#5 日本語を巧妙に操る「BAD HOP」
今日の1曲。
BAD HOP - Ocean View
¶ 「日本語ラップはダサい」を覆した
彼らが歌う曲のジャンルはHIP HOP。
HIP HOPとは
1970年代のはじめに
アメリカのニューヨーク、サウス・ブロンクス地区で生まれた
音楽のジャンルである。
そのため
アメリカではかなり人気の音楽ジャンルで
しっかりとした地位が確立されており
ビルボードのチャートにも必ず入ってくる。
ただ
日本ではまだまだ馴染んでいない。
その要因の1つとして
海外にルーツを持つサウンドを
そのまま転用し
そこに日本語を当て込んだ形の
ヒップホップ(敢えてカタカナ表記)が
蔓延していたからであろう。
日本人の音楽観を考慮しないまま
英語の文節の区切りに適したサウンドに
日本語を強引に当て込んでいるため
リリックに無理があり、聴くに堪えないダサさがあった。
しかし
高校生RAP選手権や
フリースタイルダンジョンなどのTV番組の登場で
昨今のこのシーンは賑やかだ。
そこから彗星の如く現れたのがこのBAD HOPという
神奈川県川崎市を拠点とするヒップホップクルーである。
メンバーは
T-Pablow(22歳)とYZERR(22歳)という双子の兄弟を中心に
Tiji Jojo、Benjazzy、Yellow Pato、Bark、G-K.I.D、Vingoの
8人で構成されており
曲ごとに歌うメンバーが入れ替わっていく。
彼らの最大の特徴は
「日本語ラップ」らしからぬ
リリックの運び方だ。
韻やフロウなど
日本のHIP HOP界では頭1つ抜きんでている。
日本語の主述の関係を理解し
また、それぞれの単語の意味を踏まえ
上手くサウンドに合わせていっている。
そして何よりも
今までの「意思や想いを強固に伝える」タイプの
リリック重視主義から脱却し
世間のニーズを捉え
そこに自分たちの思いを挟み込んでいくバランス感覚が
彼らには間違いなくある。
それゆえに
日本語のHIP HOPなのに
今までのようなダサさを一切感じさせないのだ。
ここまで巧みに
日本語を操れたヒップホッパーは存在しただろうか。
¶ 彼らには日本ラップを背負う覚悟がある
彼らの曲を聴くときは
ながら聴きでサウンドのカッコ良さを嗜めるのも良いが
一度じっくりとリリックを聴いてみてほしい。
彼らの覚悟が如実に現れたそのリリックは
素直に応援したくなる気持ちを沸き立たせるし
その意思に感動すら覚えるレベルだ。
1995年生まれの若者たちが
日本を背負って世界に出ていき
本丸であるアメリカのHIP HOPシーンで
輝く姿をぜひ見たい。
彼らは日本語にこだわっている。
だからこそ
日本語で世界に挑んでほしい。
その前段階として
これからの日本のHIP HOP界を
彼らが牽引していくことは間違いないだろうし
彼らに憧れてラップを始め
彼らを抜き去るようなまだ見ぬ天才の登場も期待したい。
「今日の1曲」ではないが
彼らの滾る想いが溢れ
さらにはセンスも垣間見える曲をご紹介したい。
BAD HOP - Life Style
「現状を変えたいなら、下より上を見ろ」
私の胸に一番刺さったリリックはこれだが
他にも核心を突く言葉たちが並んでいる。
彼らの想いに触れたうえで
「今日の1曲」を聴いてもらえると
そこに向かって愚直に進もうとしている彼らの姿勢が
ひしひしと伝わってくるであろう。
¶ 今日の1曲
BAD HOP - Ocean View
アメリカのHIP HOPのトレンドを
しっかりと取り入れながら
日本語に合うようにアレンジしている。
先に紹介した曲とは
雰囲気は異なるが
やろうとしている軸は同じだ。
この2曲を聴いても
何も感じないのであれば
HIP HOPは聴かない方が良いであろう。
遺伝子レベルで向いていない証拠だ。
少し前に描いていた夢を忘れ
今を生きることに没頭している人たちには
必ず刺さる言葉がある。
そして励まされ
刺激をもらえるであろう。
夢は見るものではなく叶えるものだ。
そして
夢を叶えるためには行動するしかない。
そんな当たり前のことを
改めて認識させてくれる曲だ。