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人生の縁取り

他人と自分を比べるな、と励ましの言葉を言われることはあったでしょうか。
他の人と比べるからいけないんだと。

これは確かに間違っていなくて、一人ひとりにそれぞれの人生のペースがあって、それぞれの大きさのステップがあるみたいです。

ウサギと亀のお話が有名なように、ウサギにはウサギの、亀には亀の走り方とペースがある。

ただ、生きていれば周りが気になることもあるし、気にせざるを得ない状況もあるはずです。
レースをしているのに、相手のウサギがどこにいるかわからない分には、いつ頑張ればいいのか戦い方もわからないし。
そんな周りをシャットダウンして生きるわけにもいかないし。

そうこう考えているうちに、自分自身の人生と他の人の人生を同じ枠の中で考えてしまいがちです。
あの人はあそこまで仕事ができる、、自分はここまで。
あの人はあんな結果を残している、、自分はこれだけ。

この ”” こそが比べてしまっている証拠で、私たちそれぞれの人生の境界線を破壊している可能性が高いなということです。

この
”自分以外の人と自分の人生に線を引いて、それぞれ離して考えてみること”
を絵を描くときのの縁取りのようなイメージで考えてみます。
縁取りとは輪郭をなぞって中の物を目立たせることです。

つまり、自分の人生を縁どってみて、世界と自分の人生の間に境界線を引いてみること。

こうして縁取りしてみることで、自分の世界で何が起きていて、どこに向かうべきなのかが少しずつクリアに見えてくるのかもしれません。


正直、私はこの縁取りが得意ではありません。

競技生活が長いからか、目標から出発した競技生活だからか、常に他人と比べながら自分の立ち位置を把握できるようにしていた感覚です。
もちろんそれが悪いことではいし、他の人と比べることで見えることもたくさんあります。
むしろすごく客観的に自分の立ち位置を浮き彫りにするのも事実です。

ただ、自分の人生の縁取りをできずにいると段々と”自分”が消えていきます。
比べているうちに、”個性と自分だけの理由”が世界に滲んでしまいます。
自分の誇れる足跡、頑張る理由、が比較という世界に溶け込んで、
いつの間にか「競争に勝つ」、「追い越す追いつかれる」、「結果」が全ての世界に吸い込まれて行くような。


早いもので、アメリカに来てもう5年目です。
渡米して早々に気がついたアメリカで育った子供たちの特徴があります。

それこそ、この”人生の縁取り”です。

そして面白いことに、人生の縁取りが上手な人は、この能力も持ち合わせていることに気がつきました。

アメリカ人はよく人を褒めます。本心かどうかは実際のところはわかりませんが(笑)、本当によく人を褒めるし、口に出して伝えます。
たとえその人自身があまり調子が良くなくても、本人の状況に関わらず、相手の成功を心から喜んで本人に伝えることのできる人が多いように感じます。この、自分の状況と関係なく他人の成功を素直に喜べる能力は実際のところ習得するのがすごく難しい能力だと思います。

こんなことを文字にすると自分がとても小さい人間だと自覚しますが、
私はまだまだ自分の人生の風向きによって他人の成功を素直に喜ぶことができない場面が多々あります。
自分の幸せの器が満たされて、溢れた時にだけ他の人に分けてあげられるような。他の人への賞賛が、自分の外から湧きあっがってくることが少ないような。
自分の世界と他の人の世界の境界線がないからこそ、自分のことで精一杯な時に、周りの成功も喜べないことがあるというか。
嫉妬とは少し違う気もするのけれど、。

文字にするとすごく嫌なやつですが、実際に自分の世界が確立できてないからこそ起きてしまうことのように思えます。

アメリカの教育において、幼いときから自己自信(self-confidence)、自尊心、個性の重要性を学んで育つことが多いようです。
対して日本では、教育の過程で協調性や責任感に重点を置いています。
それぞれの文化と教育の違いがありますが、この差が人生の縁取りが得意な人がアメリカという国に多い理由かなと考えます。

自分の人生に揺るがない自信があって、人生はそれぞれ個性のある唯一無二の存在だから他の人と比べるような物ではない(比べるべきではない)と理解または教育されてきたからこそ、他の人と比べて考えるようなことが少ないのかもしれません。

もしかしたらこれは国民性じゃないのかもしれないし、たまたま私の周りにいる人たちがすごく縁取りの上手な人間として成長した人なのかもしれないけれど、この差は渡米してから感じた大きな違いです。


情報が常に交差する今の時代に、他人と自分の人生を比べ続けてしまうと疲れてしまいます。
どうしても他人の行動は目に入りますが、私たちは自分の縁の中しかコントロールできないし、それができれば十分です。

人生の縁取りは、自分の個性とペース、自分だけの頑張る理由を世界から守る線でもあるかもしれません。

亀が自分のペースで進めたみたいに。

というかそもそも、それぞれが違うレース(レースでもない)を違うペースで進んでいるので比べられないけれど!

縁取りの鎧は強いはずです。


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