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愚痴ータラ

 朝ごはんにおにぎりを食べたが、まだ足りない。冷蔵庫を見るとセブンのチータラがある。しめたものだと袋を開けて一つ口に放り込んだ。賞味期限は大丈夫かしらと袋をジロジロ見やると、なぜか私の苗字が小さく書いてある。

 少し考えて、これは兄の物だと気づいてしまった。家族に取られないように名前を書き込んでいたのだろう。私の兄は自分の物を主張する際に、自分の名前ではなく苗字の方を書き込むのだ。

 これはしたりと悩むが、私は兄と同じ家に住んでいるとはいえ8年間口を聞いていない。謝りたくない。

 ということで、買い直すことにした。食べた事がばれないよう、兄が起き出す前に早急に動かなければならない。とりあえず袋に残ってるチータラを全部食べてから家を出た。

 外は台風が近づいてきているせいか、風が強い。まだ朝なのもあり、いくらか涼しかった。夏休みだから登校する子ども達もいない。踏切を渡って、最寄りのセブンに着いた。無かった。

 さてどうしたものかと考える。他のセブンはここから30分弱は歩かなければならない。面倒だし素直に謝るか? でも8年かけた沈黙を今破るのもなんか違う。
 結局はどうせ暇なのだ、と駅近のセブンへ赴いた。

 曇っていたのでスマホで天気を調べる。どうやらこれから雨が降るようだ。
 その数分後に小雨が降り出し、Tシャツにポツポツと斑点を作った。雨の匂いがし始める。

 本当は朝から本を読むつもりだった。だのになぜ私は雨の中を歩いているのか。この道は飽きるほど歩いているので何の面白みもない。坂があるので疲れるのみだ。退屈だった。

 やっとセブンに着いた。ここに無かったらと不安だったが、無事に買えた。

 帰る道すがら、少し腹が立っていた。なぜ兄は自分の名前を大きく書かない!なぜ名字なんだ!私なら誰にも盗られぬよう大きくグシャグシャに名前を書いて主張するのに! ちゃんと確認しなかった私に非があるとはいえ! これはトラップだ!と。

 そもそもこのような事態はごく稀で、私が用意した食物をいつのまにか兄が食べているなんて事の方が多い。買わずに無視してもよかったかもしれない。

 帰宅し、さっそく冷蔵庫にチータラを置いた。名前は面倒なので書かないが、これで元通りだ。あとは何事もないよう祈るだけである。


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