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犬の話
ずいぶん昔の話になるが、近所に犬がいた。けっこうな頻度で鼻からスコッという変な音が鳴ってしまう変な犬だった。当時、少年だったわたしは心の中で、その犬のことを「スコ」と呼んでいた。
スコはボルゾイふうのシュッとした鼻の長い犬だった。わたしは犬が好きだが、スコはスマートすぎてあんまりかわいくなかった。かわいくなかったなどと言うとかわいそうなので、わたしのタイプではなかった、とでも言おうか。
あのスコッという音は、鼻の細さに起因していたのではないだろうか。犬が興奮して急に息を吸うと、細い鼻腔に圧力がかかって変な音が鳴るのでは。
当てずっぽうで適当な推論を遊ばせているうちに日が暮れてくる。
一日が終わる。
スコよ、いま君は地上にいるか天国にいるか知らないけど、元気でやっているかい。鼻はまだ鳴るかい。わたしも風邪をひいて鼻が詰まると、同じような音が鳴ることがあるよ。お互い哺乳類だからかな。
多分そうだろうと思うよ。