カジャラと劇団イキウメ
私は大学と大学院時代を含め、6年ほど東京で生活していました。
もう二度と戻りたくないと思うほど忙しい日々を送っていましたが、それらを全て差し引いても良かったと思えるのは観劇の機会がそこら中に転がっていたことでした。
隙を見ては大小様々な劇場へと足を運び、本当に多種多様な作品から大いに影響を受けました。
そんな中で、とてつもない観劇体験を1つここに書き残しておこうと思います。
私は、ストレートプレイのような本格的な舞台も大好物ですが、昔からお笑いが大好きだったため、芸人さんが手掛ける舞台作品もよく見ていました。
なかでもラーメンズ・小林賢太郎さんの手掛ける世界観が大好きで、生で見られる作品は出来る限り現場に行って観劇していました。
きっかけは、2016年に開催されたカジャラ #1 『大人たるもの』を見に行った時のことです。(YouTubeで全コント見られます)
ラーメンズの片桐仁さんと小林賢太郎さんが、ひっさしぶりに共演するということで注目を集めていた公演でもありました。
その他の共演者も竹井亮介さんや辻本耕志さん等、小林さんの作品ではお馴染みのメンバーが揃い、めちゃくちゃ期待しながら見たのを覚えています。
そんな中、小林賢太郎作品に初出演でありながらとんでもない存在感を放っていたのが安井順平さんでした。
正直、小林さんの作品はその空気感に合う役者さんと合わない役者さんがはっきり分かれる難しさも内包していると私は思います。
それが、安井さんは「え、僕ずっとここに参加してましたけど?」ってくらい自然に溶け込んでいて、何なら場面によっては気持ちよくリードしてくれるような安心感さえありました。
またもや、とんでもなく面白い役者さんを見つけてしまったと実感したのを覚えています。
元々「アクシャン」というコンビで活動していた芸人さんで、『爆笑オンエアバトル』や『エンタの神様』などに出演していました。
『カジャラ』自体も得体が知れないまま見に行ったのにもかかわらず、本当に面白かったのを覚えています。しかし、DVDを見返しても会場でなんであんなに面白いと感じたのか、今となっては説明できません。(これこそ生で見る醍醐味でしょう)
その後、しばらく普通に過ごしていたわけですが、ある時Twitterで安井さんの名前を再び目にしました。それは彼が劇団員として出演していた「劇団イキウメ」に関する宣伝でした。
ちょうど、2017年に開催された『散歩する侵略者』の再々演だったと思います。私は、何とも言えない強烈なインパクトに引き寄せられ、この公演の口コミをひたすら検索していました。
有難いことにファンの皆様はネタバレなしで上手に感想を呟いてくれていました。それらを見て「これは観に行かなくちゃいけない気がする」と思い立った私は、そのまま会場のシアタートラムに向かい、なんとか当日券で入場することが出来ました。
まさかの最前列に恐縮しながらも、これ以上ない程集中して観劇しました。
引退前の栩原楽人さんも出演しており、子供のころ『仮面ライダー響鬼』を夢中になって見ていた身としては、まさかの明日夢君に感激しっぱなしでした。
そうして、気づいたらカーテンコール。感情をすべて持っていかれ、涙だけが滝のようにボタボタ流れ落ちていました。
良い芝居を見た後って、その余韻を汚したくなくてしゃべりたくなくなるんですが、まさにその感覚でした。
『散歩する侵略者』は映画化もされていますが、私はこの作品をイキウメで見られて本当に良かったと思います。それくらい私の中でとてつもなく大きな体験になりました。
好きな役者さんのおかげで、また別の好きな役者さんを見つけられるのは本当に面白いことだと思います。
安井さんも話題のドラマでご活躍されてますし、小林さんも『シアターコントロニカ』の開催に向けて盛り上がっているので、さらに注目して応援していこうと思います。