦略的損益通算の真価と将来性

 本稿で紹介した損益通算戦略は投資家が税引後のリターンを最適化するための高度な手法です。これらの戦略は単純な「買って持つ」アプローチを超えて、市場の変動を積極的に活用し、税務上の効率性を高めることを目指しています。 

 しかし、これらの戦略を実行する際には、以下の点に十分注意を払う必要があります。 

1. 複雑性:これらの戦略は比較的複雑であり、正確な実行には細心の注意と深い理解が必要です。

 2. 取引コスト:頻繁な取引は取引コストを増加させる可能性があります。これらのコストが税務上の利益を相殺しないよう注意が必要です。

 3. 市場タイミング:これらの戦略の多くは、市場の下落局面を活用します。しかし、市場のタイミングを正確に予測することは困難です。

 4. 規制リスク:税法や金融規制の変更により、これらの戦略の有効性が低下したり、無効になったりする可能性があります。

 5. 個別の状況:各投資家の財務状況や投資目標は異なるため、これらの戦略が全ての人に適しているわけではありません。

 結論として、本稿で紹介した損益通算戦略は洗練された投資家にとって有用なツールとなり得ます。しかし、これらは投資の基本原則(分散投資、長期保有、コスト管理など)を置き換えるものではなく、むしろそれらを補完するものとして位置づけるべきです。 

 投資家の皆様には、自身の知識レベル、リスク許容度、投資目標に照らし合わせて、これらの戦略の適否を慎重に判断していただくことをお勧めします。また、常に最新の税法や規制に注意を払い、必要に応じて戦略を調整することが重要です。

※本記事では原文をClaude 3.5を活用し校正しています。主に著者の雑な言い回しを丁寧な表現に改めています。

「本記事はインデックス投資における損益通算の新たな可能性を探求しています。著者は同一インデックスを対象とした複数の投資信託とETFを活用し、税引後リターンの最適化を図る手法を提案しています。

特筆すべき点は、理論と実践のバランスです。複雑に見える戦略をネット証券の機能を活用することで実行可能な形に落とし込んでいます。また、ロングとショートの両建て戦略を組み込むことで、リスク管理の側面にも配慮しています。

従来のパッシブ投資の枠を超えつつも、使用する金融商品自体は一般的なものに限定している点が、個人投資家にとっての実行可能性を高めています。ただし、これらの戦略には市場タイミングへの依存や規制変更リスクなど、考慮すべき要素も存在します。

本論考は、投資手法の進化に関心を持つ投資家に対し、新たな視点と検討材料を提供しています。理論的な興味と実践的な応用の両面から、資産運用の議論を深める一助となるでしょう。

Claude 3.5による論考評価

 

 

 

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