恭喜台湾。
はじめてアジアの野球というものに触れたのが、2005年の第1回アジアシリーズだった。日本のロッテの優勝が最初からある程度見えていた中、シリーズ唯一の好カードと言えた韓国のサムスンと、台湾の興農ブルズの対戦で、まばらな観客の中、台湾側の応援席で観戦していた。
和太鼓でドンドコドンドコ...プーという音の出る管楽器。音階はない。得点のチャンスでショートライナー。足をバタバタさせて楽しそうに悔しがる女性二人。「台湾加油」と書いたボードを掲げた人がオーロラビジョンに映り、本人と周りが大喜び。
目を閉じていると満員ではないかと錯覚するほど、局所的な熱気があった。これだけ楽しんでもらえたなら、アジアシリーズもやった甲斐があるというもの。
あれから19年。韓国にも台湾にもドーム球場が造られ、プロ野球の人気は飛躍的に向上した。
野球はまだワールドワイドなスポーツではない。だから国際大会も、大会のステータスや国によって参加国の熱量が違ってくる。日本はベストメンバーを組まず、アメリカは相変わらず。台湾は選手に支払う報奨金に、この大会にかける熱意が表れていた。
そんな様々な事情を抱えた野球の世界で、すべての国が「本気」になるにはどうすれば良いだろう。
それは日本が国際大会でアメリカを倒し続けているように、想いの強い国が想いの弱い国を遠慮なく倒し続け、強い筈の相手に「本気ではなかった」と見苦しい言い訳をさせ続ける事だと思う。相手の「想い」までは制御できないのだから。
そうして少しづつ国際大会は成長する。アメリカが本気になるまで。
そういう意味では、台湾が日本に勝ったのは、世界の野球にとっては良い事だったように思う。アジアの熱狂なくして野球の拡大はない。今アジアシリーズを復活させたらまた違った展開があるかもしれない。