前略草々 Transformation効果
視覚は動画のように繋がっているのではなく、切り取られた印象の羅列によってできている。アーティゾン美術館のTransformation展を観ながらそんなことを考えた。昨日、書いた話だ。
どんなに連続していると思えても印象と印象の間には隙間が存在するし、印象を切り取る時のフォーカスによって多くのものを捨てている。これは盲点という言葉で説明されるのかもしれないが、もはや盲面と言い換えた方がよさそうにさえ思う。私達は物事を観たいところだけ観て、編集したいように編集している。「あなたってこうよね」と思い込んだ人が絶対にその感想を変えたがらないのは、それはその人が観たいように「あなた」を観て安住してしまっているからだ。
それはともかく、昨日、Transformation展のことを書いた後、この視覚と脳内映像について考えながら家を出た。地下鉄に乗って三省堂本店の仮店舗に向かう。森に行くとヒヨドリがヒーヨと鳴くので合わせて唄っていると、カラスが登場し激しくカアと鳴く。急遽、ヒヨドリがウィンウィンと警告音で鳴いて早く逃げろと私に伝えた。警告音はパトカーの音に似ているが、どっちが元ネタなんだろう。
三省堂本店の仮店舗に行こうと思ったのは、大きな書店がどんな風に圧縮されたのかを見てみたいのもあったし、足を運んでおかなくてはどさくさまぎれに閉店に持ち込まれても困ると思ったから。行ってみれば仮店舗といえどもビル一棟が使われて潤沢。書籍の分類は省略されていなかった。このコンパクトさは却って使いやすいのではないかと思うほどでもある。哲学思想のコーナーもあり大満足。
店内を歩きながら視覚と脳内映像について考えていた。そして漫画について思い出す。視覚と脳内映像の真実からすると、漫画のコマ割り表現は的確だと言えるのではないか。(今調べると、MANGAは世界共通語であるらしく、日本最古の漫画は『鳥獣戯画』だそうだ。)
医学コーナー、児童文学、歴史、経済、小説、新刊コーナーなどをなんとなく歩きながら、新しい形式が生まれても良い頃だと考えた。ざっくりと小説、動画、漫画と三つのジャンルではない形。もやっと柔らかいアイデアが脳に浮かぶ。
仮店舗はコンパクトでジャンル横断しやすいので、お決まりのジャンルに直行しないのが脳に新しいのかもしれない。まさにTransformation効果。
場所のお礼として二冊購入。
草々
(米田素子)