【NZ南島のトレイルを巡る旅】#1 RouteburnTrack編
#0 概要
ニュージーランドには『グレート・ウォークス』という9つの自然遊歩道があり、それぞれNZならではの雄大な自然が感じられるトレイルコースとして選ばれている。
今回の旅では、南島のフィヨルドエリアに位置する『RouteburnTrack』と『KeplerTrack』の一部を歩いてきた。
最初に言っておくと、今回全ての行程を歩くことはできなかった。
理由は後述するが、それでもニュージーランドの大自然を感じることができる素晴らしい旅になったと思う。
ざっくりとした旅の"当初計画"は以下の通り。
実際のところこの通りには進まなかった、そんなトラブルも旅の醍醐味と思っている。
#1 厳しい入国審査
初日は成田空港からオークランド経由でクイーンズタウンへ移動する。
AirNewZealandで流れる機内安全ビデオはとてもユニークなもので、2017年のフライトではRun-DMCの"It's Tricky"に乗せた見事なラップビデオに仕上がっており2-3回も見せられても飽きることなく見入ってしまう仕様となっていた。
いざニュージーランドへ入国しようとすると、オークランドで厳しい検疫を受けた。ニュージーランドは生物保護の観点から他国から持ち込まれたトレッキングブーツやテントに付着した土、種から外来種が入り込むことを防止するため、非常に厳しいチェックが行われる。食品は基本持ち込みNGで、ウソの申告を行うと大罰金を取られてしまう。
※アルファ米は持ち込み可だがレトルト食品などはNG
いざ入国、飛行機で申告書を記載し入国審査を受ける。あまりちゃんと理解していなかったが、案の定チェックのため別室に連れていかれる。
とりあえず焦る。
問題があるのかわからなかったが、チェック状況は以下のとおりだった。
◯バックパック
背負っているものを見せる。
よほど汚れていない限り問題なし。
◯トレッキングブーツ
履いているものを見せる。
綺麗にしていれば特にお咎めなし。
◯テント
別室で広げて汚れをチェックされる。
綺麗にしておけば問題ないが、
広げっぱなしのまま返却される。
◯その他(クッカーやバーナー)
こちらはチェックなし
別室に連れて行かれた時は何か問題があったのだろうか。。。まさか罰金!?と頭を抱えていたが、チェックを受けた後にいくつか質疑応答をして普通に通してもらうことができた。日頃から道具は手入れをしておくべき、という教訓になった。
#2 季節外れの大雪
day1
オークランド で少し時間があったため空港付近を散歩したが、11月のオークランドは半袖で過ごせるぐらい暖かい気候だった。気持ち良い風を感じながら国内線でクイーンズタウンへ移動する。
するとクイーンズタウン空港では一変して皆ダウンを着ている。
え、、、と思い外に出てみると、外は軽く雪がちらつく真冬の景色だった。
クイーンズタウンを寒波が通過中で気温は10℃を切っていた。北島と南島の気候の差を思い知らされる。
さらに明日の天気予報を見ると午後から雪となっていたため、さすがに雪中のテント泊は厳しいと判断しルートバーンフォールズハットの山小屋泊に切り替えることにした。テント場のお金は返ってこないが、これは良い判断だったと思う。
day2
クイーンズタウンは引き続き冷え込み、しとしと雨が降っていた。トレイルヘッドであるルートバーンシェルターに向かうバスは私と女性2人のみで、羊たちの群れと長閑な風景を眺めながら1時間半程バスに揺らると目的地に到着した。その頃には雨は止んでいた。
ルートバーンシェルターに到着すると、トレイルの準備をしたりバスを待っているハイカーで溢れており、ワクワクする景色が広がっていた。不安な気持ちが一気に期待に変わり、早々に準備をしてルートバーンフォールズハットに向けて歩き始めた。
途中から雪が降って来る。
当初宿泊予定であったキャンプ指定地は一面雪に覆われ、これはこれで中々お目にかかれない景色だなと思いつつ気持ちが焦る。とにかくテント泊にしなかったのは英断だった。
#3 撤退からの再チャレンジ
雪が強まる中なんとかルートバーンフォールズハットに到着。ハットは2段ベットが並ぶ宿泊棟と火器が使用できる炊事棟に分かれており、2段ベットの位置取り兼受付を済ませハイカーが集まる炊事棟へ入る。
炊事棟は1階と階段を数段挟んだ1.5階の作りで、1.5階から外に出られ管理人室へつながっている。雪ということもありかなり賑わっていた。
食事を取りながらゆっくり過ごしていると、管理人のジムという男が現れ全体に向けて喋りはじめた。まとめると以下のようなことを言っていた。
天気予報だと今夜にかけてさらに雪が強くなる見込み
明日は天気は回復する予定だが、積雪により危険な道がある (AVALANCHE!!)
明日引き返す場合はルートバーンシェルターにバスを手配する
1人ずつ明日の行き先を確認するので教えて欲しい
明日この先へ向かう人はパスポート番号を教えろ、運が良ければヘリコプターで拾ってやる
ジョークも交えつつではあったが、緊張感が走る。私は引き返す方針だが、明日の朝再度判断させて欲しいと伝え、ジムも快く引き受けてくれた。
まだどよめきが残るなか、ジムがさらに続ける。
『ルートバーントラックは世界各国から人が集まる。壁に掛けてある幕に書かれたハイカーたちのメッセージが、それぞれどの国の言葉か当てることができれば、私が楽しみに取っていたチョコ(巨大板チョコ)を上げよう。』
急に始まった言語当てゲーム、まずはみんなの国籍を聞いて母国語から潰していくことにした。30人程度が小屋に集まっていたが、出身はヨーロッパ4割、オーストラリア3割、中国、アジア、アメリカ3割といったところで日本人は私1人だった。
ゲームは盛り上がり見事チョコをゲットした。みんなの緊張感や不安を和らげる、ジムの粋な提案だった。
夜は行きのバスで一緒だった女性2人と話しながら過ごした。彼女らはアメリカ人で、箱根温泉やNBAの事などウィスキーを飲みながらたわいも無い話をしながら夜を越した。
day3
分厚かった雲は流れ始め青空が見えはじめていた。この様子なら行けるかもしれないと先に向かう準備をしたが、ジムからは「やめた方が良い」という忠告を受け、やはり引き返すことにした。(現地の方の意見はとても重要な情報だ)
ルートバーンシェルターには迎えのバスが来ており、爆音のカントリーミュージックに揺られてクイーンズタウンへと帰還した。
day4
天気は完全に回復した様子だった。
当初予定ではテ・アナウという街に宿泊予定だったが、せっかくの晴天なのでルートバーントラックをもう少し歩きたいと考え、テ・アナウ側のトレイルヘッドである「ディバイド」から日帰りでアタックできる「キーサミットトラック」へ向かうことにした。
粘った甲斐があった。
オタゴの山も雪が積もり山肌と綺麗なグラデーションになっていた。キーサミットはそんな景色を見ながらのんびりと過ごすハイカー達の姿があり、最高のトレッキングコースだった。
このままルートバーントラックを歩いてしまいたかったが、「グレート・ウォークス」には入山人数に制限があり事前申請を行わないと宿泊することは難しいため、今回のルートバーンの旅はここで終了となった。
#2 KeplerTrack編に続く