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不動産STの分析(いちごレジデンストークン編)


1. はじめに 

 現在(2024/10/11時点)、SBI証券で不動産STのプレ募集(需要調査)が実施されています。名称が長いので本稿では「いちごレジデンストークン」と表記します。元STO事業立上げ経験者の目線で、投資に値するか否かを独断を交えつつ簡潔に整理します。 

2. 結論:投資に値しない

 最初に結論を言うと「投資に値しません」。想定税引前利回りが4.0%では話になりません。現状の不動産STは言い換えると「流動性が乏しい単一物件の小型リート」のようなものです。 

以下のリートポータルサイトで全銘柄の利回りが確認できます。

 レジデンス系リートの利回りは低い傾向にありますが、4.0%は低すぎる印象です。リートは直近の下げで利回りが向上しており、全体の平均利回りで4.89%です。上位銘柄は6%~5.5%程度の利回りです。

図1:Jリート利回りランキング上位銘柄抜粋

 住宅に絞ると下は3.5%~上は5.45%まで確認できます。いちごはそれほど信用力が高くないスポンサーなので、本来は利回りには一定のプレミアムが上乗せされるはずですが、4.0%ではプレミアムが全く感じられません。

図2:レジデンスに絞った利回りの一覧抜粋

 本STの予想利回りが4.9%~5.1%程度であれば検討の俎上に上ったと思いますが、4.0%であれば全く引っ掛からない状況です。 

 新しい商品は話題性がありますが、投資家は証券会社のマーケティングに踊らされることなく、本質を見抜くことが必要です。(元証券マンの戯言)現状の不動産STは「流動性が乏しい単一物件の小型リート」のようなもの、という現在位置を正しく認識する必要があります。 

 冷静に分析すると分かりますが商品性の観点で不動産STが優れている点は特にありません。流動性に乏しく、セカンダリー売却時のスプレッドが広く、単一物件リスクを抱えており、組成・販売コストが高い商品です。 

 投資家として有価証券で不動産クラスでリスク・リターンのバランスを取りながらポートフォリオを組みたいのであれば上場リートしか選択肢にありません。(富裕層の方は私募リートの勧誘などもあるかと思いますがお勧めしません)

 尚、株式投資はインデックス運用を推奨しますが、Jリートは58銘柄しかありません。全ファンドの分析もそれほど手間ではありませんので、Jリートの場合には指数連動の投信やETFではなく、個別リートへの投資戦略を私は採用しています。 

 なぜリートは個別ファンドへの投資を軸にしているかですが、58銘柄の中に明らかな罠ファンドが含まれているからです。

 58銘柄のうち20銘柄くらいは簡易スクリーニングの時点で足切りされて検討の俎上に上がらないので、それらも含めた指数連動に抵抗感があります。上場銘柄数が少ないのでIR情報のチェック、比較も容易であり、敢えて微妙な銘柄を含める必要はないというのが結論です。 

2. どうしても投資したい場合は

 不動産STではなく普通のJリートに投資することをお勧めします。どれがいいの?と言われると人ぞれぞれですが、私は以下の銘柄を監視しています。やや物流・インフラ系が多いですが、商業施設やレジ、オフィスなども一定割合で含まれるファンド群です。 

(コード)銘柄

3487:CREロジ
3292:イオンリート
3481:三菱地所物流
8953:都市ファンド
3462:NMF
3309:積水ハウスリート
3249:産業ファ

 特に面白いなーと思うのは産業ファンド投資法人 投資証券 (3249)です。スポンサーはKKRで格付けはAAにも関わらず直近の分配金利回りが脅威の5.91%です。 

KKRをスポンサーとする産業不動産REIT。物流施設に加え、企業のR&D施設、空港、データセンター、工場の底地等のインフラ施設や産業不動産も投資対象とする。2007年10月に三菱商事とUBSがスポンサーとなり上場。2022年4月に三菱商事とUBSが資産運用会社の株式を売却し、スポンサーがKKRに交代した。土地所有者にCRE提案を行い共同開発する等、競合が少ない領域に注力しているため、物流施設特化型REITに比べてNOI利回りが高い。JCRから「AA」の高格付を取得。旗艦物件は「IIF羽田空港メインテナンスセンター」。<2024年7月時点>

以下のサイトから説明文を抜粋
https://www.japan-reit.com/meigara/3249/

 保有物件が際立っており、リート間で物件の重複を避けつつ幅を広げる際の選択肢として有効です。

 他にも三菱地所物流リート投資法人 投資証券 (3481)なども面白いです。財閥系の物流リートにも関わらず利回りが5.26%と高めな点が魅力です。 

三菱地所をスポンサーとするJ-REIT。2017年9月上場。主要投資対象は物流施設だが、ポートフォリオの20%を上限として工場、研究開発施設及びデータセンター等の産業用不動産へも投資可能としている。資産規模は2,711億円に成長。格付けは、JCRから「AA」という高格付を取得。旗艦物件は「ロジポート川崎ベイ」。<2024年2月時点>

以下のサイトから説明文を抜粋
https://www.japan-reit.com/meigara/3481/

 比較的若いリートで規模はそこそこですがスポンサー力が抜群です。もちろん格付けもAAと高評価です。スポンサーの安心感と利回りを両立させた銘柄です。 

 少し尖ったファンドとしてはイオンリート投資法人 投資証券 (3292)も面白い銘柄です。名前から分かる通りイオンをテナントとするリートです。イオングループと一蓮托生という側面もあるので、本体のイオンの今後の業績を信頼できる方は候補に挙がる銘柄です。 利回りは5.14%としっかり5%を超えてきています。イオンの業績が大きく落ち込まない限りは安心して持ち続けることが出来ると思います。 

小売り大手のイオングループをスポンサーとするJ-REIT。セイムボート出資としてイオン株式会社が投資口約17%を取得している。ポートフォリオ構成については大規模商業施設80%以上、その他商業施設20%以下、物流施設10%以下という方針を掲げており、ポートフォリオ構成は大規模商業施設約93%、物流施設約7%、資産規模は4,690億円。海外にも2件(いずれもマレーシアの商業施設)を所有している。格付けについてはJCRから「AA」という高格付を取得。旗艦物件は「イオンモールKYOTO」。<2024年2月時点>

以下のサイトから説明文を抜粋
https://www.japan-reit.com/meigara/3292/

  住宅系を保有したい場合は積水ハウス・リート投資法人 投資証券 (3309)も候補に挙がります。積水は住宅特化のファンドではありませんが、内訳を見ると約66%が住宅です。その他は事務所が22%程度です。レジ主力でオフィスも一定保有という感じです。

 元々ハウスメーカーで住宅に強いのでレジ物件は信用できそうです。利回りもレジを多めに含みながら5.40%と優秀です。 海外物件も保有している点は注目ポイントでもあります。

積水ハウスをスポンサーとする総合型REIT。2014年上場。2018年5月に同一スポンサーの積水ハウス・レジデンシャル投資法人と合併し、住宅とオフィスを中核資産とする総合型となったが、2023年に投資方針を変更し、住宅を中心とした総合型REITへ移行。更に2024年に海外不動産投資を開始。旗艦物件は「ザ アイビー オン ボーレン(米国ワシントン州の住宅)」。<2024年7月時点>

以下のサイトから説明文を抜粋
https://www.japan-reit.com/meigara/3309/

 今回紹介したファンドは私の独断と偏見でチョイスした銘柄なので将来の値上がりや分配金を保障するものではありません。投資の際は必ず自身の判断でお願いいたします。(ちゃんとそれぞれのファンドのIRサイトから最新情報の確認をお願いいたします)

 

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