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野球ものの名文・名セリフ(20)

 そこで、いよいよ金網に手をかけた瞬間だった。突然、予想だにしないことが起こった。
「ぐう」と、お腹が鳴ったのだ。いつの間にか、お腹が減っていたのだった。
 その音を聞いたとき、彼はふと、あることに気づかされた。それは、「自分の心は死にたがっているにもかかわらず、身体はまだ生きようとしている」ということだった。

岩崎夏海『甲子園だけが高校野球ではない』

 道なき道を進むのは、いつだって頭のおかしい人間と決まっている。そして、そんな頭のおかしい人間だけが、新しい道を切り開くことができるのだ。頭のおかしい人間だけが、不可能を可能にするのである。頭のおかしい人間だけが、女子プロ野球選手になるのだ。
 だから、我々は頭のおかしい人間を絶対に笑うことはできないのである。

岩崎夏海『甲子園だけが高校野球ではない 2』

『もしドラ』作者の編集による、高校野球を取り巻くエピソード集。

 対して賢い人は知性が邪魔をして既存の道しか進めないのだという。

 つくづく、よくぞ女子プロ野球なんてものを作ったものだと思う。社会の模範のごとく誠実に振る舞った彼女たちは、実は頭のおかしい人たちだったのだ。なるほどだから面白かったのか。


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