008 │ 心の飛行機映画ベスト5

マイベストを挙げるという、もらすとしずむさんの企画に便乗。私のマイベストは飛行機映画です。




5位:とある飛空士への追憶

我々の感覚からすると、第二次大戦末期と似た感じのテクノロジー(でも細部はSFと言うかファンタジー)で、2つの勢力が戦争をしている異世界のお話。その戦争で登場するのはレシプロの戦闘機。

主人公の若者は、一方の勢力の傭兵パイロット。なんでも敵国人とのハーフとかで、特に正規軍からは蔑まれているけど、腕は文句無しのナンバーワンだから、王室へ嫁ぐ貴族のお姫様を秘密裏に、新開発の 俊 足 偵 察 機 の複座に乗せ、中央へお連れする任を賜る、破格の報酬で。

が、新開発俊足と言っても残念ながら、敵国主力戦闘機の機動性に及ばない。だから若者とお姫様に勝機があるとしたら、いかに敵に見つからないよう大海を横断するか、それだけだなのだ。しかしお約束と言うか何と言うか、2人を乗せた偵察機:サンタクルス号は遂に敵に見つかり、その攻撃に晒される。

突っ込みどころはあるけど、胸がキュンとなったり見終わると清々しい気持ちになるアニメ映画。

(監督:宍戸淳 2011年)




4位:グース

ファミリーな動物映画だけど、主人公の少女、その父親、タイトルにもなっているグース=鴨、の次くらいに主演と言えそうな、ハングライダーに毛の生えたような 超 軽 量 飛 行 機 が、しかし飛行機映画としての格好よさを十二分に備えている。

中でも序盤、超軽量機を駆る少女らと鴨が空に旅立つシーンは、ジェット戦闘機やジェットヘリが、これまで何100回も繰り返して来た緊急脱出&電撃救出シーケンスそのものだ。また中盤、少女らと鴨は地上からの密猟者の散弾に晒される。そこで少女は軽量機をやにわに超低空飛行、地上の脅威を牽制する。もちろん武装は搭載していないが、超軽量機は "戦闘機" になる。

何が悲しくて親子と鴨はそんな目に遭ってるかと言うと、少女が森で、親鳥がいなくなってしまった鴨の卵を拾っ来て孵してしまう。その数16羽(刷り込みによって少女を親鳥だと思っている)に "渡り" を覚えさせ、800km離れた越冬地へ連れて行くのが目的なのだ。

が、親子と鴨に危機は常に迫る。なにしろ親子、色々あって連れ去られた鴨達を奪還すべく前述の電撃作戦で軽犯罪を犯した立場上(笑)、前もって飛行申請を出していない。彼らは航空管制上は アンノウンのまま国境を越える。それを序盤に地上の湖面からサポートする仲間のモーターボートとの2ショットも、緊張感とスピード感があって素晴らしい。実は飛行機映画の飛行機の格好良さは、地上との対比あってこそなのだ。

主人公の少女がベスト・キャスティング。その子役と言うか主演女優は「ピアノレッスン」でデビューしたアンナ・パキン、可憐だ、殆どアイドルプロモ映像状態。パキンちゃんに萌え、鴨に癒され、そしてミニマムなスカイアクションにしびれろ!

(監督:キャロル・バラード 1996年)




3位:エクゼクティブ・デシジョン

近年?製作された飛行機映画で、私が最も推したい佳作。主演はカート・ラッセルとスティーブン・セガール。それだけでB級感炸裂しるけど、派手なCGを用いない丁寧な画面作りと、絶妙なシチュエーションでグイグイ魅せてくれる。

話は、お約束通りテロリストによって旅客機が乗っ取られる。そこでセガール率いる特殊部隊出動。が、この映画が普通じゃないのは、そのセガール率いる部隊の作戦がいきなり失敗、セガールも画面から退場しちゃうところ(贅沢な配役)。無敵の男を失い緊張感は逆にヒートアップ。

じゃあ誰がハイジャックされた旅客機の乗客救うの? と、そこで成り行きで現場に居合わせたカート・ラッセル扮する情報関係の職員(CIAだけど戦闘訓練は受けてない)が嫌そうな顔してやむを得ず、事態の打開にあたります。

舞台の多くは旅客機内だけど、なぜか登場人物のほとんどが ヒソヒソ声 で物語を進める。そこにこの映画のハイジャックものとしての新機軸が凝縮されている。解決不可能と思える困難を1つ1つ綿密にクリアしていく、主人公達の静かな死闘は見応えありまくり。ちなみにかの9.11同時多発テロは、この映画がヒントにされたという黒い噂がある><。

(監督:ステュアート・ベアード 1996年)




2位:翼よ!あれが巴里の灯だ

なんといかす邦題。私は映画に関する優れたアレンジとして、このような日本語タイトルを挙げたい。まるで著名な文学作品に添えられる献詞のようではないか。ちなみに原題は「 T h e  S p i r i t  o f  S t.  L o u i s 」。このスピリット・オブ・セントルイスは1927年、世界で初めてニューヨーク・パリ間の無着陸飛行に成功した、チャールズ・リンドバーグがその単発カスタム機につけた愛称だ。

飛行機が、冒険から旅客や輸送の手段になりかけてた時代、郵便飛行機乗りのリンドバーグが、誰も為し得ていない大西洋無着陸飛行を計画。出資者を募り資金調達、紆余曲折を経て専用機の開発に着手し、ライバルの失敗に一喜一憂しながら、遂にニューヨークからパリへ飛ぶ様が丁寧に描かれる。

回想で語られる、リンドバーグのそれまでの武者修業ぶりも楽しい。リンドバーグの挑戦は偉業以外の何ものでもないが、ノスタルジックな空気に浪漫が香る。

(監督:ビリー・ワイルダー 1957年)




1位:飛べ!フェニックス

石油採掘所から飛び立った、双 発 双 胴 の プ ロ ペ ラ 機 が砂漠に墜落するところから話は始まる。待て! 墜落から始まる飛行機映画って、それじゃ飛行機映画じゃないじゃん、という貴兄淑女のツッコミは尤もだが、しかし其処にこの飛行機映画の飛行機映画たる肝が詰まっている。そしてその肝が、物語が進むに連れて、深く静かに炸裂する。

ちなみに舞台となるのはほぼ、墜落現場の砂漠。待てど暮らせど助けの手はどこからも伸びないし、砂漠は徒歩で越えるにはあまりに広大。生存者は1人、また1人と減ってゆく。このまま太陽に焼かれて死ぬか、絶望感に苛まれ発狂するか。そして生存者達は人間性を保つため、万に1つの可能性もない、怒りと命の闘いを開始する!

配役はジェームス・スチュワート、リチャード・アッテンボロー、ジョージ・ケネディー、アーネスト・ボーグナイン等、只でさえ暑苦しい画面に、出るのは汗臭い男ばかり。私が死んだらこの映画のDVDを棺に同梱して欲しい、私の魂の飛行機映画。ちなみに往年の日本語吹き替え音声がお勧めだ!

(監督:ロバート・アルドリッチ 1965年) 



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