長編小説 コルヌコピア 二部 ここまでのあらすじ
内田アユラはアーティスト養成プロジェクトのオプションツアーから戻ってきたところだった。月尾チェルナが間違って隣の島に渡ってしまったことが心配だったが、連絡があるのなら大丈夫だろうと本部に言われ、しばらく様子をみるつもりだ。
帰宅したところでアユラの住んでいるアパートの大家に声を掛けられ、大家のところにアユラ宛ての郵便物が届いたと渡された。大学時代の知人であるトウジョウマキオからの手紙で、大家宛ての封筒の中に、さらにアユラ宛ての封筒が入って届いたらしい。内容は、《トウジョウマキオがアユラに貸してくれたオーバーコートを捨ててほしい。この手紙が届いた頃にはトウジョウマキオはこの世にいない》といったものだった。大家が姉の買ったマンションに姉の代わりに住むことになった日程を狙って、投函されているようだった。
アユラはトウジョウマキオのことをすっかり忘れていたが、このことで思い出し、大家と二人で、どうして大家の住所に届けられたのか、トウジョウマキオとは誰なのか、オーバーコートにどんな意味があるのかを探り始める。
いくつかの考察。
①トウジョウマキオは大学時代の知人だと思い込んでいたが、よくよく考えてみると本当に大学に在籍していた人間なのかわからない。
②コートを貸してくれた翌日からトウジョウはいなくなったが、その時焦って話し掛けてきたトウジョウのアパートの隣人は誰なのか。
③引越したばかりの大家の住所をどうして知っているのか。
④どうしてアユラが大家の所有するマンションを借りていることを知っているのか。
⑤オーバーコートに付いているはずのクリーニングのタグがないのはどうしてなのか。
⑥オーバーコートに付いていたと考えられる内側のライナーがないのはどうしてなのか。
➆オーバーコートの裏地の刺繍から浮かび上がる数字の意味は?
⑧トウジョウマキオは本当に亡くなっているのか。
これらの考察が行われ、これから大家がコートを解体して調べると言った。アユラは少し寂しく感じたが、解体後、改めて組み立ててもいいと大家は言い添えた。
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