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「都立野球場」が必要だと思う話

 2013年の東京国体、八王子市民球場で行われた高校野球競技は連日の満員で盛り上がった。特に日曜の試合では立見も溢れていたそうだから実際は立見どころか入場できなかった人もたくさんいた事だろう。

 観戦した方からは「なぜこの球場で?」という声も当然上がった。一瞬そう思ったが、東京の球場事情を反芻してみると即「やむを得ず」という結論になってしまうのだ。

 なぜなら神宮球場と東京ドームは国体の会期中、当然塞がっている。50年ぶりの東京国体なんだからそこは何とかしろよとも思うが、それはそれとして、この2球場以外で最もキャパが大きい球場はこの八王子なのだ。そう言えばそうだよな、と思う。

 これは、横浜スタジアムが使えなくても平塚、相模原、保土ヶ谷がある神奈川、千葉マリンが使えなくても天台がある千葉、西武ドームが使えなくても大宮がある埼玉との決定的な事情の違いと言える。思わぬところで東京の野球場インフラのショボさが露呈した格好だった。

 都営で、硬式の、観覧施設のある単面仕様の野球場というと、実は駒沢球場しかなく、これは全都道府県立の野球場で最もレベルが低い。駒沢球場がリニューアルされるという話を聞いたときは期待してしまったが、実物は見ての通りである。

 必要ないから良いじゃん、と言われればそれまでだが、以下、では必要なのかどうかという話をする。

 国体なんて毎年東京でやるわけではないが、考えてみれば国体がなくても硬式野球をやる組織やチームの数に対して球場の数は足りない。たまたま国体でそれが露呈した過ぎない。

 昔は高校の秋季大会の予選で調布の「関東村」とかいう、2面仕様(!)のグラウンドを使っていた事もあった。秋季の予選とは言え観戦したいファンも多かろうに、多くの試合が所属校のグラウンドで行われている時点で東京の野球関係者及びファンは恵まれていないと思う。更に本大会すら神宮第二球場。いくら高校野球でももはや手狭だったし、秋の本大会の球場としては全都道府県でたぶんもっともショボかった。その神宮第二球場すら今はない。

 これもやはり神宮球場が塞がっているせいとも言える。神宮球場が年間に消化する試合が500超と半端でない。結局この半端でなさが東京の野球事情に影響を与えていると言える。神宮球場の負担を軽減するための「都立野球場」の存在が必要だと思う。別に都立でなくても良いのかも知れないが、それなりのレベルの球場であるべきなので都に造って欲しい。東京都内には政令指定都市のような「強い市」はなく、特別区は都に財布を握られている経済的に自立していない存在である。

 どんな球場かについて細かく述べるのは記事の本題ではないので省く。収容数は2万、場所は多摩のどこかが良い、とだけ述べる。ただし「万が一」の事を考え、3万に増設できるように造ってあると良い。多摩なのは、地域的バランスと次の理由による。

 国体以外に2万のキャパが必要な大会があるのかというと、夏の高校野球選手権西東京大会の準決勝以上がある。特に清宮幸太郎のような注目株がいる年は神宮が満員になったりする事もあるので、3万でも良いくらいだが、そんな試合がさほどあるわけではないので2万とした。何にしても西東京大会まで神宮でやるのはさすがに負担が凄いので都立に分散したい。

 あと、東都大学リーグの存在。失礼を承知で言うが、神宮にこだわる必要があるのだろうか。歴史的経緯で「東都こそ神宮の云々」という意見もあるのは知っているが、六大学に気を使いながら平日にやるくらいなら、土日に都立を使って六大学の向こうを張った方が大学球界的にも面白いし、集客上も期待が持てるだろう。朝8:30から二部リーグ2試合と一部リーグ2試合、計4試合を行う(もちろんナイターができるのなら。昼間六大学観て夜は東都なんてファンもいるだろう)。東都のファンは熱心な人が多いので一部二部が同じ球場で観れるのは歓迎だろう。4試合全部観る人も中にはいると思う。何よりプロが神宮を練習に使える。

 これらを都立に持っていき、草野球のようなグラウンドで行っている試合のいくつかも持っていく。神宮の負担は軽くなるし、かなりのファンや関係者に良い事だと思う。国体までにそういう野球場があったら、八王子市民球場に入れず悔しい思いをした人を出さずに済んだだろうに。

 東京オリンピックが決まった時は、真っ先にそんな期待をしたのだが、結局は神宮が資材置き場になっただけだった。東京のスポーツファンにはあまりスタジアム話でワクワクする事が許されていないという話。

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