「12球団を維持するのに精いっぱい」という言い分
しばらく鳴りを潜めていた「エクスパンション」の話題だが、最近また古田が公に言及している。
基本的に古田はエクスパンション推進派で、言ってる事はまあ「古田らしい」なという感じ。本当は、エクスパンションをするために現状の体制の何を変えないといけないか、について言及しなければいけないが、そういう話はなく、「プロ野球のない地域にも」云々というアウトライン的な話に留まっている。もちろん古田がそこから先の事を考えていないわけはないが、今はそういう段階なのだろう。ただ「そういう段階」から少しも進展していないのが歯がゆいが。
だから私も「今の段階」なりの範囲で古田に加勢(?)を試みる。
本当はいきなり4球団新設よりも、「どこからでも新規参入を目指せる」体制を長期的なビジョンを持って作っていく方がベストだと思っている。4球団新設では、今の12球団の「サロン」が16球団に増えるだけで、プロ野球の本質的な部分は変わらないからだ。
しかし現状が「4球団新設」するかどうかという話で止まっているので、それを前提とした話をしたい。
古田も批判的な立場を取る「12球団を維持するのに精いっぱい」という意見をたまに見るのだが、これは何を主語に言っているのだろう。
暗にNPBだとは思うが(て言うかそれ以外に考えられないのだが)、そもそも「12球団体制が維持」されているのは各球団の努力の賜物であってNPBが主体的な役目をしているわけではない。NPBというのはプロ野球の経営主体と言うよりは業界団体とか寄合みたいなもので、もう少し具体的に言うならNPBのコミッショナーは雇われ社長であって決して経営者ではない(実際は法曹界の出涸らしみたいなのが歴任しているので社長ですらない)。
12球団体制をNPBがどうこうするものであるならば、かってMLBが経営難に陥ったエクスポズを預かりワシントン・ナショナルズとして再生したように近鉄を何とかできた筈だが、結局は近鉄、オリックス経営者のなすがままだった。そうした経緯からもわかるように、「12球団を維持するのに精いっぱい」とNPBを主語に言ってくる手合いがあったらそれは詭弁と思って良い。
言いたいことはわからなくもないのだが、それは「現行の12球団と同じもの」をいきなり4つ増やすのが無理、という事だろう。それは当たり前だ。
現行の12球団にプラス4できるか否か、ではない。そうではなくて、プラス4するには現行のプロ野球をどう変えるべきか?という問題なのだ。
つまりエクスパンションは、やるべきかどうかというレベルではなく「やらないとダメ」という事。プロ野球を観戦するという文化というかライフスタイルを日本の隅々まで浸透させないと衰退はあっても発展はないから。それが古田の立場なのだ。現行のオーナーからして「10チーム1リーグがベスト」などと言っているらしいが、いかにもそろばん勘定しかしない人間の言いそうな事だ。て言うかそれはその球団の立場で言っているだけだろう。
縮小すれば社会に野球の衰退を強く印象付け、大衆はプロ野球を「斜陽産業」として敬遠し、更なる衰退を招くだけだ。
今のプロ野球のまま「エクスパンションするには」などという話をすれば行き詰まるに決まっている。だから、今のプロ野球の何を変えていくか。それを議論すると変えていかないといけない部分が色々見えてくる。本当は古田もそういう話がしたい筈なのだ。