AIのもたらす産業・社会構造の変化と金融との関係
はじめに
金融ビジネスの未来像を描くのに欠かせない要素としてAI(Artificial Intelligence)の活用が挙げられます。何がAIかという定義は難しく学者の中でも定まっておりません。以下は国内の研究者によるAIの定義となります。それぞれ異なる部分はありますが共通項を抽出することは可能そうです。
今回は少し脱線してAIをビジネス観点ではなく産業・社会構造にどのような変化を生じさせる可能性があるかを中心に考察し、最後に金融ビジネスとの関連性を整理いたします。
1. AIの発展と雇用の維持
社会にAIが浸透するとAIが人間の雇用を奪うのではないか?という話を目にすることがあります。過去の技術革新(産業革命)では新しい技術が古い産業を破壊し、代わりに新たな産業と雇用を生み出してきました。(馬車⇔自動車産業などは分かりやすい例です)今回のAIによる技術革新(一部で第四次産業革命とも呼ばれる)でも果たして過去と同様の結果となるのか?それとも異なる未来が待ち受けるのか妄想を膨らませてみたいと思います。
過去の技術革新では破壊と創造によって衰退する産業と新たな産業が誕生しました。特徴として産業の機械化を促進しつつも多くの雇用を生み出した点が挙げられます。自動車産業などは顕著な例で産業ピラミッドの頂点に君臨しつつ多くのパートナー(下請け)産業と協業することで多くの労働者(ホワイトカラー・ブルーカラー)の雇用を生み出しました。
そう、過去の技術革新では新たな人の需要がありました。
それは新たな技術(機械)を操作する人を必要とする構造だったからです。果たしてAI革命の先に待つ未来においても人が何かを操作する必要がある社会デザインかどうかを考えてみたいと思います。この点が過去の技術革新とAI革命の一番の相違点ではないかと考えております。
2022年(広義には2020年代)はちょうどAI革命と従来型雇用モデルの狭間に位置しているのではないかと思います。AI革命の影響が少しずつ見える形で表れつつも、まだまだ従来型の雇用やこれまでの社会構造がなんとか維持されている状況です。とは言え、産業・社会構造の変化に応じて社会制度設計は見直される必要があり、これに失敗すると日本という国自体が大きく沈没します。
変化の一例ですがコロナをきっかけにウーバーイーツのようなフードデリバリーサービスが急拡大し、従来型の労働法が想定する労働者とは異なる個人事業主(≒フリーランサー・ギグワーカー)を生み出しました。とは言えこれは過渡期における事象と整理できます。現時点においては俗にラストワンマイルと呼ばれる業務を雇用の流動化によって生み出された融通の利く労働力で穴埋めしていますが、これらの業務は将来的にはAI革命の結果、人からロボットへの置換が予測されます。同様にウーバーのドライバーは自動運転レベル5の実現で無人の自動運転タクシーに置換されることになります。
AI革命による第四次産業革命がこれまでの技術革新と異なる点はここにあります。当然ながらAI革命も過去の技術革新同様に新たな産業を生み出す可能性が高いです。しかしながら必ずしも人の労働力がこれまで同様に必要とは限らない点が違いです。理論的にはバーチャルな存在である多数のAI労働者を管理する少数の人間のAIマネージャーがいれば成り立つ形となります。同時に上記の例の通りこれまで人が担っていた業務のツール・ロボット(ドローン等を含む)への置換が進められます。
これまでも業務効率化・自動化によって多くの業務がリプレイスされてきました。一般的には中級程度のスキルを要する定型業務がその対象になりやすいと分析されていますが、今後のAIの発展によりこの範囲が下級スキル・上級スキルの両方面に拡大すると予測されているようです。現状は下級スキルの業務は低賃金の業務が多いことからAI投資との費用対効果(投資効率)の観点から閾値を超えず、AIによる代替が進まず人による業務が主体となっていますが、どこかのタイミングでAI投資の費用対効果が逆転するタイミングでこれらの業務のリプレイスが加速します。上級スキルも同様で今後はAIに任せる上級スキルを要する業務のボーダーラインが徐々に引き上がることが予測されます。人の労働者が担う業務に求められる要求水準が一層高まる形となり、求人は存在するけれどニーズに沿った人材が市場にほとんどいない状況に陥る可能性が想像できます。この現象は既にハイクラスの人材募集で起きつつある現象ですが、今後はより多くの業種・職種でミスマッチが加速すると考えられます。
これは控えめに言っても結構な地獄ではないかと思います。
もちろん一部の能力の高い層は産業・社会構造の変化に対応し、求められるスキルの変化に柔軟に対応し需要と供給の合致を図ると予測されますが、多くの一般労働者は急速な変化に対応できなくなる可能性が高いのではないかと危惧しています。
一歩引いて10年・20年先のAI革命による産業・社会構造の変化を想像すれば多少はイメージできることであり何らからリスクヘッジはすべきですが、目の前の仕事に忙殺される労働者に“10年後を見据えて今から自己責任でヘッジしろ”というのは酷かなと思います。(私自身は将来の変化を見据えヘッジできるよう行動していますが、そもそも採用しているアプローチが最適かどうかは現時点では検証しようがなく不確実性が高いことは避けられません)
AI革命によって各産業が大きく前進することは間違いありません。ただしその変化の多くは非連続的なもので一般に破壊的イノベーションと呼ばれる類にものである可能性が高いです。持続的イノベーションの世界では過去と未来においてビジネスルールは大きく変化しませんが、破壊的イノベーションの世界ではルールが大きく変化することが多く注意が必要です。
ではどうすればいいか?という問いに対する答えですが、リプレイスされる可能性が低い職業への段階的な移行(ジョブチェンジ)ということになります。AIによって代替されやすい・されにくい職業一覧といったものは検索すると色々出てきますので本記事では個別には触れませんが、それらを参考に10年単位でのシフトを検討する必要があります。
とは言え産業構造の変化を見越したジョブチェンジは現実的には多くの人にとって困難かと思います。社会全体の問題として捉えた際にいくつかの選択肢・シナリオが見えてきます。
AIにより雇用が失われることを見越したAI(ロボット)税の導入検討
社会保障制度としてのBI(ベーシック・インカム)の本格検討
上記の前提として以下のような変化を念頭に置いています。
人口の減少(労働人口)と少子高齢化の更なる加速
経済停滞・縮小(GDP3位からの転落)
AI発展による単純労働需要の減少
失業者の増加
社会保障制度の維持困難
税制の改悪
中流層の消滅
かなり悲観的なキーワードが並んでいますが国策として積極的に手を打たない限りどの前提も早かれ遅かれ実現します。そうなってしまってから対策を考えても遅く、私たちはまず個人として何が出来るかを考えなければいけません。どんなに対策を尽くしても全てを回避は難しいかと思います。
尚、AIと雇用の未来を検討する際に以下の文献が大変参考になりました。結構ボリュームがありましたが海外事例(ドイツなど)や他調査のエビデンスが豊富に示されており論点の大枠を把握するのにとても有用でした。
参考文献
AIが日本の雇用に与える影響の将来予測と政策提言
(岩本 晃一:経済産業研究所)
2. AI(ロボット)税の導入可能性と影響
AI(ロボット)税の導入検討はまだ一般メディアではあまり見かけませんが専門家の間では議論されているテーマとなります。個人的にはAI税の導入には反対の立場ですが、前章で示した通りAI革命の結果、人が担っていた業務の多くがAIによって置換された場合には減少した税収を補う方法を政府が検討することとなります。続いて財源を確保したあとは失業者への社会保障策としてBI(ベーシック・インカム)の議論が本格化するかもしれません。尚、BI導入に関しては現時点では判断材料が少なく中立の立場です。
AI税ですが大雑把に言うと、AI・ロボットの使用者(企業など)への追加的な租税またはAI・ロボット自体を納税義務者と見做すような租税です。最近における議論だと欧州法務委員会から欧州議会に提出された2017 年1 月付けの報告書(3)には,ロボットに対して「電子人(electronicpersons)」という法的地位を付与する案に加えて,2016 年草案(4)の段階で示唆されていたロボット税の検討の必要性に関する記述が盛り込まれました。
上記のロボット税の提案部分は本会議で採択対象とならなかったが、議論のきっかけとしては十分かと思います。AI課税自体は競争力の低下に繋がり社会構造の変化に対する根本解決になっていない点を鑑み反対の立場ですが、賛成派の意見にも一理あり今後はより多くの関係者を巻き込み議論が尽くされるテーマだと感じました。
近年は資本主義の加速の結果、世界中で貧富の差が拡大して社会不安にまで発展しつつあります。確かに格差の激しい米国では上位1%の富が社会全体の富の相当部分を占めると言われております。(調査の時期・媒体によって具体数値が異なるので相当部分という表記に留めております)米国の富豪としてビル・ゲイツやジェフ・ベゾスなどの起業家が挙げられます。大富豪に至る道は基本2パターンで起業家として成功するか投資家として成功するかです。マイクロソフト・アマゾンは共に超大企業ですが時価総額と従業員数(雇用者)を比較すると実は従業員は少ないです。(アマゾンは一部の低賃金従業員を除くと少ない)これはGAFAと呼ばれる2000年以降の資本主義をリードするハイテク企業の特徴の1つで時価総額・利益と比較して従業員数が少ないという共通の事象です。
背景としてそもそもIT産業であり膨大な設備投資が必要な産業と異なるor生産を外部委託している、という指摘がありますが一般企業と大きく異なる点としてこれらのビッグテックは膨大な予算をAIに関する研究開発投資に注ぎ込んでいる点です。AI革命が進行した未来の雇用モデルはGAFAのような企業を通して幾分か見て取ることが出来ます。当然ながら産業分野が異なればAIによる置換割合は異なりますが、徐々に・緩やかにでも置換が進むことは避けられない現実です。
話をAI(ロボット)税に戻すとAI革命による産業構造の変化は新たな雇用を創造するが減少分を補うことは出来ず、結果として人間労働者の需要が減少し、失業者はやや増加し、国家として社会保障設計の見直しが必要となり、AI(ロボット)が矢面に立つことになる、というシナリオです。
社会全体で見ればAIの発展によって間違いなく進化し、より便利なサービスが多く生まれることになります。昔であればその恩恵を社会を構成する多くの階層の国民が享受することができたのですが(例えば日本の高度経済成長)、AI革命の恩恵はこれまでの技術革新とことなり全ての階層の国民に行き渡るのか疑問です。先程の事例に戻ると資本主義の原理原則に則り、経済的に成功した人は間違いなくAI革命の恩恵を享受できます。逆に失業した方は恩恵を享受できません。
当たり前ですが失業者が増えると企業の製品・サービスを購入する消費者層が減少します。その結果、製品・サービスは売れにくくなり経済拡大が停滞・縮小する可能性が考えられます。資本主義経済の発展にとってこのシナリオは好ましいものではないのでなんとかして消費の減少を抑える方法を検討することになります。その1つのシナリオとして増税(AI税)とBI(ベーシック・インカム)の議論が考えられます。両者はそれぞれ異なる論点を有しておりますが、世論の動向次第では同時に関連付けられ 議論されるのではないかと思います。
尚、個人としては以下の理由でAI税の導入には反対です。
法人利益にAI税が適用されることで法人税との二重課税問題が生じる
税制は国によって異なるのでAI税が課されない国への移転が加速する
AI税を課すこと自体が技術進化の足枷になる
税範囲を決めるうえでのAI・ロボットの定義が困難
どの理由が一番ということはありませんが、課税される側の立場で考えると根拠が薄い(適当)な課税には断固反対したくなります。AI税に関する論文・調査レポートを調べましたが、どれもこじつけのように感じました。要するに“税金を取れそうな所から取る”という考え方です。AI税が理路整然とした非の打ち所がない理論ではないという点は軽く調べてだけでも明白でした。よってAI税の背景には現実問題としてのAI革命の結果、産業構造の変化に起因する社会の変化(特に雇用に関する部分)に対する補填という意味合いが強いように感じます。
補填としてのAI税が適切なのか?については大いに議論の余地があろうかと思います。資本主義とは人の欲望が原動力となり人々が努力の積み重ねの結果、社会全体がより良い方向に発展する仕組みだと理解しています。近年は一極集中が非難され再配分が強調される場面が多く見られますが、成長・発展の原動力は欲望であり、出る杭は叩くより伸ばした方が社会全体の発展に寄与するのだと思います。 再配分の方法も日本の場合は硬直的な制度の影響で米国のような寄付文化の発展には至っておりません。
個人的には反対ですが、最終的にAI税が導入されることは議論を尽くした結果であれば問題ないと思います。ただそのプロセスが一部の政治家や官僚の一存で決まるようなことは絶対に避けなければなりません。むしろ新税制が成立した際に課税される側の企業経営者などがしっかり議論に参加したうえで方向性を決めることが重要です。社会全体としてどのように富の再配分を実現するかは正解のない問いですが、良識ある企業経営者が当事者としてAI税の在り方を決める議論に参画するプロセスは先ほど指摘した二重課税・国外移転・技術革新の阻害・課税範囲の定義などの諸問題の解決にも繋がります。十分に議論し納得したAI税制であれば当事者として痛みを伴う税制であっても社会を構成する一員として受け入れられるのではと思います。
尚、AI税の検討・自分なりの理解を進める際に以下の文献が大変参考になりました。キャリア的に国税を経てアカデミックにチェンジしている方で暗号資産・NFTに関する税制に関する考察なども面白い方でした。
noteのアカウントもありましたのでのっけます。
参考文献
AI・ロボット税の議論を始めよう―「雇用を奪うAI・ロボット」から「野良AI・ロボット」まで―(泉 絢也:千葉商科大学准教授)
千葉商大紀要 第59 巻 第1 号(2021 年7 月)pp. 25-51
※検索結果をクリックするとPDFがダウンロードされます。
3. BI(ベーシック・インカム)の導入可能性と社会構造の変化
AI革命によって産業構造が変化すること、人を必要とする業務量が減少すること、求人募集と失業が併存すること(求められるスキルと求職者のミスマッチ)はこれまで整理した通りですが、その延長として社会保障制度全般の見直しが必要となります。国ごとに社会保障制度は大きく異なるため、日本の場合を想定してどのようなシナリオが考えられるか整理します。
近年、選挙の際に政治家がベーシック・インカムについて言及する場面が見られます。日本は比較的格差が少ない国ではありますが昭和から平成を経て相対的貧困層は増加傾向にあるようです。(過去30年間経済成長がなかったので仕方ないですね)ベーシック・インカムは生活保護と合わせて議論されることが多い政策ですが、根本的な発想は異なる政策です。ベーシック・インカムに関しては中立の立場ですが、単純に実現が困難な政策だと感じております。(適切に実現可能であればそれはそれで構わないくらいのスタンスです)
一般にベーシック・インカムの議論になると財源問題が指摘されます。BIに必要な財源をどこから捻出するのか?という指摘ですがBIを検討する際には既存の社会保障制度も全般的な見直しが必要となります。(年金・医療含め)よってプラスとなる部分・マイナスとなる部分が多数あり全体として財源が適切に確保できるかは容易には判断できません。既存の社会保障制度を維持しつつBIの財源のプラスするような考え方では間違いなく無理だと思われます。 (MMTは信用しておりません)
財源に関しては先ほどのAI税が議論の俎上に上がるかもしれません。(それが本当に適切かどうかは別ですが)社会の均衡が崩れ少数の者が多数を養うことになるとその少数に過重な負荷(税金)が発生します。既に少子高齢化で片足を突っ込んでおりますが、AI革命の先にある社会構造の変化によって引き起こされるアンバランスは今の比ではないかと思います。先程の考察の通り重税を好む納税者はいませんのでそのプロセスや根拠が不透明な場合は回避に動くことが予測されます。
これまで以上に多くの国民が働かない(働けない)状態であるため、税を負担する層に過剰な負担が及ぶことになります。結果として担税力のあるエリート労働者・資産家が国外に移住・棄国するリスクが高まります。そうすると負のスパイラルに陥り担税力のある現役層は国外に、生活保護予備軍と年金受給層ばかりが国内に残ることになり養われるものばかりとなります。ますます国家財政は厳しいものとなります。これが安直な増税に結果として予測されるシナリオの1つです。
国の税収には様々な種類があり消費税のような一律の税制もありますが、累進課税の割合も大きくエリート労働者・資産家が負担する絶対額が多いのは事実であり(割合ではなく絶対額です)、この層との適切なコミュニケーション・理解が無い限り持続的な社会保障制度の維持は困難だと思います。現時点においても日本の税制は“酷税”と揶揄されることがありますが、将来税制が改悪されることになると国税が何をしようと富裕層は国外移転を進めるのではないかと思います。
下記はネットで検索すると見つかる日本の税制を表現した一例です。厳密には正しくない表現もありますが感覚的には概ね合っているのが怖いです。特に最後は「働かなければ賞金」っていうのがなんとも言えません。
税金は社会制度設計と強く結びついているがゆえに、その使い道が適切ではない場合には財力と行動力のある人から国外への移住を進めることになります。現代は過去と比べテクノロジーの進化もあり海外移住のハードルがそれほど高くありません。どこに住んでいてもオンライン上で仕事を受注し納品することも容易くなりました。政策として海外の富裕層を歓迎している国も少なくありません。以前、Web3の考察で少し触れましたが現在は過去と異なり、生まれた国で一生を過ごすことが当たり前ではなくなる時代に差し掛かっています。
個人が国家を選択する時代(国家はサービス業へ変化し、国民が国家に奉仕する時代の終焉)においては国が人を縛り付けるのではなく、人が選択的に国を選ぶ未来が到来します。現在は選択的な移動を実現するインフラがまだ十分に整っていないため大きな人口変化は起こっていませんが、あと少し技術の進化で自由が確保され課題が解消されたら若い層を中心に一気に人材の流出が加速し棄国が現実味を帯びるのではないかと危惧しています。
4. AI時代に金融が出来ること
AI革命の先にどのような変化が待ち受けているか色々と想像いたしました。どのようなシナリオが実現するか分かりませんが、未来において金融がどのような役割を果たすかを想像することは次世代の金融を考えるうえで一考かと思います。
AI革命によって間違いなく産業・社会構造は変化します。しかしながら金融という産業が持つ本質的な価値・役割には大きな変化は生じません。AIもまた手段(ツール)であり、それ自体は目的ではありません。ただ影響力が大きなツールであるがゆえに、これまでの前提を色々と覆すことが予測されることから様々な業務プロセスの再設計が必要になることは明確です。
過去に自律型金融という概念を紹介しましたが、あれは1つの金融とAIの融合の形だと考えております。概要は下記の記事を参照ください。
また別の記事ではファイナンシャル・ライフマネジメントの観点からFIREとの関係性についても考察しましたが、あれはヘッジの一例としての心構えを紹介したものとなります。
AIの未来を正確に予測することが誰にもできません。これは株式市場を正確に予測し続けることが困難なことと似ていると思います。株式市場は上下を繰り返し、予測を裏切る動きをすることが常であり、ピンポイントで当て続けることは困難です。しかしながら大局観を持ち30年・50年といったスパンで成長するか・縮小するかという判断であれば、資本主義経済が続く限り成長する、と言い切れるのではないでしょうか?
AIによる社会変化もこれと同様で長期スパンで見れば必ず大きな変化をもたすことは明白でしょう。分からないことは、それがどのタイミングなのか、どの分野で先行するのか、雇用に与えるインパクトはどの程度なのか、など個々の論点についてです。個々の論点を正確に予測するのは個別株の値動きを正確に予測するのと同様に困難です。投資の世界ではインデックス投資という市場全体に投資をする手法があります。AI実装による社会変化のディティールが掴み切れない段階においては細部に拘るのではなくインデックス投資同様にAI全体の発展に投資するのが良いかと思います。段々と理解を深めていく中で自社のビジネスとAIの最適な融合・サービスへの応用が見えてくるかと思います。
過去の記事でも示しましたが、金融とAIの未来として私が考えていることは経済的自由・時間的自由の実現です。フルオート型の自律型金融サービスを通じた意思決定・金融取引の自動化・最適化による可処分所得の向上、金融取引にかかる時間の節約を通じた可処分時間の捻出です。経済的・時間的な余裕の獲得を基礎条件と位置付け、すこからステップアップし個人が自由な生き方を選択できる社会の実現が私の描く次世代金融のコンセプトの1つです。