新種牡馬リーディングからみる産駒傾向
お久しぶりです。今回はTakkuMattsu( @NorsteinBekkler)さん主催の
競馬 Advent Calendar 2021に参加記念と題して私が書いたnoteの記事で一番反響の多かった新種牡馬の現時点でのアンサー編としてファーストシーズンサイアーについていろいろ顧みたいと思います。
今回も例によってデータはJBIS様のファーストシーズンサイアーランキングからお借りしました。
去年同様に2歳中央デビュー率と2歳勝ち上がり率を算出してます。(※12月12日時点まで)なお、2歳中央デビュー率=(中央出走頭数/血統登録数ー地方出走頭数)*100で算出しており移籍等により重複があるのでおよその数字として見てください。
今回は中央競馬で産駒が勝利した種牡馬のみ紹介します。好走データがないことには結論付けも難しいところなので申し訳ありません。
1.ドレフォン
自身の主な勝ち鞍:BCスプリント
出走頭数:1位(81頭)2歳中央デビュー率66%(81/122)
勝ち上がり数:1位(23頭)勝ち上がり率28%
代表産駒:ジオグリフ(勝ち鞍:札幌2歳S)
特徴:この馬以外に目立った代表産駒が見当たらないGio Ponti産駒でアメリカ生産界が手放した点に一抹の不安を覚えていましたが、そんな私のささやかな不安を鎧袖一触する見事な産駒達の活躍ぶりが印象的でした。
新種牡馬リーディングもほぼ手中、2歳リーディング全体でも勝ち上がり頭数はディープインパクト、ドゥラメンテに次ぐ第3位という活躍は完全に成功種牡馬。ドレフォン自身のピークは3歳後半からということを考えてもクラシック戦線でも良い活躍を見込めるでしょう。この活躍を受けて種付け料も700万と高騰しましたが、キンカメ・サンデーなんでもござれな血統だけに満口もそりゃ当然ですね・・・大種牡馬亡き今後も種牡馬戦線を引っ張る存在になるでしょう。
芝ダートともに優秀な成績を収めていたので距離別にちょっと集めてみました。1200mの場合4-4-6-42、1400mの場合は11-5-4-40、1600mの4-3-6-30、1800mの場合は9-2-3-27。どれも満遍なくですがどちらかといえば非根幹距離の方が狙いやすいのではないでしょうか。あとは芝でも走れる馬が多いですが、変わり身が大きいのはダート変わり。ダートで勝ち上がった14頭のうち、6頭が前走芝でした。またダート変わりの6頭を除くと17頭中9頭が新馬戦で勝利しており、ポテンシャルを初戦から引き出せるという点も大きな武器でしょう。
以上から現時点での評価としましては
①新馬戦から注目すべき②芝→ダート変わりは狙い目③特に行われるレースが非根幹距離の時
あたりかと思われます。
2.シルバーステート
自身の主な勝ち鞍:垂水S
出走頭数:2位(58頭)2歳中央デビュー率58%(58/100)
勝ち上がり数:4位(10頭)勝ち上がり率17%
代表産駒:ウォーターナビレラ(勝ち鞍:ファンタジーS)
特徴:こちらも意外や意外、自身は体質の弱さはあったもののデビューできた産駒数はドレフォンに次ぐ第2位とかなり多かったシルバーステート。ただデビュー馬が多いだけではなく、好走率も高いですし、また中央ではほとんど見られませんが地方新種牡馬リーディングでも第5位でAEI1.31とダートでも結果を残せています。決して優秀な牝馬ばかり集まったわけでもないのにこれだけ成績を残せたなら600万という高額種付け料も納得のお値段ですね。
産駒成績を見ても距離・競馬場ともに満遍なく成績を残しており言うことなし。しいて言えばマイルの勝ち馬が少なくスプリント向きか中距離向きかに成績が偏りがちというところでしょうか。
勝ち馬を見ると全体的にクロスがきちんと入っている馬が多いですね、ウォーターナビレラなら母父キングヘイローによりリファールとヘイローのクロスがありますし、ロンもニジンスキーのクロス持ち。
以上から血統クロスでマイル以下で活躍か中距離で活躍か分類するときにも参考になるのではないでしょうか。
3.イスラボニータ
自身の主な勝ち鞍:皐月賞
出走頭数:3位(54頭)2歳中央デビュー率57%(54/94)
勝ち上がり数:2位タイ(12頭)勝ち上がり率22%
代表産駒:プルパレイ(勝ち鞍:アスター賞)
特徴:突出した産駒は少ないけれど、きちんとアベレージを出せるフジキセキ産駒らしい船出となりました。ちなみに単勝回収率は179%と評価できる産駒は安定して強い仔が多いですね。特に今開催されている中山芝では4-2-1-6の複勝率54%、阪神芝では3-3-2-15と非常に相性が良いです。
他にはサンプル数こそ少ないですが福島芝で2-1-1-5、新潟芝で1-3-4-5と素晴らしい結果を残していますね。
ニックスで気になるのはニシノレバンテ、ハンス、スマイルアップ、アイヴォリードレスと4頭の勝ち上がりを出したデピュティミニスター系でしょうか。全体的にみても欧州血統より米国血統強めの配合の方が成績良さそうです。
4.キタサンブラック
自身の主な勝ち鞍:有馬記念
出走頭数:7位(40頭)2歳中央デビュー率49%(40/81)
勝ち上がり数:2位タイ(12頭)勝ち上がり率30%
代表産駒:イクイノックス(勝ち鞍:東スポ杯2歳S)
特徴:出走頭数こそ多くないものの、勝ち上がり率はドレフォンと遜色ない点は流石の貫禄。
ダート適性に関してはまだまだ結論を出せないですが、勝ちはマイル以上の時のみに留まっており、母父サクラバクシンオーといえどスプリント路線では頭を狙うのは厳しそう。母系にナスルーラ2本加えているおかげか重たい馬場でも惨敗は少なく、何より速い上がりを使える馬が多いのが特徴でしょう。その一翼を担ってくれているのは間違いなくリファール。来年のクラシックも期待されるイクノイックスは母父キングヘイローなのでリファールの多重クロス持ちですし、多分今後も母父キングヘイローという血統はニックス一番手になるのではとにらんでいます。
ちなみにウマ娘血統で今年のPOG人気馬であるピエドラデルーナもイクノイックスと同じリファールの5*5*4持ち。楽しみですね。
5.サトノアラジン
自身の主な勝ち鞍:安田記念
出走頭数:8位(39頭)2歳中央デビュー率60%(39/65)
勝ち上がり数:5位(7頭)勝ち上がり率18%
代表産駒:ウェルカムニュース(勝ち鞍:2歳1勝クラス)
特徴:自身は古馬になってから本格化した異質のディープ産駒だったのでそこまでいきなり活躍する産駒が出てくるとは思っていませんでしたが、まさか芝(3-1-5-53)よりダート(5-2-8-29)で好成績になるほどのダート適正を発揮するのは想定外でした。特にダート1800m戦では3-2-4-10と複勝率は約50%。ダート1800mでは迷ったらサトノアラジン産駒を買いましょう。
相性よさそうなのは母父デピュティミニスター系ですかね。
6.アメリカンペイトリオット
自身の主な勝ち鞍:メーカーズマイルS(米GⅠ)
出走頭数:5位(44頭)2歳中央デビュー率54%(44/82)
勝ち上がり数:6位タイ(6頭)勝ち上がり率14%
代表産駒:ビーアストニッシド(勝ち鞍:2歳未勝利)
特徴:地方新種牡馬リーディング第二位。ザファクターの下位互換に甘んじるのではと危惧していたので正直ここまでやれるとは思ってませんでした。馬券内でいえば、中央では圧倒的に芝>ダートであり特に阪神マイルでの今年の成績は1-3-1-4と複勝率66%。全体の回収率をみても単勝複勝ともに100%を超えており、隠れた今年の優良種牡馬ではないでしょうか。勝ち馬を見てもサンデーサイレンス系に頼らなくても勝ち上がれる馬も多い、地方新種牡馬リーディング2位とダートでも潰しが効く、と生産界から評価を得ているのも納得です。
ねらい目としてはマイル、阪神、叩き2戦目3戦目あたりではないかなと思っています。
7.ビッグアーサー
自身の主な勝ち鞍:高松宮記念
出走頭数:6位(42頭)2歳中央デビュー率45%(42/94)
勝ち上がり数:9位タイ(4頭)勝ち上がり率7%
代表産駒:トウシンマカオ(勝ち鞍:2歳新馬)
特徴:テスコボーイ系最後の砦、ビッグアーサー。頭数は集められているもののちょっと苦戦が続いているイメージですね。とはいえ、トウシンマカオの2歳新馬戦の1着を除いて、他の馬券内はいずれも1400m以下というサクラバクシンオーらしさを見事に引き継いでいますし、4歳から本格化したビッグアーサーを考えればまだまだ評価を決めるのは早すぎるでしょう。勝ち上がったトウシンマカオの母父はスペシャルウィーク、ウインモナークの母父母はアドマイヤジャパンとニジンスキー内包サンデーサイレンス系との相性の良さ、ノーザンダンサーの多重クロスはポイントになると思います。
是非父の強さを引き継いでくれる産駒が出てくることに今後も期待しています。
8.ザファクター
自身の主な勝ち鞍:マリブーS(米GⅠ)
出走頭数:4位(49頭)2歳中央デビュー率49%(49/99)
勝ち上がり数:6位タイ(6頭)勝ち上がり率12%
代表産駒:ゼットノヴァ(勝ち鞍:2歳新馬)
特徴:地方新種牡馬リーディング第三位。全体として決して悪い数字ではないですし、距離の融通もある程度は利くオールマイティ型ですね。
芝では福島1200m2着のニシノラーナ(母父ゴールドアリュール)を除けば馬券内は新潟と東京のみの左回り巧者。また母父で見れば千直で好走の2頭はロベルト系、それ以外はいずれもサンデーサイレンス系となっており、自身の左回り特性と母父を見れば傾向は掴みやすい種牡馬だったのかもしれません。
9.コパノリッキー
自身の主な勝ち鞍:フェブラリーS
出走頭数:9位(34頭)2歳中央デビュー率40%(34/86)
勝ち上がり数:8位(4頭)勝ち上がり率12%
代表産駒:コパノニコルソン(勝ち鞍:2歳未勝利)
特徴:地方新種牡馬リーディング第一位。ちなみにダート競争に限れば新種牡馬リーディングでもドレフォンと僅差の2位となっています。地方新種牡馬リーディングでは2位のアメリカンペイトリオットとダブルスコアに近い差をつけており、地方新種牡馬リーディングはほぼ手中。地方2歳リーディングでも全体で8位と並み居るダート種牡馬達と競い合えるポテンシャルは流石ですね。
特徴はなんといっても雨の日のダート。中央勝ち上がり4頭のうち2頭は重馬場ですし、地方になりますがブリュットミレジメやキモンブラウンが不良馬場で勝利。何を隠そうコパノリッキーの父はダートの帝王ゴールドアリュール、母父は雨の日の代名詞ともなったティンバーカントリー。そうなれば当然コパノリッキーの産駒はダート重馬場に強いのも当然の帰結でしょう。
10.ロゴタイプ
自身の主な勝ち鞍:安田記念
出走頭数:10位(25頭)2歳中央デビュー率64%(25/39)
勝ち上がり数13位タイ(1頭)勝ち上がり率4%
代表産駒:ラブリイユアアイズ(勝ち鞍:クローバー賞)
特徴:父ローエングリン、そして父の他の産駒も未だ成し遂げられていないGⅠ勝利をはたしたロゴタイプ。そんな彼も最初に送り出した産駒の中央勝ち上がりはただ一頭のみです。(※12月12日現在)
ただその一頭ラブリイユアアイズは4戦して馬券外はなし。それも重賞、GⅠを使いながらです。初年度産駒で父の血をもっとも濃く受け継いでいる彼女は来年もすごく楽しみな存在になるでしょう。
勝ち上がりは時間の問題となりそうな産駒にはエコロデビルもいますが、こちらもラブリイユアアイズと同じ母父ヴィクトワールピサ。このニックスは覚えておいて損はないでしょう。
11.ディーマジェスティ
自身の主な勝ち鞍:皐月賞
出走頭数:12位(24頭)2歳中央デビュー率62%(24/39)
勝ち上がり数:9位タイ(3頭)勝ち上がり率13%
代表産駒:シゲルファンノユメ(勝ち鞍:2歳未勝利)
特徴:爆発力ある血統ですが、自身の活躍を彷彿とさせるような馬が出てきていないのが現状でしょうか。一発すごい代表産駒を出してくれると期待しているんですが・・・
ロベルト入りディープ種牡馬ということでダートも比較的こなせる産駒が多いのは特徴でしょうか。ただ産駒は大きい仔でも470台と馬格で苦労していることもありパンパンのダート良馬場や坂のきついコースでは苦労しているイメージ。その中で異質なのは東京で勝ち上がったディープレイヤー。母父トウカイテイオーのこの馬にはこの先もっと活躍してくれるのでは期待してしまいますね。
12.ヴァンキッシュラン
自身の主な勝ち鞍:青葉賞
出走頭数:15位(2頭)2歳中央デビュー率100%(2/2)
勝ち上がり数:12位(2頭)勝ち上がり率100%
代表産駒:トーセンヴァンノ(勝ち鞍:コスモス賞)
特徴:なんといっても2頭の中央デビューが2頭共勝ち上がり。エスティファームのプライベート種牡馬とはいえ、この結果を出しながら2年連続で10頭前後しか産駒がいないのは勿体ないの一言につきますね・・・
ナスルーラをメインにするか、ヘイルトゥリーズンをメインにするかで芝ダートがはっきりしそうな気がしますが産駒数が少なすぎて結論はまだ出なさそう。
13.ラニ
自身の主な勝ち鞍:UAEダービー
出走頭数:10位(25頭)2歳中央デビュー率54%(25/46)
勝ち上がり数:9位タイ(3頭)勝ち上がり率12%
代表産駒:リメイク(勝ち鞍:2歳新馬)
特徴:地方新種牡馬リーディングは第4位。中央で勝ち上がった産駒はいずれもノースヒルズの前田オーナーの持ち馬というのは偶然ではないんでしょうね、ラニに似た産駒がわかるのかもしれません。馬券内に入った6Rのうち3Rが東京という府中巧者っぷり。走る産駒としてはムーヴの母母母父Kenmare、リメイクの母母父Nashwan、フリューゲルホルンの母母母父Irish Riverといったように近すぎないナスルーラ系がポイントになりそうです。
14.ワンアンドオンリー
自身の主な勝ち鞍:日本ダービー
出走頭数:13位(7頭)2歳中央デビュー率58%(7/12)
勝ち上がり数:13位タイ(1頭)勝ち上がり率14%
代表産駒:アトラクティーボ(勝ち鞍:2歳未勝利)
特徴:産駒が掲示板内に入ったレースが中山、福島、阪神内回りと比較的小回りに出ていますね。また坂のある競馬場で上がりが早い仔も多く、この辺を馬券組み立てる時の予想ファクターに組み立てると良いかもしれません。
15.トーセンレーヴ
自身の主な勝ち鞍:エプソムカップ
出走頭数:15位タイ(2頭)2歳中央デビュー率50%(2/4)
勝ち上がり数:13位タイ(1頭)勝ち上がり率50%
代表産駒:トーセンクレセント(勝ち鞍:2歳新馬)
特徴:たった7頭の産駒から地方で3頭デビューし2頭が勝ち上がりシルバは笠松で無傷の3連勝、2頭しかいない中央デビュー馬からトーセンクレセントを輩出したのはやはり良血のポテンシャルが発揮された結果だと思います。先に紹介したヴァンキッシュラン然り、島川さんもマクマホンばかりに集中しなくてももっと良い自家生産馬作れそうなんですけどね・・・
狙いたいのは小回り(トーセンクレセント福島新馬1着)、そして非根幹ですかね(トーセンビースト函館1800m3着)
16.ポアゾンブラック
自身の主な勝ち鞍:エニフS
出走頭数:14位(3頭)2歳中央デビュー率50%(3/6)
勝ち上がり数:13位タイ(1頭)勝ち上がり率33%
代表産駒:イチネンエーグミ(勝ち鞍:2歳新馬)
特徴:こちらもわずか12頭の世代から地方では既に6頭デビューし5頭勝ち上がり、そして中央でもイチネンエーグミが勝ち上がりと優秀な種牡馬ですね
地方含め勝ち上がりはマオノブルーローズ以外は1150m以下で勝利しており、スプリンターとして活躍した父の良さをみんな引き継いでいます。狙うなら時計のかかるパサパサの良馬場かドロドロの不良馬場が狙い目でしょうか。
最後に
いかがでしたでしょうか?今回の紹介は以上になります。まだまだ彼らの種牡馬としての生活は始まったばかり。今回のお話はあくまでも僕の仮定の話ですし、結論はこれから先の活躍も含めてから各々が出していきましょう!
また、血統とデータの扱い方についてある程度結びつけやすい物だと思っていただけたならそれだけで記事を書いた冥利に尽きます。
読んでいただきありがとうございました!それでは良い競馬ライフを!
追記:明日の競馬 Advent Calendar 2021は碧馬らいむ君(@limekeiba )です!明日もお楽しみに!
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