想いを繋ぐこと…
日没に陽が沈み…また明け方に太陽が昇るように、人間の心もリセット出来ればどんなに楽だろう…
哀しい出来事やツラい記憶…それらは時間というスパイスによって緩和するような気持ちにさせられるけれども、実際にはそんな記憶を胸の奥底から消し去ることは不可能で…頭の中の記憶が時間と共に薄れていくだけで何かキッカケさえあれば、まるで昨日の出来事の様に容易く戻ってくる。
時間薬などと云うものは所詮は気休めでしかない事をわたしたちは知っている。それでも…そんな不確かな時間薬に頼るしかない現実に毎日打ちのめされてしまっている。
忘れる事が悪いわけではない…
忘れられない事が駄目な訳でもない…
お互いに相容れる事も出来ないことは仕方の無いことだろう…想いの深さゆえに赦せない事もあるだろう…だからと言って傷つけ合う事が正しい事なのか?
自分が信じるものを追いかけて…追い求める事は何の罪では無いけれど、他者を巻き込んではいけないと思う。自分のエゴを他人に押し付ける事で共感させ…もっとツラい想いをさせてしまうだけだから。
信じられずにいる事は即ち彼自身の全てを否定する事にはならないだろうか?貴方が見て来たものは全て嘘にまみれた偽りの姿だったと…それまで見て来た全てを否定出来るのか?それは自分の記憶や想い出さえも全てが虚像だったのだと言うことにはならないだろうか?
彼にはもう何も伝える術が残されていない。
わたしたちに出来る事は、彼がその度に真摯に取り組んで来た記録とも言うべき作品を素直に受け取りそれを評価、支持し続ける事では無いだろうか?
暗闇ばかりを覗こうとせずに、今まで信じて来た彼の姿と記憶を信じて向き合う事は無理なのだろうか?
哀しい気持ちも苦しい想いも…昇華させるにはまだ余りにも日が浅すぎるから…だからこそ私たちは寄り添い集うのではないだろうか?彼の事を語り、笑い合いたい…とそうすることでしか心の傷はまだ癒せないから。
無駄に反目し合わずに、彼の為の未来へ顔を向けることが私たちに出来る唯一の事ではないのだろうか…そして作品たちが護られていけば、また新たな彼を知る事の出来る人たちが出来てくるのだから…
どうか彼の魂が安らぎに包まれるように想って欲しい…願いたいのはそれだけだ…
彼には、もう二度と訪れることの無い夜明けは時間が経てば私たちには再び訪れるのだから…その事を噛み締めて前を向かなければならないだろう…
決して彼を過去に置いて行くことにはならないから…彼の想いを繋げるのでは無くて…彼を想う私たちの想いを繋げて行ければ良いと思えるように…やっとなった。