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『スターダスト』 これ観てみ! 忘れられたマイナー映画たち 第11回

『スターダスト』 (1990年、イギリス)
 監督:ニール・ジョーダン
 出演:ニール・バーン、ビヴァリー・ダンジェロ、他

私は何年かごとに、特に好きな映画監督を10人リストアップしてみるのですが、
オールタイムで入ってくるのがこのニール・ジョーダンです。

私のリストの中では、クロード・ルルーシュやM・ナイト・シャマランほど顕著ではないにしろ、
彼はその才能に比して、世評が不当に低い映画作家でもあります。

彼の作品が全て素晴らしいと言うつもりはなく、むしろ、ピンと来ない事の方が多いくらいなのですが、
私としては『クライング・ゲーム』と『ことの終わり』があるだけで、
好きな監督10人に数える十分な理由となります。
それに『モナリザ』や『狼の血族』、
そしてこの『スターダスト』を足せばもう確定というわけでして。

本作は、英国で活躍した後、
ハリウッドで『プランケット城への招待状』『俺たちは天使じゃない』を撮ったジョーダンが、
デビュー作『殺人天使』以来、久々に故郷アイルランドに戻った低予算の小品。

スターは誰一人出ていませんが、製作陣やメイン・スタッフはジョーダン組の面々で固められています。

ただこの作品、DVD化されていない上、VHSの中古品も出回っておらず、観るのが非常にむずかしい映画なのです。

私も、学生時代に一度か二度観ただけで、その記憶を元に本稿を執筆している始末。

海辺のリゾートを舞台に、
サックスを吹く青年ジミー、その父、
ジミーが淡い恋心を寄せる年上の女性、
ジミーと同年代のサーカス少女。

これらの限定された登場人物が織りなす繊細なドラマは、
友人であるビヴァリー・ダンジェロとドナル・マッキャンのために書き下ろしたという、ジョーダンのオリジナルです。

大きな事件は起こらないものの、
物語に仕掛けがある点は『クライング・ゲーム』と共通し、
『殺人天使』(これもVHSでしか観られないのですが)と似た雰囲気もあるし、
『モナリザ』系列の切なさやほろ苦さに「アイルランドの哀愁監督」たる側面も発揮しています。

まあ仕掛けといっても、
シネスイッチの劇場用パンフレットにシナリオが完全採録されていて、
ネタバレしてもさほど問題ないくらいのもの。

むしろこのシナリオを再読すると、ダイアローグの素晴らしいセンスに気づかされます。

さすがはジョーダン、かつては「ジョイスの再来」とまで讃えられた天才小説家ですからね。

さらに、ウィントン・マルサリスのトランペットで演奏されるタイトル曲や、
コートニー・パインが吹くサックスなど、
全編にジャズの名曲を挿入。

『ディーバ』などジャン=ジャック・ベネックス作品で知られ、
ジョーダンの他、ティム・バートンとも数作で組んでいる撮影監督フィリップ・ルースロの映像美も見どころです。

本作をジョーダンの真の代表作と賞賛している人もいますし、
こんな傑作がDVDで、いやVHSでさえも観られないのは何かが間違っていると言わざるをえません。
権利を所有している人は、自らの利害だけでなく文化的な損失も考え、責任を持って商品化して欲しいです。

最後までお読み下さり、ありがとうございました。 
(見出しの写真はイメージで、映画本編の画像ではありません)

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