『産・学・芸』 境界を漂い、創造する。 〈LEAPバトン07〉
Rexメンバーに「LEAPな思考を生み出すための習慣や日頃大切にしていること」を聞いていく企画「LEAPバトン」。
第7回スタート!
産・学・芸の境界をたゆたう
はじめまして。魚住です。シニアプランナーという肩書きで、企画部門の責任者をやっています。今日は少しだけ、僕の話をします。僕は実は週に2日だけ会社員をやっています。
その他の日はというと、電子音楽やメディアアートの分野で活動をしています。また、慶應の大学院で特任講師としてその分野の研究者もしています。そして、その応用として、産業分野でフリーランスで制作なども請け負ったりもします。
つまり、産・学・芸の三つの境を、僕は毎週のように漂泊者としてさまよい続けているわけです。これは自分で選んでやっています。自分は一分野だけだとどうしても手詰まりになってしまう。
領域の漂泊こそが僕の創造の原動力になっています。
漂泊者のアイデンティティ
もちろん、苦労もあります。一番は社会的に自分が何者か説明するのがどんどん難しくなること。うっかりすると、すごく中途半端な怪しい人だと思われる。しかし、自分では明らかに3領域とも通底していて、同じ思考や身体を使っている。しかし、漂泊者の専門性は「**屋」のように説明できない。
やがて、自分の専門性は、「即興の設計」だと気づきました。「その場で生む=即興」と「事前に用意する=設計」は矛盾するように思われがちです。しかし、実は共存できる。即興の起こり方や方向を設計しておくんです。この手法は、芸術・音楽の分野では、即興演奏の進化系、コンテンツでは、インタラクションの向こう側にある人々と環境をつなげる仕掛け、研究や組織開発では、柔軟に新しいものを創造していく方法に姿を変えます。
核になる論考は今春、ジャーナル誌(KEIO SFC JOURNAL)に招待論文*として寄稿しました。人と装置の境界をインターフェースといいますが、人と世界が交わって創造が起こる境界をクレフェース(creface)と呼ぶことで、人間の創造は脳みそだけでなく、6つの要素(物理法則、身体/構造、空間、概念ルール、エージェント、観察者)が複雑に絡み合っていると考えようという内容です。つまり、人は周囲の環境を巻き込んで即興的に生きていて、そこをhackすれば設計もできるんじゃないかという話。
ライフとライス
深く話すと本一冊分になるので、漂泊に話を戻します。よく、ライフワーク/ライスワークバランスという言葉を耳にします。
「ライス=食べるための仕事(多くの場合はクライアントワーク)」「ライフ=生涯の仕事(内発的動機のプロジェクト。僕の場合、作品や研究など)」っていう二分法ですが、容易に境界を引く事ってできるんでしょうか。ライスとライフどちらの領域でも、その中の自分の振る舞いは絶えず自分を変えています。それはもう片方の領域での本人の考え方にも影響します。自分の両手を重ねた時、皮膚が押されて形をゆるやかに変えますが、そこに右手左手の主従がないのと同じです。僕も毎週、クライアントワークと内発的な仕事を行き来します。しかし、どちらも同じくらい気づきになっていると思います。
産・学・芸の境界でたゆたう今のあり方は、不便や不安もつきまといますが、ある意味理想でもあります。そういった関わりや価値を認めてくれる弊社の気風には感謝しています(控えめに言って、とても)。この三つどれかが欠けても、残り二つがまったく違うものになっていることは明らかで、この幸運な状況がいつまで続くかは分かりませんが、それぞれで得たことを環流し続けようと思います。たゆたう中で、これからも出会うであろう「未知」を三つの方向から見つめ、なおもたゆたう中で渦を作り、即興し続けるために。
次のバトンは、アートディレクターの秋山さんに渡しします。
彼はたたき上げのアートディレクターで、デザイン部門のトップ。
しかし同時に、アニメや映画などのサブカルチャーの権化みたいな人。
柔軟な考え方で多種多様なお仕事にアプローチされています。
シニアプランナー・魚住
イラスト:たなべあかね
▼LEAPバトンとは
▼前回のバトン アートディレクター・今冨
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RANA UNITED(ラナユナイテッド)は、3つのデザインカンパニー(ラナデザイン 、ラナエクストラクティブ、ラナキュービック)と、複数のスペシャリストチーム、その他、実験的なラボやプロジェクトを包括する、デジタル・クリエイティブグループです。多様性にあふれたスペシャリストの力をかけ合わせ、クライアントの課題解決に必要なあらゆるコミュニケーションを設計、実装していきます。
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