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59【浮かれてんじゃねー】


7月20日
13時40分虎の門到着

1Fロータリーで降ろしてもらう

この時はこれでしばらく
ルウと会えなくなるとは
思ってもいなかった。。。


事前に電話を入れ
説明された段取り通りに
1Fの発熱者専用のブースに。

完全防護をした看護師さんに

滝川さんですね
お待ちしてましたー


と言われ
熱を測ると 39.5度

よく、歩いてきましたね。。

と言われる。

それでも色々と書きものをさせられて
車椅子に乗せられ外に設けられた
特設の検査ブースに連れていかれる

腕の部分だけが空いた白いつい立て
そこからニョキッと看護師さんの2本の手

ムウの鼻にズブっと棒を刺してグリグリ

はい、大丈夫ですよー

で、検査終了

このものものしさに
なんだかまるで映画の中にいる気分

そのまま救急外来に運ばれて
しばらく待つ

そこで、今コロナの影響で
発熱者は完全隔離であることを聞かされ
同伴者とは退院の時まで会えないことを知る

マジか、完全隔離なのか。。。


しばらくして透明のシートを
張り巡らされた無菌室のような場所に移動
(ただなぜか天井部分は空いている、、詰めが甘い?)

いろんな検査が始まる
抗原検査
血液検査
レントゲン
造影剤を入れたCT

など

ムウは発熱をしてはいるものの
特にそこまでしんどいということはないので
ただ、されるがままになっていた

一体、なんで熱が出たのか
それだけが気がかりだった

ムウは生まれてこのかた
ほぼ、熱を出したことがない

記憶にあるのは38歳ぐらいの時に
一回だけインフルエンザにかかった時だけ

だから熱が出るというのは相当、レアなのよ

2時間ほどして検査の結果が出る

抗原検査 陰性(コロナの可能性が下がる)
血液検査 特に変わったことなし(合併症の可能性が下がる)
レントゲン 異常なし(肺炎の可能性が下がる)
造影CT 特にはないが首元に血栓の可能性があるかも

となって

今のところ、原因は不明だけど
このまま帰るのもアレなので
とりあえずの観察入院をしましょう


ということになる

あーあ
退院後、1週間で逆戻り

中2の時の2回目の鑑別所の時の気分
あーあ
頑張って出たのに。。

ルウがいうように
早く出過ぎたのかな。。。

くそ、くそ、クソーーーー


思い通りにいかないのが人生の醍醐味!


とかなんとかいうてた自分に

クソボケカスーとツバを履きたい気分


ただ、O先生の粋な計らいで
荷物の受け渡しいう名目で
病棟に移動する前にルウと会えることに

救急外来の待合にルウがやってきて
状況を説明ししばらく帰れないことを伝えた

ルウも

ゆっくりしておいで

といった

そこには誰もいなくて
ポツンと二人きり

なんだかすんごくさみしくて
いままでで一番さみしくて
だけどお互いなんにも言葉がなくて
お互い、涙目になりながら
ただただ、そこで呆然としてた


ずいぶん長く待たされた気がした

お互いに伝えたいことがあるけど
言葉の出ない気詰まりな感じで

新幹線のホームまで見送りに来た
遠距離カップルの別れで
せっかく、いい感じでドラマチックに
バイバイしたのに全然、列車が発車せず
doorも空いたままで
なんとなく、時をやり過ごすような
心の中で、

もう、早く閉まって


お互い思うようなそんな
言いようのない時間が流れた

やっと呼ばれて
(やっとということはないけれど)
病棟に移動する

今回は16階NORTH  1669号室

看護師さんに連れられて病室の前に来た時に
突然、

退院までこのドアから出ることはできませんので


と伝えられる

そうか、そうなのか

この独房に入ったら
もう、その刑が執行されるまで
ムウは2度と出られないのか


前回のように明菜さんのライブを聴きながら
跳ねるように廊下を歩くことも
デイルームに電話をしにいくことも
シャワーを浴びにいくことも
食事のお盆を返しにいく時
ナースステーションの様子を知ることも

わかっていたようで
全くわかっていなかった現実を目の当たりにする

一瞬、入るのを躊躇い
なぜか、懸命に外の景色を目に焼き付けようとした

ただのなんの変哲もない廊下の景色なのに。。

これをフラッシュバックと呼ぶのかどうか

ムウは中3の時、施設を脱走した罰として

荷物置き場の狭いベッドにパンツ一枚で1週間
監禁されたことがあった


その時の記憶が一瞬だけ蘇って
入りたくない。。。と思った気がする

だけど実際、部屋に入ってみると
なんということでしょう。。

とっても快適そうな個室
(通常一泊4万円追加料金だけど今回は無料!)


窓からの景色もあってソファーもあって
トイレもシャワーもついてる

鑑別所の個室と比べたらもう雲泥の差
勉強机の蓋がパカっとあいて洗面台に早変わりしないし
その椅子を開けるとトイレになっていたりもしない
窓に鉄格子もないし、麦飯の匂いも鳩の声もしない

最高やん

とりあえずの観察入院ってことは
特に治療をするわけでもないし
花の都、大東京のホテルで原稿を書くために
缶詰にされてる作家先生の気分でいいやん

と思い直した

これからPCRの検査があることや
その1週間後にもう一回やってそれで陰性なら
一般病棟に移ることや
欲しいものがあったら
看護師さんが買って来てくれることや
そんな一通りの説明を聞いて病室の扉が閉まった

*ちなみに看護師さんは全身、完全防備で
 こちらは完全にすっぴんなので
 絵的にすごい違和感はある

ルウが駐車場から車を出し、
荷物を運んできてくれたようで荷物が届く

ちょっとだけウキウキし始めていた気分に
氷を入れまくった冷水をたっぷりかけることにした

何を浮かれとんねん
ルウはここから一人で帰るんやで
首都高なんて絶対無理って言うてたあのルウが

一人部屋でごきげんになってる場合か!あほ!


あーあ、迷惑をかけっぱなし


しばらくして無事に家に着いたと連絡がある
そして、個室の素晴らしさをいっぱい伝えた
(個室だから無限に電話ができる!)

夜、20時には眠くなって寝りに落ちた

教訓
:努力がまっすぐ報われるとは限らない
:全部を過去の経験と重ねる必要はない
:個室はやっぱり、最高です
:隔離はやっぱり、さみしいです

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