テキトーに『RRR』の感想書く
はじめに
なんだか凄く今更という気もするのだが、文章を書くリハビリという事で『RRR』の感想でも書こうと思う。(ネタバレあるよ)
『RRR』と言えば、日本では2022年10月21日に公開されたインド映画だ。既に公開から5ヶ月近く経っており、大体の作品は映画館から姿を消してしまっている頃。だがしかしこの映画、なんと未だに上映され続けている。
タイトルからは何も伝わってこない3時間も尺がある謎のインド映画が、だ。
作品の完成度の高さが口コミに口コミを呼び、今ではテレビ番組でも特集がされたりする程の話題作となっている。実際自分も、11月頃に「『RRR』というやべー作品があるらしいぞ」という噂を聞いてこの作品に興味を持ったクチだ。
普段は一人でしか映画館に足を運ばないのだが、この作品に関しては珍しく両親と鑑賞した。最近こんな映画があるらしいよ、と話をしたら思いのほか食いついてきた為だ。
インド映画でしかも尺が3時間という事で、普段そこまで映画を見ないであろう両親は『RRR』を楽しめるのだろうかという疑問は正直あった。しかし作品が終わった後には大興奮で感想を話していたので一安心。
どうやらこの作品が多くの日本人の心を鷲掴みにしているというのは本当のようだ。何を隠そう自分も非常に楽しむ事ができた。
『RRR』は何が面白い?
この作品に関しては自分よりもっと凄くて偉い映画評論家の人たちがすげーいい感じの評論を数多くしていると思うので、正確に知りたい人はそっちを読んで欲しい。
個人的にこの作品の魅力は、『映像が凄い』『音楽が凄い』の2点に集約できると感じた。しかし決して「じゃあストーリーはそんなでも無いんだね」などという訳では無い。全ての要素が平均点を超えており、その中でも先に挙げた2つが突出しているだけなのだ。つまりは完成度が非常に高いという事。
映像面の話
まずとにかく映像が凄い。これは誰しもが口を揃えてそう言うだろう。
舞台が1920年のインドなので、当然超能力や魔法なんて物は登場しないし(魔法みたいな動きはしてるけど)、出てくる武器も良くて単発のライフル銃のみである。
だがこの作品を象徴する要素である「FIRE」と「WATER」、そして主人公二人の肉体の力強さでもって圧巻の映像が作り出されている。
それが象徴されるのが、物語序盤でラーマとビームが運命的な出会いをした場面だ。自分はあのシーンを見た瞬間この作品にグッと心を引き込まれた。
二人が再び手を組んだラストシーンでも同じことが言える。
当然超高クオリティのCGを使って映像をが作られている事は言うまでもないのだが、表現するのが「炎」に「水」、「肉体」「パワー」というシンプルな物であるからこそ、出来上がってくる映像も真っ直ぐ力強いものになるのだと思う。
友情合体最強肩車
自分が一番心を奪われたのはこの「友情合体最強肩車」である。(一応YouTubeの映像貼っておくけどめちゃめちゃネタバレだからねこれ)
生身の人間が大の大人を肩車しながら襲い来る兵士たちをバッタバッタとなぎ倒すというトンデモないシーンである。一見するとただのギャグシーンにしか見えないだろう。だがこの映画には、そんな思考の隙を許さないアクションの完成度と映像の説得力がある。
このシーンを見て自分は、『ジョン・ウィック』シリーズが生み出した「ガン・フー」という言葉を思い出した。彼らがなんと上手に銃を扱うことか!
使用しているのは、1発毎にコッキングをしないといけない大昔の銃。上にいるラーマが両手に一丁ずつ持った銃を撃ち、その後下のビームがコッキングをする。この流れるような動作に感動を覚えた。(そもそもあんなライフルを片手で撃つなんて無理無理無理のカタツムリなのだが、そんな事は一切気にならない)
ストーリー的にも一番の盛り上がりを見せる場面ということもあって、個人的にはこの部分がベストショットだったと思う。
音楽の話
この作品の音楽が素晴らしいのは、それこそ言うまでもないだろう。
それは挿入歌である「Naatu Naatu(ナートゥ・ナートゥ)」が、2023年(第95回)アカデミー賞の歌曲賞にノミネートされている時点で火を見るよりも明らかだ。
このナートゥはイギリス人の邸宅で開かれたパーティで披露された。最初はどこか嫌な雰囲気が漂っていたこのパーティだが、このナートゥにより雰囲気が一変する。ドレスを着込んで優雅に踊っていた女性陣は汗と埃に塗れながら大笑いした。厭味ったらしかったイギリス人達もムキになって踊りだし、ラーマらに負けた時には本気で悔しがっていた。
音楽は世界共通であり、誰の心をも震わせる力があるのだなと再認識させられる。実際自分もこのナートゥが流れるシーンでは自然と足でステップを踏んでしまった。
しかし個人的により印象に残ったのは、最終決戦で流れたビームとラーマを歌った曲だ。彼らの名前を力強く声高らかに歌う曲を背景にしながら、本当に意味で手を結んだビームとラーマが敵をなぎ倒していく姿は、それこそ感動的ですらある。
この作品は映像と音楽が特に素晴らしかったと述べたが、よりどちらが心に残ったかと言われれば、自分は音楽と答える。それくらい最終決戦での歌には心を鷲掴みにされた。
(ちなみに自分はこの場面を観て、映画『ドラゴンボール超 ブロリー』にて「ブロリー!ブロリー!ブロリー!」「ゴジータ!ゴジータ!ゴジータ!」というコーラスが流れていたのを思い出した。あの映画も、映像面で非常にクオリティの高い作品であった)
ストーリーの話
この作品、実はストーリーの出来も非常に良い。というかめちゃめちゃしっかりしてる。流石は3時間の尺と言った所か、特にツッコミどころや破綻している部分もなく、一本の作品として完成されている。
物語をざっくりと要約すると「運命的な出会いをし親友となった二人だが、実は敵対する立場であることが判明し袂を分かつ事となる。だが全てを知った二人は、再び手を組み最大の敵に立ち向かう」という物だ。
こういうストーリーライン自体は日本の作品でもちょこちょこ見る。ある意味王道と言っても良い。
この作品はそんな王道を非常に丁寧に描写している。つまり面白くない訳が無いのだ。
仲良くなった二人の楽しげな様子、そんな親友に拳を上げなければいけない葛藤、相手の抱えていた心の悩みを知った時の涙。
そんな全てを乗り越えてきたからこそ、最後の最後に二人が共闘するシーンの興奮は最高潮に達する。まさに「負ける気がしねぇ」というやつである。(個人的にはコードギアスのTV本編にて、最後の最後にルルーシュとスザクが手を組んだ時の感動に近いものがあった)
この「負ける気がしねぇ」に真実味を持たせるのは、意外と難しいのではないかなと最近は思ったりもする。
この物語はいわゆる勧善懲悪というやつなのだが、(この作品における)その「悪」の権化とも言える総督の描かれ方にも感心した。
総督と言えば、その立場にふんぞり返り権力を振りかざすだけの小心者というイメージも強い。だが今回の総督は、威厳あり迫力あり、部下の背信をしっかり見抜く上に銃の腕前も良しという、まさに「ラスボス」に相応しい存在だった。
この作品で主人公二人は、言うまでもなく超人的な動きをしていた。この総督は、敵方で唯一その「超人」の領域に足を踏み入れていた。しっかりとした巨悪だった。
悪役がしっかりと悪役をしているからこそ、それを討ち破る姿に人は興奮するのだろう。
また先程触れた「友情合体最強肩車」の話なのだが、物語前半で二人が楽しげに肩車をしていたシーンがあるからこそより映えている。
他にも作中で何度も繰り返され印象に残る「Reload, Aim, Shoot!」というフレーズがあったりと、物語を面白くする構成が丁寧になされているのも高評価。
おわりに
まあなんとも平々凡々とした事を書き連ねてしまったのだが、本当に誰が見ても損をする映画ではないので、まだ観ていない人は是非劇場に足を運んで欲しいと思う。少なくともあと一ヶ月位は上映しているだろう。(というかこの作品観てない人がこの文章をここまで読んでないよなって書いてて思ったけど気にしない)
この作品で一番驚いたのは、(前作の『バーフバリ』という土台があるとは言え)パッと見全く興味が湧かなさそうな謎のインド映画が、「ただ面白い」という一点だけで大流行した事である。
残念ながらこの社会では「面白い作品なのに全く流行らない」なんて事は日常茶飯事である。自分の好きなあの作品がなんで世間には無視されているんだ……! と悔しい思いをする人も少なくないだろう。
だからこそパワーのある作品が多くの人の目に留まっている事は素直に嬉しい。
ただ本当に、それが苦にならないとは言え3時間の尺というのは、唯一かつ無二のデメリットであるように感じる。
3時間一切ダレること無くその勢いを維持し続けるこの作品ではあるのだが、せめて150分くらいにならなかったのかなぁと思わなくもない。
自分の人生史に爪痕を残すような最高傑作かと言われると実はそうでもないのだが(これは趣味嗜好の問題)、こんなパワーのある新作が次々生まれてくれれば嬉しいなと心の底から思った。
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