047 | 塩谷 舞さんとAKI INOMATAさんのトークイベントを聞きに行った
少し前の話‥。
連休中の5月4日、SPIRALのSICF17展で催されるトークイベント「今学生に聞いて欲しい、自分の仕事のつくりかた」を聞きに行った。 登壇は、PR活動をフリーでやられてる塩谷 舞さんと、アーチストのAKI INOMATAさんのお2人。メディエターはアートコーディネイターの冠 那菜奈さん。
タイトルにある通り学生に向けたイベントだから、私のような者が参加するのは図々しいってもんだ。学生のための席や何かを奪うのは忍びない><。
が、試しに行ってみて、混雑してたらその時辞すればよいのだし、SICF17を見るために出かけて行く価値はある。なにしろ私は趣味の自転車で、30kmでも40kmでも走行距離を稼げるなら、どこへでも行くのである。
青山はSPIRALまでMTBで乗りつけ、1階、2階とSICF17の作品展示を見進め、トークイベント開始2分前、そのスペースに歩を進めると、席はだいたい学生らしい人で埋まっていた、盛況です。が、その後ろに、立って拝聴する分には問題なさそうなスペースがあるではないか。
しめしめ、そこなら誰かの何かを損なう事もなかろう、と立って待ってた1分前、実は奥の方に空席が1つあり、スタッフさんに促されて断る訳にもいかず、ついつい着座してしまった。もう本当に図々しくてごめんなさい><。
塩谷 舞さんの、アーチストの情報管理についてのお話が興味深かった。例えばある展示会で、またはネット上で作品を発表し‥、編集者なり、ライターなり、どこかのギャラリーの人なり、クライアントとなる企業の人なりが、その作品を見て興味を持ったとする、何かの候補にと考えたとする。で、その信号が作品のアーチストに、スムーズに届くかどうかが問題だ。
展示会場ならカードがきちんと置かれているか、切れてたら意味がない。多めに刷っとけ、置いとけ。更にそのカードのアドレスが、ちゃんと機能していてサっと連絡取れる状態にあるか‥。
また、Instagramなどに作品画像を置くとして、そこからリンクして、Twitterやfacebookなどで、他の作品やアーチストの近況などが分かるようになっているか。或いは専用HPがあり、そこに辿り着けるか。また、その場合HPは定期的に更新されているか。もしも2年手を入れてなければ「あ、この人は創作活動辞めて就職しちゃったのね」などと思われてしまう。HP置くなら、更新をある程度マメにしないと逆効果なのだ。
リアルとネットを含むそれらの仕掛けが、どこをきっかけにしても、サークル状にグルグル機能しているか? それは、いつか訪れる可能性を取りこぼさないための秘訣であり用心であり、世に出るためにはそのような、基礎工事を怠ってはいけない。アートに限らず、様々な局面で生かせるストラテジーだと思う。
また塩谷さんは、学生時分からの取り組みが、どんどん大きく結実するカタチで、現在の仕事のモトになったという話もされた。
籍を置いていたのが京都の山奥?にある美大との事で、その地理をモニターのGoogle Earthで表示しながらお話しするものだから、失礼ながらいちいち笑ってしまった。
創作活動に邁進する学生は、同時に世間との接点が希薄になる事を恐れる。僻地にキャンパスを構える多くの美大の学生は、作品制作と世の中との繋がりというジレンマの只中にある。
かく言う私も、東京とは名ばかりの陸の孤島は小平の美大出身(最寄駅は1時間に3~4本しか電車が来ない単線で、そこから徒歩20分かけないとキャンパスまで辿り着かない上、その途中に無人の野菜販売所があった><)なので、懐かしくも身につまされた(微笑)。
しかし学び舎が山奥や陸の孤島にある事はマイナスばかりではない。作品を研ぎ澄ます上で、不便な環境はまことに都合が良い、何しろ他にする事がないのだ。
その上で塩谷さんは作品の「強度」に言及する。物理的な構造設計の話ではない、隔絶に近い環境で制作に集中できるのは確かであり、その集中や試行錯誤や修練が、最終的に作品に強度を与える。
それは卒業後も同じだろうけど、アーチストとして仕事を受けるようになると、そのような強度を維持しにくい時もある、‥名刺仕事? そこは工夫をもって切り抜けないと、脆弱なものを出力する事になり、アーチストとしての体力も奪われかねない。どんな仕事を受けるか、どのような人と付き合うか、コネクションの選び方についても鼻を効かせる必要が出る。
意外にもAKI INOMATAさんは、自分はそのようなコネクションを、どう嗅ぎ分けたらいいのか分からなかったと言う。その辺りはやはりアーチスト的なのだろうか、などと言ったら乱暴だけど、AKI INOMATAさんの、やはり学生時分からの制作に関する話の中で、興味深い挿話があった。
今となってはピンと来ないけど、本人曰く、かつて “鳴かず飛ばず” の期間があっがそうだ。そしてそこから抜けるきっかけの1つになったのが、海外の現代アートを紹介するサイトで取り上げられた事だそうだ。
しかしそのサイトから、事前に取材の申し込みや、何かの許可を求められる事もなく、一方的に取り上げられ、その翌日か翌々日に、海外から届いた問い合わせが数100件!
勿論そのアートサイトも、AKI INOMATAさんのHPを参照したりして記事を起こし、だからメールも届いたのだろうけど、しかし後日そのサイトに問うても、なぜ取り上げたのか返事はなく、理由や経緯は謎めいたままだそうだ。
AKI INOMATAさん本人は釈然としないままかも知れないけど、その作品のファンである私には、何か象徴的な出来事のように思えた。その辺りの謎?は、いつか遠い未来のAKI INOMATA研究家が解明したりするのではないか、などと夢想したくなる。
様々な可能性を取りこぼさないよう、ネットワークを敷設・循環させるのは確実に重要で、その上で予想外の現象が起きる事がある。
トーク最後の質問コーナーで、デザインを学ぶ学生から質問が挙がった。その問いに答えるかたちで塩谷さんとAKI INOMATAさんが協力して?、その若いアーチストの作品が載るInstagramをその場でネットサーフ、やにわに “ライブSNS診断” が超次元的に始まった。お2人の、学生時代や近年の経験を交えた指南が面白くてエキサイティングだ。
もしも写真が苦手なら、自分よりは苦手じゃない友人知人に助けてもらえば良いのである。もしもDTPが全然なら、自分よりは全然じゃない学友に作ってもらえばよいのである。アーチスト本人が全てをやる必要は必ずしもなく、頼める工程は分散&結集すべきた。もしも都市部に活動拠点が無ければ、何かのツテを利用して、カードには東京のアドレスの1つもブっ込んどいて損はないのである。
面白くてためになる、清々しいトークイベントでした。
塩谷 舞さん blog
【ご報告】小室哲哉さんが作曲した曲の歌詞を書かせてください!と提案した結果
http://ciotan.com/2016/04/28/clorets/
AKI INOMATAさん Official Site
http://www.aki-inomata.com
冠 那菜奈さん Facebook
https://www.facebook.com/kanmuri.777
SICF17展
http://www.sicf.jp/information/