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スワローズショップで売って欲しいもの

『かっとばし』という、折れたバットで作った箸がある。箸元に球団のロゴが焼き付けてあって、値段は2,000円前後。ちょっと安すぎると思う。

 どういう事かというと、もっと付加価値を付けられる性格のものだと思うからだ。折れたバットで作った箸という発想は良いし、商品の品質も良さそうだが、何かが足りない。

 野球場で子供が(大人も)異常に「ボール」を欲しがるのはなぜだろうか。用具としてのボールがそんなに欲しいのだろうか。ガラスケースにボールが陳列されていたら、彼らはそれに張り付いて「欲しいなー」と言うのだろうか。

 違う。彼らが欲しがるのは「選手が使っていた、触れていたボール」だからだ。選手が使っていたボールは、彼らと選手とを結びつける精神的な媒介なのだ。

 バットなら尚更。それを単なる廃材利用と言うか「誰が使っていたのかわからない」ものとして箸にしてしまうのは勿体ないと思わないのだろうか。大谷の使っていたバットで作った箸なら10,000円でも欲しいというファンは沢山いるだろう。いやどんな選手にも熱心なファンは結構いるもので、有名選手でなければいけないと判断するのは早合点だ。プロ野球にはマニアックな選手を嗜好するファンが少なからずおり、それは球場で彼らが着るユニホームの背番号からでも察する事ができる。

 要はこの箸に「~選手の使っていたバット」という付加価値を付け、多少値段を上げるべきだと言いたいのだ。

 さらにその商品の出自を明らかにする事で信頼感、安心感も増す。家電などの工場ではライン生産とは別にセル生産と言って、高い技能を持った生産工がひとつの商品を一から責任を持って組み立てるという生産技法も注目されている。その商品には組み立てた責任者の顔写真とともに「私が組み立てました」というメッセージが添えられていたりする。農作物でも生産者の顔写真と「私が育てました」のメッセージが商品の品質を保証してくれる。

 ならば『かっとばし』でも、元のバットの持ち主の顔写真と「私が折りました」のメッセージが付加価値を高める筈だ(?)。いやバットを折ったのがむしろエースの剛球だったら、投手の名前を使うのも良いかもしれない。折れた日時や球場といったデータも、その商品が世界で唯一である事を示す大事なデータと言える。「その打席で~選手が通算xx号のホームランを打った」といったプロフィールも希少価値を高めるだろう。

 別にヤクルトでなくても良いのだが、プロ野球選手の使っていたバットをただの箸にしてしまうのは勿体ないという話。ただ球界最大の「金食い虫」のひとつである「硬式の木製バット」が将来何らかの対策をされる、つまりカーボンなどの新しいバット材にとって代わられるといった可能性を考えると、資源は限られているので是非考えていただきたい。

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