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秋の夜長にハードボイルド小説に出てきたお酒を飲む

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自分の人生にジャンルを決めるとするとなんだろうと考える。本や映画には、恋愛、サスペンス、アクションなどというジャンルが存在する。人はその時々の気分に合わせて、好きなジャンルを選ぶわけだ。では、人生のジャンルはなんだろう。

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どうも、この記事を書いている地主です!

私は人生のジャンルを「ハードボイルド」にしたいと思っている。警察にドヤされ、型落ちのオールズモビルに乗ってはハイウェイを飛ばし、水のようにウイスキーを飲む。謎の金持ちに事件解決の依頼を受け、ワケありげな女性がドアをノックし、ウォーターのようにウイスキーを飲む。

そんな人生を求めている。実際の私は東京と神奈川の県境の街に住む、だいたい家にいるハードボイルドでもなんでもない人だけれど、ハードボイルドになりたいのだ。

憧れるきっかけはレイモンド・チャンドラーが書いた「フィリップ・マーロウ」シリーズだった。マーロウは、ロサンゼルスで私立探偵をしている。身長は180センチ以上あり、体重は80キロを超えるタフな男で、離婚問題は扱わない私立探偵。カッコいい。実にカッコいいのだ。

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大いなる眠りがマーロウの長編1作目

「フィリップ・マーロウ」シリーズの長編は7作品ある。本当は8作品であるが、8作目は著者であるレイモンド・チャンドラーが途中で亡くなったので、ロバート・B・パーカーが続きを書いて完成させた。そのため純粋なシリーズとしては7作品となる。

チャンドラーが書いたマーロウシリーズの長編7作品は、発表された順に「The Big Sleep(大いなる眠り)」「Farewell, My Lovely(さらば愛しき女よ)」「The High Window(高い窓)」「The Lady In The Lake(湖中の女)」「The Little Sister(かわいい女)」「The Long Goodbye(長いお別れ)」「Playback(プレイバック)」。日本語タイトルは翻訳者により異なる。

準古典とも言える作品で、「ギムレットにはまだ早い(長いお別れ)」「撃っていいのは撃たれる覚悟のある奴だけだ(大いなる眠り)」「タフでなければ生きて行けない。優しくなれなければ生きている資格がない(プレイバック)」など、有名なセリフが多々ある。

いま挙げたセリフの中には、随分な意訳だなと思うものもあるけれど、別にいいのだ。カッコいいからいいのだ。ハードボイルドはそんなことを気にしない。気にしてはいけないのだ。タフでなければ生きていけないのだ。気にするのはタフではない。

私はそんなハードボイルドに憧れている。

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ハードボイルドになりました!

マーロウは基本的にスーツだ。しかし、私が思うハードボイルドは帽子、サングラス、革ジャン、指の出る手袋(個人的にハードボイルド手袋と呼んでいる)ということになる。マーロウシリーズはどれも2回以上読んでいるが、結果、この格好になった。彼は(私だけど)なにを読んでいたのだろうか。

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短パンと呼んで欲しい!

マーロウはお金がないと言いつつも、お金にこだわらない。手を引けと言われても事件に関わっていく。私は欲しいカメラがあるからお金にこだわるし、手を引けと言われたら、熱いものを急に触った時のように手を引く。マーロウとはまるで違うのだ。だからかもしれない、こんな格好になってしまったのは。でも自分の中では割とハードボイルドになったなと満足している。

そもそも論として、私とマーロウとでは違いすぎるのだ。彼の身長等は先に書いたが、私は174センチで、体重は58キロ。自分で言うのもあれだけど、ヒョロヒョロなのだ。物理的なタフと真逆にある。革ジャンが、中学に入学したての男の子の制服のようにブカブカ。ただ逆にそれがハードボイルドなのではないだろうか、ということにしたい。

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ハードボイルド!


ハードボイルドなお酒を作る

こんな格好をしといてあれだけれど、もっとマーロウに近づきたいとは思う。切に思う。ということで、マーロウの長編1作目「The Big Sleep(大いなる眠り)」に出てきたお酒を飲んでみたいと思う。ハードボイルドにお酒は、愛を求める深海魚と同じように、切っても切り離せないものなのだ。

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準備しました!

作中ではお酒の銘柄までは指定されていなかったりするが、時代を考えるとその銘柄がわかったりするらしい。ただそんなものは無視だ。たとえば、ウイスキーならなんでも大丈夫、シャンパンならスパークリングワインでも問題なし、ということにしたい。

そのワイルドさこそがハードボイルドじゃないか、ということだ。ハードボイルドを自分の都合のいいように解釈している。ただそれがハードボイルドなのではないかと。

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まずはシャンパンとブランデー

スターンウッド将軍がマーロウに仕事を頼む時、冷やしたシャンパンと、グラスの3分の1ほどのブランデーを組み合わせて飲むと話をしている。シャンパン自体がアルコール度数の強いお酒なのに、さらにアルコール度数の高いブランデーを入れる。タフな世界だ。

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シャンパンをいれて、

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ブランデーを入れて、

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完成!

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これ美味しいね!

マーロウには様々な名言があるけれど、私にも名言がある。

「カルピスサワーからサワーを抜いてくれ」

比喩的なことではない。直接的な意味だ。カルピスサワーはカルピスを用いた酎ハイであるが、普通に水でカルピスを薄めてくれという意味。ただその場合は、濃くして欲しい。誰も踏み入ることのできない暗闇のように濃くだ。私は濃いカルピスが好きなのだ、ハードボイルドだから。そして、サワーがダメなのだ、お酒に弱いから。

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すぐに、こうなりました!

私はお酒に弱い。めちゃくちゃ弱い。嫌いではないのだけれど、すぐに酔うのだ。世界がグルグルと回り出す。だから、普段からお酒は全く飲まない。ただ嫌いではない。その証拠に、シャンパンにブランデーは美味しかった。甘くて飲みやすいのだ。

どちらもブドウから作られているので相性が良いのだろう。私がお酒を飲む場合、何よりも甘みを求めている。苦いと飲めないので。そのハードルをこの組み合わせはクリアした。素晴らしく甘い。問題は酔うこと。すぐに世界が回り始めた、物理的に。少しの量でベロベロだ。

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次はコーヒーにライウイスキー

マーロウは、ブラックコーヒーにライウイスキーを少し入れると美味しいと言っている。ブラックコーヒーで目を醒ましたいのか、ライウイスキーで眠りたいのか、どっちにしたいのか分からない組み合わせだ。

ウイスキーは大麦やトウモロコシから作るが、ライウイスキーは名前からもわかるように、ライ麦から作られる。そのまま飲んでみると、後味としてパンの甘みのようなものが残り美味しい。これをブラックコーヒーに少し入れるのだ。

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ブラックコーヒーにライウイスキー!

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美味しいね!

ブラックコーヒーの苦味がライウイスキーの持つ甘みで緩和される。お酒感がない。でもお酒。つまり酔うのだ。すでに酔っているけど、さらにだ。私が特別にお酒に弱いというのはあるけれど、マーロウたちがこんなお酒を飲んで頭をフル回転させ行動していることに驚く。考えられない。だって今すぐにでも寝たいんだもん、酔って。

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最後はこちら!

ホットトディーを作る。スコットランドでは風邪を引いた際に飲まれているそうだ。マーロウは暗号を解きながら飲んでいた。熱々のお湯200mlにウイスキーを40cc入れ、蜂蜜を大さじ1杯、レモンの絞り汁半個をそこに入れ、シナモンとクローブとナツメグパウダーを入れる。とても簡単だ。

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これがホットトディーです!

ホットトディーを飲みながら3回目となる「The Big Sleep(大いなる眠り)」を読んだ。全然頭に入らなかった。酔っているから。とても酔っているから。ぐったりしている。マーロウはよく拳銃で後頭部をドヤされ気を失う。私は全然ドヤされていないのに、気を失いそうだった。ホットトディー、美味しいけど、お酒はお酒なのだ。

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ぐったり


ハードボイルドの全て!

空っぽの胃袋にお酒を流し込むのがハードボイルドだけれど、それだとさらに酔うので、おつまみのようなものが欲しい。できればすぐに胃に入れられる簡単なものがよい。ということで、ラムネを開くと、キチンとそのようなレシピが出てきた。便利だ。

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和えるだけでいいというのが素晴らしい。すでに酔っているので、難しいことはできない。野沢菜を切って、瓶詰めのザーサイと胡麻油とお好みで醤油を少々で和えるだけ。簡単だ。簡単で美味しいというのはハードボイルドな気がする。

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野沢菜を切り、

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ザーサイなどを入れて、

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和えたら完成!

せっかくなのでもう一品ということで、ラムネを探したら、すぐにもう一つ出てきた。こちらも簡単だった。トマトを切って、らっきょうの甘酢漬けと和えるだけ。

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切って、

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和えるだけで完成!

シャンパンにブランデーを組み合わせたものに、ラムネで知ったおつまみを合わせる。野沢菜にザーサイは特に、反則級に美味しかった。簡単なのに美味しいというのが一番ハードボイルド。トマトにらっきょうだって十分にハードボイルド。とてもハードボイルドだった。

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美味しい!

ちなみに私は独身で一人暮らしだ。マーロウもしばらくそうだった。ただ8作目「Poodle Springs(プードル・スプリングス物語)」で結婚する。その時マーロウは42歳。はい、セーフと思うわけだ。私はいま35歳。まだ可能性がある。あと7年は大丈夫。そういう点でも私はマーロウに憧れているのかもしれない。ちなみにマーロウの結婚生活は早々に破綻する。とりあえず、キザに生きていこうと思う。

ということで、これだ。

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部屋にお花を飾るという投稿があった。なんだかキザだ。つまりハードボイルド。ハードボイルドの全てがあると言っていいかもしれない。革ジャン、サングラス、帽子、ハードボイルド手袋、酒、花。ハードボイルドの全てなのだ。

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こうですね!

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これがハードボイルドの全てです!

この記事を読んでくださっている方は、だんだんと何がハードボイルドか分からなくなってきたかもしれない。でも、これがハードボイルド。全てのハードボイルドがこの写真の中にある。ハードボイルドとはなにか、と悩むことがあったら、この写真を見返して欲しい。ハードボイルドのハードボイルドなハードボイルドによるハードボイルドがあるから。

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最後はぬいぐるみを寝かしつけるというもの。ちょうどいい。これはハードボイルドと特に関係ない。私は一刻も早く横になりたいのだ。酔っているから。でも、一人で眠るのは寂しい。秋の夜は寂しくなるのだ、ハードボイルドな私でも。だからこそのぬいぐるみなのだ。

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酒瓶を枕にぬいぐるみを寝かしつけ、

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最後の一口を煽ってから、

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大いなる眠り!

以上がハードボイルドということになる。私調べでは全人類がハードボイルドになりたいはずなので、ぜひ真似て欲しい。ただお酒は節度を持って。私は二日酔いになって、次の日ずっと寝ていました。一番、ハードボイルドじゃない。

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秋の夜長にハードボイルドを!




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地主恵亮
1985年福岡生まれ。基本的には運だけで生きているが取材日はだいたい雨になる。2014年より東京農業大学非常勤講師。著書に「妄想彼女」(鉄人社)、「インスタントリア充」(扶桑社)がある。
https://twitter.com/hitorimono

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