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CSがなくならないと思う理由
2024年セ・リーグのCS finalはDeNAが巨人を破り日本シリーズ進出を果たした。
そうなると、当然発狂する巨人ファンが一定数いる。人気球団の巨人様が優勝したのに日本シリーズに進出できない。それと、3位のチームが日本シリーズに出て良いのかという根強い声も再燃する。
優勝したのに日本シリーズに出場できない不条理。私も西武ファンとして同じ経験があるので気持ちはわかる(2位からの優勝という経験もあるので、そちら側の気持ちもわかるのだけど)。
だが、人気球団様が「犠牲者」になり、怨嗟の声が沸き上がっても、たぶんCSはなくならないと思う。
ひとつは、興行としてすでに安定した成果を挙げているから。3位になる事がひとつの立派なモチベーションになり、ファンのペナントへの関心に厚みが出て、「消化試合」が劇的に減った。て言うか消化試合にすら観客がたくさん来るようになった。
ひとつは、ナベツネに「CS廃止しろ」と暴れる元気と力がもうないから。
もうひとつは、むしろこれが本質なのだが、どこが勝ってどこが負けようが、それによって負けた方のファンが発狂してCS廃止しろと喚こうが、代わりに勝った方のファンが盛り上がるから。
これがすべてである。つまり負けた方のファンが不貞腐れて、日本シリーズに無関心を決め込んでも、勝った方のファンとその相手チームのファンが勝手に日本シリーズのスタンドを埋めて、お金を落として、盛り上げてくれるからだ。どういう結果になろうと、構造上そうなる。つまり当初物議を醸したCSは「やってみたら(興行的に)成功だった」という結果がもう出ているのである。
巨人とDeNAではファンの数が違うだろ、という意見が当然あるが、人気不人気と言うのはあくまで相対的なもので、不人気な方が勝ったからといって、社会の大勢に影響はしない(したら大変だ)。試合を主催する当事者の利益になる事こそが重要なのであって、よくどっかの御用学者が、どっかが優勝した時の「経済効果」がいくらかと言う話をするが、野球ファンが大好きなこの「経済効果」は、経済指標と呼べるものですらない。つまり私たちの生活に何か影響を及ぼす類のものではない。もし巨人が優勝したらデフレ脱却して賃金が上がるというのなら私も喜んで巨人を応援するだろう。
繰り返すが、人気不人気という概念は、あくまでNPBという機構の中での相対的なものでしかない。
それでもCSは、盛り上がる一方で、多くのファンの心にしこりを残してはいる。だからシーズンを1位で終えたチームの功績に報いようという考えはあって、「プレーオフ」をCSと呼ぶようになったのと同時に、あくまでシーズンを1位のチームを、その後何があろうと「優勝」とし、当然普通に優勝回数にカウントされ、永久に記録として残り、翌年のメディアガイド等でも「優勝チーム」として最初のページに載るようになった。
それでいくらか優勝チームのファンは溜飲を下げる事ができたのだけど、日本シリーズに進出できなかったという悔恨は心の隅に残る。冒頭で述べたようにその気持ちはよくわかる。
一体CS、つまりポストシーズンをどう行えば良いのだろう。
よく現行の12球団を3つの地区に分けて、ワイルドカードを交えてプレーオフを行えという人がいるが、MLBのスタイルを日本に当てはめてハマるかどうか考えないのだろうかといつも思う。
まず、地区別のリーグにすればどうしても巨人と阪神を引き離す事になる。巨人と阪神がそれを了承するだろうか。中日と広島も。少し考えればわかりそうなものだが。
それによって遠征の負担を軽減できる、と言っている人もいるが、狭い日本を通年全国遠征できる体力がない時点でその企業はプロ野球どころではない筈である。そもそもなぜ国内トップリーグの「一軍」が二軍よりも狭い範囲をチマチマ遠征、というか往来するのか。大陸を、時差をも超えて遠征するMLBのスケールから見たら悲しいくらいショボい。
というわけでこの手の考えは論外。ではお前はどう思うのかと言われると辛い。ただ、しょうもない案を考えるよりは「辛い」方がマシではある。
辛いなりに考えたのは、根本的な解決にはまったくならないが、現行の「気持ち悪さ」を多少緩和できるのではないか、という案。根本的な解決にはならないが、来年からでも実行はできる。
CSがどういう結果になろうと、あくまでシーズン1位のチームを「優勝」と位置付けたように、「日本一」は「セ・リーグとパ・リーグの代表同士」ではなく、「セ・リーグとパ・リーグの上位3球団、計6球団で競うもの」と位置付ける。
具体的には、今までCS 1stと呼んでいたものを「日本シリーズ第1ステージ」、CS finalと呼んでいたものを「日本シリーズ第2ステージ」、日本シリーズと呼んでいたものを「日本シリーズ final」と改名する。
優勝が決まって、全日程終了してペナントはハイ終わり!少し休んで6チームでトーナメントね。優勝パレードするならそれまでに済ませて、という流れである。
やっぱり本質的な解決ではないが、「気持ち悪さ」を少しぼかせるのではないかと。
だめなら、6チームによる総当たり短期リーグ戦という考えもある。ただしこの場合は、上位のアドバンテージをどう反映させるかが難しいのと、最後の一騎打ちが同じリーグ同士になってしまう可能性があるが。
エクスパンションで6球団増やして新しいリーグを興せば3リーグの代表とワイルドカードという体制にできるが、そもそもこの「ワイルドカード」も決してスッキリ消化できるものではない。しかしMLBが採用しているので日本のファンは何の疑問も持たない。
自分の中では意外とCSの名称を変えるだけでいくらかスッキリはするのだが。どんな不条理なルールも、MLBがやっていればOKみたいな基準が日本のファンにはありそうで、そこは何だか情けない。