#1 心動かす音域の限界「GLIM SPANKY」
本日の1曲。
GLIM SPANKY - 吹き抜く風のように
¶ かすれた高音が醸し出す色気
初めて聴くタイプの声だった。
様々なジャンルの音楽に手を出し
様々な歌い方をする歌手の歌を聴いてきた。
もちろん、邦楽、洋楽問わず。
でもこのタイプは居そうで居なかった。
しっかりとした腹式呼吸から繰り出される
威圧感さえ感じる歌声。
喉声のようにも聴こえる繊細な声の運びは
何度も聴いていくと
腹式呼吸から繰り出されていることがじわじわと伝わってくる。
本当に歌が上手い。
聴く人によっては
聴き心地の良い歌声では無いかもしれない。
なぜならば
高音領域になると、途端に声がかすれ始めるからだ。
しかし
これは彼女の歌声の強烈な個性だ。
決して限界の音域ではないはずの発声から
痺れるようなかすれ声で歌い上げる。
聴いているほうは情緒的に揺さぶられるのだ。
儚く消えそうで
でも芯が通っていて
決して小手先の技術ではないその歌声は
芳醇な色気を醸し出している。
ぜひ
3度立て続けに聴いてほしい。
必ずハマるから。
¶ 逸材を支えるということ
このバンドは男女2人組である。
ほとんどの楽曲の作詞、作曲を手掛け
自らギターを手にし、歌うという
いわば怪物の松尾レミ(25歳)。
それを技術面だけでなく
精神面からも支える亀本寛貴(27歳)。
2人は
長野県に生まれ、同じ高校で巡り会った。
松尾レミの音楽の嗜好性の変遷は面白い。
J-POP、J-ROCK、クラシック、洋楽・・・
わけ隔てなく
音楽自体を好んだその嗜好性が
このバンドのサウンドに確実に生きている。
そして
その音楽を全面的にサポートし、昇華させる。
そのスキルを持った亀本寛貴の支援力も見事だ。
亀本は、
松尾の歌声に合うように
ギターの鍛錬を積んできた。
主役を見事なまでに目立たせる
圧倒的な名脇役だ。
¶ 洋楽の土台に建つ、邦楽の建造物
このバンドのサウンドの根底にあるのは
間違いなく洋楽だと思う。
しかも
最近のEDMなどではなく
昔のPOP調を持ち合わせたROCKだ。
しかし
「古を認めろ」という雰囲気も無ければ
「現代に合わせろ」という協調性も見えない。
あくまでも
ムーディーな洋楽は土台として
そこから自分たちのスタイルで
日本語を入れ込み、邦楽に仕上げていく。
そこに唯一無二のセンスがある。
各方面で
「1960 - 70年代のロックやブルースを基調にしながらも、それらのルーツを自身の世代感というフィルターを通し、独自の感性と現代的な感覚で昇華させたナンバーによって新しさを感じさせるサウンドを鳴らし、幅広い世代を唸らせる新世代の男女2人組ロックユニット」
と称されているが、まさにその通りであろう。
また
2016年のSkream!のインタビューで
「古いロックを軸としているが決して現代のシーンに背を向けているわけでも単純に昔の音楽の再現をしているわけでもない[6]。単に古いブルージーなサウンドにしても逆に今風のサウンドに迎合しても仕方ないので、自分たちにしか出せない音を目指している」
と述べているが
この気概自体素晴らしいし
それを一歩一歩、実現しているように思う。
字だけでは伝わり辛い魅力が
彼らには間違いなくある。
必聴の1曲が「吹き抜く風のように」
残念ながら
YouTubeではショートバージョンしか
公開されていないが
Apple MUSICでほとんどの楽曲が聴けるので
ぜひ、聴いてみてほしい。
もう少し、秋が深まり
紅葉を見ながら聴きたいサウンドである。
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