【連載】Vol.12 鍋焼きラーメン発祥のお店が復活。高知・須崎「谷口食堂」
私が須崎に行ったのはもう20年以上前のこと。
まだ高知から直通の高速道路が通ってなかったので(全線開通は2009年)苦労して行った記憶がある。わざわざ時間をかけて行ったのだが、まだ当時はそんなに話題になっていなかった。
しかし、全国の「ご当地ラーメン」制覇を目論んでいた私には是が非でも行く必要があったのだ(笑)。今から思えば、この時に行ってなかったら、いまだに行けてないかもしれない。
鍋焼きラーメンを食べたのは3軒。
特徴は鶏ガラスープの醤油ラーメンを土鍋で提供するというもの。
具はネギ、ちくわ、生卵。シンプルだが「ちくわ」の存在が面白かった。また、土鍋で熱々提供となると細麺だと弱いのでは?と思いがちだが、そこは土鍋で提供するという前提で麺の研究が行われ、細麺なのに伸びにくい麺というのも大きな特徴。
逆にそういった特徴を踏まえていれば、ラーメン店以外のどんなお店でも提供可能で、スナックだったり喫茶店、焼肉屋、お好み焼き屋など、あちこちで提供されており、不思議な「ご当地ラーメン」だなぁ〜と感心したものだ。まさに“町ぐるみ”の「ご当地ラーメン」という感じで素晴らしかった。
こういう例は全国でも珍しいと思う。そもそもが「谷口食堂」という大きな存在があり、しかもそこが閉店したことによって、逆に「あの味を復活させよう!」という動きが「須崎鍋焼きラーメン」のムーブメントになるのだから、面白い。
そしてまたそれが「ご当地ラーメン」ができあがる見本みたいな形で、20〜30年を俯瞰してみてみると興味深い。ラーメン好き以外に『観光』を生業にしている人達の参考にもなる。そしてそういう成り立ちの「ご当地ラーメン」がラー博に登場したのにも驚いた。
もちろん「全国のラーメン文化の紹介」という視点で見ると世界中の人に紹介してもおかしくない。そんな「鍋焼きラーメン」が9年ぶりに復活。
須崎まで行くのはなかなか大変なので、まずはこの3週間(2023年1月10日(火)~2023年1月30日(月))の期間中に新横浜へ行くことをオススメしたい。
文/大崎裕史
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