作り手の気持ちになって
日常の何気ない会話の中に、ハッとさせられたり、笑ってしまうワードを見つける事がある。自分がその場面で使わない表現であったり、その人らしい考え方が凝縮された言葉だったりする時に起こったりする。
今回は、同僚に「そのワード面白いですね」と言われた言葉のこと。
私の周りには、おっちょこちょいや、あわてんぼうのスタッフが何名かいる。「コピー機の画面が見た事もない状態になっちゃって」「PCが立ち上がらなくなりました」「ここに置いた資料がないんです」 本人は頭を抱えて悩んでいたり、大慌ての状況で相談にくるのだが、ほとんどが、「ホームボタンを押す」「一度電源を落としてみる」「最後に覚えている状況からゆっくり行動を振り返る」などのアドバイス(?)で解決する。
一般交通機関を使わずに車で通勤していた4月のこと。近くに住む同僚をピックアップして出勤していた。朝、同僚は荷物を置くために、座席をたたんだのだが、帰り道、座席を元の位置に戻そうとしていた。上手くできずにガチャガチャ数分間悪戦苦闘し、最後には「もういいや」とつぶやき諦めた。その様子をミラー越しに見ていた私は、「作り手の気持ちになって考えてみたら」とアドバイスをした。「は?」と同僚。「車の座席の作り手の気持ちになって考えてみたら。きっと一般の大人が出来ないような難しい構造になんてしないだろうから。」その私の言葉に、はじめの座席をたたんだ状態から戻って、座席を1つひとつ戻し始める。すると、「パチン」というロック音がして、座席が元の位置に戻った。
「ふふふ。作り手の気持ちになってっていうワード面白いですね」と言われたが、自分にとっては、そんな面白いなんて考えてもみなかった。今まで、「うまくいかない」とか、「あれっ」という疑問がわいた時に、「作り手の気持ちになって考えてみよう」と心の中で呟いていたから。一般的にはどう言うのかと言葉を探すと「違う視点から考えてみよう」という事かな。
「この新作の即席ラーメンの液体の袋に切れ込みがない…」と思った時、よく見ると「どこからでも切れます」という文字に気づいた。「初めて飛行機に乗った時、機内のトイレのドアノブが見つからない…」よく見るとpushと書いてあり、押すだけで入れることを知った。「美味しいと評判を聞いて、初めて丸亀うどんにいった時、お店の入り口が分からない(ガラス面が多いため混乱)…」駐車場の位置がここで、出口がここだからきっとここに入り口を作るだろうと発見。
作り手は、こんな些細なトラブルは想定済みで、それを含めて分かりやすくデザインしているハズだと思うと、答えが見つけやすくなる。「分かりづらい、使いづらい」とつまづく人には、自分の視点からではなく、作り手の気持ちになってみたらと思う。しかし最近スマホを買った親が、「ボタンがない、説明書がないから分からない」と言っていたが、さすがにスティーブ・ジョブズの気持ちになって考えてとは言えなかった。
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